tkjobs1 2017年3月15日発売、小室哲哉の約3年振りとなるオリジナルアルバム。2枚組全15曲収録。初回生産限定盤にはDVD、インタビューを収めたフォトブックが付属。本レビューはCDのみの通常盤レビューとなります。

 体裁はオリジナルアルバムという触れ込みですが、2010年代中盤以降に制作されたタイアップナンバーや他アーティストとのコラボレーション音源を曲によっては新たに手を加えて収録という、まさしくタイトル通りのここ近年の小室哲哉の「仕事」をCD2枚に収めた作品。作風はここ最近(といっても逮捕後の活動再開以降だからもう6〜7年近く?)の彼の芸風の主流であるEDMがメインになっていますが、各ディスクの演奏時間は約40分強。EDM系をCDの限界時間まで詰め込まれるのは筆者的にはかなりキツイので、ある程度の聴きやすさがある収録体裁でまずは好印象(笑)。

 並べられた楽曲群は、代表曲のリミックス「Can You Celebrate? Art Mix」、スポーツ系タイアップのインスト「a new lease on life」「one more run」「Song for ALPINE SKI WORLD CUP 2016」、神田沙也加をボーカルに招きTK全盛期を彷彿とさせる「#RUN」のようなJ-POPサウンド、ロンドンで制作された洋楽志向の歌モノ「HERE WITHOUT YOU」「STILL BREATHING」などがひしめきあっており、コンセプトや曲順などをディスク毎にも特に意識しない、1曲単位の様々な個性が「TK」の旗印のもとに集まった作品集といったところ。
 これを小室は「アラカルト」の集合体と呼んでおり、現代における音楽の楽しみ方のひとつとして聴いてもらえれば、ということのようです。確かにバリエーションはあるものの雑多な並び方、という点は感じましたが、つまみつまみで「この曲のフレーズ良いな」とか、「この長尺インストは作業用のBGMに適してるな」など、小室サウンドのカタログ集としてアリだな、と。

 なお、筆者が一番これ良い!と思ったのは、2013年末に制作されたヒャダインこと前山田健一とのコラボ作品「22世紀への架け橋」。この曲の特徴は小室とヒャダインのデュオボーカルもさることながら(笑)、trfブレイク期の小室プロデュースシンセEOS B700の内蔵音源で制作されたという、今にしては若干レトロな音色の採用。このシンセ、筆者の高校時代に友人の家でさんざん触らせてもらった思い出があるので、懐かしいその音に思い切り酔いしれてしまいました(笑)。そんなノスタルジーも含め、久々の小室ソロ、終始楽しませてもらいました。