sukimareaction 2017年2月15日発売、スキマスイッチのリプロデュースアルバム。昨年秋に先行的にリリースされた「全力少年 produced by 奥田民生」を含む全13曲収録。メンバーによる全曲解説のセルフライナーノーツが付属。初回生産限定盤はBlu-spec CD2仕様に加え、収録楽曲のオリジナル音源入りのボーナスCDを同梱の2枚組。

 企画盤としては2012年のセルフカバーアルバム「DOUBLES BEST」以来。完全にメンバー二人で作り上げた「DOUBLES〜」とは対照的に、今回は著名なアーティスト達に1曲ずつ原曲を委ね、外部からリプロデュースを行ってもらう、というコンセプトで作り上げられた作品。制作に参加したのは小田和正やORIGINAL LOVEの田島貴男などのベテラン、GRAPEVINEやフラワーカンパニーズなどのスキマスイッチよりも少し上の世代、同世代のTRICERATOPSやSPECIAL OTHERSなど、日本の音楽シーンで活躍する名前が目白押し。なお、アレンジのみならず演奏も基本的にはプロデュースサイドの人選のようですが、当然ながらボーカルを務めるのは大橋卓弥。一方の常田真太郎も楽器演奏に名を連ねている曲もありますが、全13曲中4曲は見ているだけ=watchとクレジットされているのが微笑みを誘います(笑)。

 デビュー当時からサウンドプロデュースユニットとして一部の例外を除き常にセルフプロデュースだった彼らの楽曲を委ねられた外部プロデューサー達は、ほぼ「自分(達)の音」として再構築。TRICERATOPSの「マリンスノウ」はコード進行や一部メロディーを変更。澤野弘之の「Ah Yeah!!」はテンポをぐっと落として地を這うような打ち込みサウンドに生まれ変わらせたり。中でも一番インパクトがあったのは原曲も含めてラップパートを大々的に導入したRHYMESTERの「ゴールデンタイムラバー」。各楽曲をそれぞれのプロデューサーの個性に染め上げた、スキマスイッチ本人達も参加しているトリビュートアルバムのよう。
 また、先述の「全力少年」や、フラカンの「フィクション」、真心ブラザーズの「ふれて未来を」などを聴いてしまうと、「一曲のためにスタジオミュージシャンが集って録音した曲」とは異なる、「バンドマンとして培われた積み重ねのアンサンブル」を良い意味で感じました。確かにこれまでスキマスイッチでもバンドサウンドを鳴らした曲はもちろんありましたが、あくまで彼らは打ち込みや生バンド演奏も含めて自在に動き回れる「ユニット」なんだなぁ、ということも改めて認識させられました。

 ラストに収録されたKANプロデュースの「回奏パズル」は新曲。といってもこの曲は既存の彼らの詞・曲・アレンジの20曲以上の断片的なフレーズをKANが再構築し、一つの物語を持つ曲にまとめてしまった、という意欲作。KANはかつて槇原敬之や浜田省吾の曲を研究したパロディーソングを発表していたのでその手腕を買われた(?)のでしょうか。制作は半年(!)にも及んだそうなのですが、かなりの力作で感動すら覚えるほど。両者のファンでもある筆者にとってはとても嬉しい一曲となりました。
 基本的にはリアレンジ・ベストアルバムという趣で、シングル曲も多くピックアップされており代表曲も多く聴けますが、やはり原曲との聴き比べをする、というのが大方の楽しみ方だと思います。聴き応えのある好盤です。