saitonebraska 2017年4月26日発売、斎藤誠のアコギ弾き語りセルフカバーアルバム。先行配信された「初恋天国」を含む全12曲収録。高音質SHM-CD仕様のみでのリリース(定価は一般のCD価格程度)。なお、発売一ヶ月前に配信された「今 僕を泣かせて」はアルバム未収録なのでご注意。

 二年三ヶ月前の前作に引き続き今回もセルフカバーアルバム。ただし前作と本作では明確な違いがあり、一部例外を除いて前者は斎藤誠がソロ活動を一時期休止した1990年までの楽曲をバンドアレンジで再構築したアルバム、後者はソロ活動を再開した1996年以降の楽曲をMartin製のアコースティックギターで完全に一人で弾き語っているアルバム。1996年以降の作品は当時の音楽シーンの流行を取り入れたという要素がほぼ無く、現代においても普遍的に受け入れられる生音バンドサウンドが中心であり、それを今回は「曲を作った時のシンプルな状態」として聴かせるサウンドにお色直し(化粧落とし?)。アルバム制作にあたっては、自身の弾き語りツアー「ネブラスカ」開始20周年記念、という意味合いもあるようです。

 選曲は8thアルバム「Dinner」から現時点での最新12thオリジナルアルバム「PARADISE SOUL」までの各曲に加え、カバーアルバムの表題曲「Waltz In Blue」(当時オリジナルの新曲として発表)、ラストの「恋のやりとり」だけはデビューアルバム「LA-LA-LU」より。シングルタイトルは「天気雨」の1曲のみと、かなりコア寄りのピックアップのような。アップテンポの曲は序盤の「Coolest Sister」ぐらいで、ミディアムやバラード曲が中心。アコギ一本になることで大きく印象が変わった、という曲もなく、全体的に淡々と進んでいく展開。「ギターマンの純情」や「Missing Serenade」などを選べばもっと華やかさが増したのではないかと思いますが、本人が述べているように「一日の終わり、眠りにつく前に聴いてもらえたら」という落ち着いた演奏に終始しているので、若干物足りないものの今回のラインナップはまあ納得。

 前作のように80年代の曲が現代的に再構築されて感動!入門編にお薦め!ということはなく、あくまで原曲を知っているリスナー向けのアイテムではありますが、まったりとした聴き心地でメロディーや歌詞を意識できる「ネイキッドな斎藤誠」を堪能できるアルバムではあります。とりあえずファンは必聴、ですかね。