getwildsongmafia 2017年4月5日発売、TM NETWORKの代表曲「Get Wild」のリリース30周年を記念したコンピレーションアルバム。CD4枚組全36曲収録。

 オリジナルバージョンを起点にリミックス、リプロダクション、リメイク、ライブ音源、更にはカバー等々、この30年の間に数々の複数バージョンを生み出した「Get Wild」。本ブログでも本作発売直前の「CD Review Extra」で特集記事を書いてしまったほどです(笑)。TM関連のコンピ盤は数あれど、同一曲のコンピをCD4枚使って企画してしまうそのアイデアにまず脱帽。そのCD内容ですが、DISC1〜3はTM名義でリリースされた「Get Wild」の各バージョンを時系列順に計21曲収録。DISC4は他アーティストによるカバーバージョンをこちらも時系列順に11曲、その後は小室哲哉自身の手によるものをはじめ、本作初出となるリミックスバージョンを4曲収録となっています。

 各ディスク毎のかいつまんでの感想を。DISC1は1987年のオリジナルからTMNリニューアル、TMN「終了」、TM NETWORK再始動を経て、2003年のEPICレーベル25周年記念ライブバージョンまで、すべてSONY音源の計10曲。オリジナル版、「〜'89」「〜DECADE RUN」と、主要スタジオ音源が固まっておりバリエーションが最も豊富なのはこのディスク。ライブ音源ではハードロック期のライブにあたる「“RHYTHM RED TMN TOUR” Version」(1991年)が出色。また1994年の東京ドームファイナルライブでの「“TMN final live LAST GROOVE 5.18” Version」のスケールの大きさにも圧倒されます。

 DISC2はデビュー20周年時の「“DOUBLE-DECADE “NETWORK”” Version」を皮切りに、R&C時代のライブ音源、avex移籍後のライブ音源、2014年のセルフ・リプロダクションアルバム「DRESS2」に収録の「Get Wild 2014」、同年のライブツアー「“30th 1984〜 QUIT30” Version」まで。全8曲中7曲がライブ音源。トランス風味あり、強く生バンド色を出したものもあり、EDM全開のものもありと多種多様。そしてDISC3は2014〜2015年のライブツアー音源2曲にスタジオ盤「Get Wild 2015 -HUGE DATA-」の全3曲…にして収録時間60分近くという恐ろしい長さ(笑)。この辺りになると歌よりイントロ、間奏、アウトロのほうが圧倒的に長くてもう何の曲聴いてるんだか…という感覚に陥ってしまうのが正直なところ(苦笑)。

 残るDISC4は各種カバー音源。作詞を担当した小室みつ子版、小室のユニットglobe版、個人的にイチ推しなH ZETT Mによるインスト版などを収録。演奏形態はそれぞれ異なるものの、原曲や「〜'89」辺りを比較的尊重したアプローチの曲がほとんどで、TMのライブバージョンがいかに原型を留めず弄りまくりというのが却って浮き彫りになる形に(笑)。ラストの新規音源群にはTMN期に一時期関係のあった石野卓球によるリミックス、小室がavexとの関係を築くきっかけになった英語詞アルバム「TMN SONG MEETS DISCO STYLE」を手掛けていたDave Rodgersの手による新規リミックスなども収録。

 いちTMファンとしては、これらの音源よりも歌詞ブックレットの体裁でのTM三人への座談会的なインタビューが面白かったです。「Get Wild」にまつわる話がメインではありますが、30周年時の精力的な活動を終えての感想や、次にもしTMが動くとしたら?といった話題が彼ら自身の言葉で語られているのは読み応えがありました。
 発売直後にDISC3の収録曲にミスが発覚し回収騒動になるなど、意外な形でも話題になったからか、思ったよりもセールス的にも結果を出してしまった(笑)本作。コアなTMファンはまだまだ潜伏し続けているようです。先述の「CD Review Extra」でも書きましたが、TM史上初となるレーベル超えコンピが実現した今、これを足掛かりにいずれオールタイム・ベストを出せるようになれれば…と淡い期待を筆者は抱いております。