hiraistill 2016年7月6日発売、平井堅通算9枚目のオリジナルアルバム。シングル「告白」「グロテスク feat.安室奈美恵」「ソレデモシタイ」「おんなじさみしさ」「君の鼓動は君にしか鳴らせない」「Plus One」「TIME」「魔法って言っていいかな?」、配信シングル「桔梗が丘」を含む全14曲収録。初回限定版には収録曲のMV等が収録されたDVDが付属のスリーブケース仕様。また、同年12月14日には20周年記念ライブの模様を全曲収録したBlu-rayまたはDVDが付属の「〜Deluxe Edition -Special Limited Package-」としてもリリースされています。

 前作より約5年振りという久々のオリジナルアルバムですが、その間にはコンセプトカバーアルバム「Ken's Bar III」を挟んだり、安室奈美恵とコラボした「グロテスク」や、奇抜なインド人衣装で話題を呼んだ(笑)「ソレデモシタイ」など、シングルリリースに関しても話題作りを行うなど積極的に活動していた感のある平井堅。本人がインタビューでも語っていますが、本作は「5年間の闘いの軌跡を刻んだアルバム」とのことで、前作以降にリリースされたシングルタイトル(両A面含む)を全曲収録、既にタイアップソングとして発表されていた「Missionary」「ON AIR」に加え、まっさらの新曲が3曲という、ハーフベスト…というよりセミベスト的な5年間の活動を集約したかのような内容に。

 かつてのR&B隆盛期に同路線の男性シンガーとしてブレイクを果たした、という経緯は皆さんもご存知のところ。その後は2ステップだったり、壮大なバラードだったり、洋邦楽問わずのカバーだったり、歌謡曲ライクなポップスだったり…と、良く言えばジャンルに捉われない、悪く言えば節操がない…(笑)というある意味独自の路線を突き進んでおり、それはここ数作のオリジナルアルバムでもその傾向が顕著だと思うのですが、本作収録のシングルも哀愁漂う「告白」、ノスタルジックな「おんなじさみしさ」、EDMライクな「Plus One」、生バンド+オーケストラの「TIME」、平井堅印の王道バラード「魔法って言っていいかな?」等々に加え、新曲群もコミカルでシニカルな「かわいいの妖怪」、若手ミュージシャンを招きキレのある演奏を聴かせる「驚異の凡才」、かと思えばラストにはスタンダードな直球ポップス「それでいいな」を配置するなど、まさに様々なジャンルがひしめく幕の内弁当状態。

 先述のインタビューでも語られているように、彼自身はミュージシャンではなくシンガーである、というスタンスのようで、音楽性に関しては雑食というイメージを受けるのも納得。一方で彼のボーカルがオケなりトラックなりに乗ることで「完全に平井堅ワールド」になる、という歌い手としての技量には圧倒されます。まさに「歌バカ」な彼の世界を堪能すべし、という好盤。シングル曲があまりに多い点はオリジナル盤としてはどうかな?という思いもありますが、彼の2012〜2016年の足跡がこのアルバムに詰まっている、という意味で、昔は良く聴いてたけど最近は…というリスナーにも再入門編(?)としてうってつけの1枚だと思います。