
ベスト盤を挟んで約3年3ヶ月振りのオリジナルアルバム。今回はデビューから間もない数年間での「ステレオ」シリーズや、「SHEEP」「アトリエ」以来となる山崎本人によるプログラミングを含めてすべて自身で楽器を演奏する自作自演アルバム(先行で出ていたシングル「空へ」を除く)。
彼がこの手の録音をすると詞曲含めてプライベートな匂いが高まる傾向があるように思えるのですが、元々ギターのみならずピアノの腕もライブで披露したり、「ステレオ」シリーズなどを経て、曲単体ではひとり多重録音を行うこともあった経験の積み重ねもあってサウンド的には不慣れなところなどなく盤石。先述の「空へ」も違和感なくアルバムに溶け込んでいました。
「アルバム全編を通して彼の人生観に沿った内容の作品」とアナウンスされている楽曲群に関しては、近年の詩人・山崎まさよしという印象を本作でも継続。ざっと挙げると、ネット社会を皮肉った(?)「Take Me There」「さなぎ」、ノスタルジー溢れる「ポラロイド写真」「カゲロウ」、スケールの大きい「パイオニア」から、非常にミニマムな「贈り物」まで、表現者としての一面を打ち出している辺りは前作と同様。裏ベストなどで見せたブッ飛んだ試みは陰を潜め、一聴してキャッチーではなく、じっくり聴くことで染み渡ってくる曲が多い…というのも近年の傾向といったところでしょうか。
リードシングルを含め頭ひとつ抜けたような曲がなく全体的に地味…という点は拭えないのですが、安心安定の山崎まさよし節はいまなお健在でした。
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