
レミオロメンを活動休止しソロ名義で活動するようになってから5年を超え、様々な葛藤を乗り越えて現在に至る・・・というのは作品リリース前後のインタビューでも毎回本人が言及していますが、本作のインタビューでもまた然り。筆者としては前作のフルアルバムが本当の意味での「ソロシンガー・藤巻亮太のデビューアルバム」ではないか、と思っているのですが、今回の路線もその延長上。レミオロメンとの境界線を意識せず、ポップなメロディーに乗せて綴られるポジティブな「優しい星」や「波音」、葛藤しながらもどこか力強い「Blue Jet」「愛を」、ささやかな日常に咲く愛を描いた「Life is Wonderful」などなど、前作で構築した基本的なスタンスを踏襲して作り上げられた印象を受けます。
一方で演奏面では大きな変化が見られ、ブラスセクションやドラムス以外のほぼ全ての楽器を藤巻本人が自らレコーディング。そして一番驚きだったのが活動休止中のレミオロメンのベース前田啓介が3曲、ドラムス神宮司治が2曲にそれぞれ参加。さらに所属事務所の社長で元プロデューサーの小林武史も1曲参加している点。藤巻+前田、藤巻+神宮司、藤巻+小林という組み合わせで、かつてのセールス全盛期のメンバー&プロデューサーが全て揃う曲はありませんが、収録曲の約半数である6曲を占めています。「another story」に兼編曲で参加した小林が本作唯一のピアノとストリングスのバラード、というのはやはり、といった感じですが(笑)、「Have a nice day」で存在感を発揮する前田のベースライン、「紙飛行機」での神宮司の勢いのあるドラミングなど、あくまで藤巻ソロの中での表現ではありますが、かつての「レミオロメン」っぽさを感じさせてちょっと嬉しかったりも。これらの参加楽曲があることで、メンバーが共に過ごした地元・山梨で制作されたというリード曲「北極星」(メンバーは演奏不参加)でのメッセージがより聴き手の胸に迫ってくる気がしました。
総じて本作も佳曲揃いの安定した内容。ただそろそろ「藤巻亮太としての名刺代わりの曲」というのも出てきてほしいなぁ・・・というのをボーナストラックの「3月9日」を聴きながら思ってしまいました。前述の「紙飛行機」は結構いい線行っていると思うので、引き続き今後の活動にも期待しています。
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