
2016年に再結成を発表後、全国ライブツアーやロックフェスへの出演、新曲をパッケージメディアや配信でリリースと精力的に活動を続けている彼らですが、再結成後初のアルバムリリースはセルフカバーベストという形に。選曲は解散時の2013年にリリースされたファン投票ベスト「イエモン-FAN'S BEST SELECTION-」の全16曲を曲順そのままで全曲新録音。アンサーソングならぬ「アンサーアルバム」なる通称もついているようです。
オリジナル音源での最新ベスト盤の全収録曲を再録音という経緯もあり、シングルタイトル曲のピックアップが多くなったことで、「JAM」「SPARK」「楽園」「BURN」などライト層にも食いつきやすいヒット曲が中心。どの曲も原曲のアレンジを踏襲しており、基本的には一発録音を軸にし、さらにリバーブなどのエフェクトも極力使用しない方向性になっているようで、原曲と比べると音の厚みがシンプルに。また、「追憶のマーメイド」など原曲ではなかったストリングス隊が新たに加わった曲もありますが、どの曲もメンバーの出す音を核に、ゲスト陣は楽曲を覆わない程度の味付けにとどまっており、原曲の雰囲気を尊重しながら現代的な音にまとまっています。
さて、約15〜20年ぶりぐらいに新たに録音された本アルバムの全体像ですが、鳴っている音こそほとんど原曲と変わっていないものの「やけにすっきりしたなぁ」と。先述のレコーディング方針もありますが、吉井和哉の余裕のある(ように聴こえる)ボーカルや、他のメンバーも50歳を超えてベテランらしい安定感のある演奏力を手に入れた代わりに当時の妖艶さやギラギラした色気のようなものが抜け去ったな、という感じ。アルバムタイトルの「〜IS HERE」に象徴されるように、現時点でのTHE YELLOW MONKEYはこうなんだ、という彼らからのメッセージといったところでしょうか。音を加工していない分、生身の彼らがスピーカー越しに近付いてきた、という印象も受けますが、リアルタイムでオリジナルを聴いてきた耳には少々物足りなく感じるのが正直なところ。
まったく収録曲も曲順も同じということで、本作と「イエモン〜」で、新旧の聴き比べも容易に楽しむことができる作品。昔からのファンにとっては賛否ありそうですが、一聴の価値は大いにありだと思いました。
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