hirai2 2017年7月12日発売、平井堅のベスト盤シリーズ「歌バカ」第3弾。初回生産限定盤A、初回生産限定盤B、通常盤の三種形態での発売になっており、本レビューはCD3枚組の通常盤(シングル楽曲の全ライナーノーツ付)となります。

 デビューから10年目までの全シングルを収録した「歌バカ」を2005年に、2010年までのカップリング曲を収録した「裏 歌バカ」を同年に発売しているこの「歌バカ」シリーズ。今回の通常盤には「歌バカ」以降、2006年から2017年までにリリースされたシングル両A面タイトルをDisc1、2にわたって完全収録。さらにDisc3は「Special Disc」として完全な新曲10曲を収録した全33曲。シングル曲では今年リリースされた「僕の心をつくってよ」「ノンフィクション」がアルバム初収録となっています。

 Disc1&2は「Single Collection」。2006年の「バイマイメロディー」から2017年の「ノンフィクション」までの全シングル曲をリリース順に23曲収録。既に「歌バカ」の時点で世間一般的な「平井堅ブランド」が確立されており、今回の収録曲はそれ以降、ブレイクの波も落ち着き、固定ファン+αに支えられてきた12年間の活動の記録となっています。平井堅自身は本作収録ブックレットのインタビューにも「(音楽シーンの中で)生き残りたい」ということを述べており、その気持ちで常に闘ってきた…というのは前作オリジナルのリリースの際にも触れられていましたが、ライトなポップス、王道バラード、EDM路線、コラボレーションなど、様々な表現方法を用いて駆け抜けた時代だったんだな、というのをこのディスク2枚を聴いて実感しました。
 そんな彼のシングル曲、バラードに関しては結構似ている展開も多い…というのが正直な感想なのですが、本作を聴いて改めて面白いな、と思ったのは「fake star」「CANDY」「ソレデモシタイ」、安室奈美恵とコラボした「グロテスク」などの毒っ気のあるエレポップの曲達。この辺りの攻めどころは「平井堅=バラード」で固定されてしまっている一般的イメージに風穴を開けることができそうな気もしました。

 Disc3は「Special Disc 歌バカだけに。」。J-POP界における10組の著名アーティストにそれぞれ楽曲提供、アレンジ、プロデュースを依頼し、平井堅は完全にシンガーとして徹したある意味ニューアルバム。ネームバリューのある面々からの提供ということで、提供元のアーティストの個性が発揮された曲が多く、生音重視から完全打ち込みまで、楽曲のタイプはかなりバラバラ。その一方で例えばCRAZY KEN BANDの横山剣が提供した「やってらんないぜ」はまんまCKB風味なのですが、平井堅が歌うことで下世話っぽさが消えるなど、完全に彼の世界になってしまうのはさすが。特にリード曲などは意識されなかったようで、その意味ではオリジナルアルバムとしては弱いですが、ベスト盤の特典ディスクとしてはかなり充実の内容だと思います。

 なお、初回限定生産盤Aは「歌バカ」「歌バカ2」に収録された全シングルをCD3枚に収録(シングル楽曲ライナーノーツなし)+「歌バカだけに。」のコンプリートシングル盤、初回限定生産盤Bは「歌バカ2」の通常盤内容+収録範囲時期のMVを収録したBlu-ray付属盤。全シングルを一気に聴きたい場合はA、「歌バカ」以降のシングル+MVが観たい場合はB、「歌バカ」以降のシングルのみでMVは不要な場合は通常盤と、それぞれ選択できる仕様になっていますので、用途に合わせてどうぞ。