yuzuextra 北川悠仁、岩沢厚治によるフォークデュオ・ゆず。1997年のインディーズデビューから今年で活動20周年を迎え、来たる4月26日には数々のヒット曲を収録した3枚組オールタイム・ベストアルバム「ゆずイロハ 1997-2017」の発売も迫ってきました。今回の「CD Review Extra」では、これまでに彼らがリリースしてきたベストアルバム4作品を1作ずつレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
デビュー20周年記念・ゆず全ベストアルバムレビュー


Home 【1997-2000】
yuzuhome
 2005年6月8日発売、「Going 【2001-2005】」と同時発売となった初のベストアルバム。全15曲収録。
 1997年のインディーズミニアルバム「ゆずの素」から、2000年までのリリース作品の中から全10枚のシングル(両A面曲は1曲めのみ)に加え、アルバム曲を5曲選曲し、基本的に時系列順に並べたオーソドックスな構成。「夏色」「少年」「いつか」「サヨナラバス」「飛べない鳥」等々、知名度の高い楽曲が並んでいることもあり、一般的な「ゆず=爽やかフォーク」のイメージ通りでベストアルバムの中では最もゆず入門に相応しい1枚。
 まさに王道フォーク、といった「地下街」などの最初期から始まり、後半になるにしたがって「心のままに」「嗚呼、青春の日々」など徐々にバンド色を強めていく彼らの作風の変遷も大味ながら掴めるのもポイントが高い。


Going 【2001-2005】
yuzugoing
 2005年6月8日発売、「Home 【1997-2000】」と同時発売。全15曲収録。
 2001〜2004年にリリースされたシングルのうち「恋の歌謡日」以外の全シングル1曲目(トリプルA面の「桜木町」「シュミのハバ」「夢の地図」はすべて収録)の12曲にアルバム収録曲2曲、さらに新曲「GOING HOME」をラストに収録。曲順は時系列順ではなく、この時期の代表曲「栄光の架橋」を冒頭に、全体の流れを重視した構成になっている。
 四週連続シングルリリースやトリプルA面シングルなど、新たな可能性を模索してきた年代のまとめであり、「Home」に比べると作風に試行錯誤が目立ちやや取っつきづらいが、「フォーク」という枠からはみ出し始める助走期の記録としては意義のあるアルバム。新曲「GOING HOME」はチャイルドコーラスを起用した歌い上げ系バラードだが、これが後の壮大路線に繋がっていく第一歩…と思えなくもない。


ゆずのね 1997-2007
yuzunone
 2007年10月3日発売、デビュー10周年を記念してリリースされた、メンバー自身によるCD2枚組のセレクションアルバム。全31曲収録。初回限定盤にはセルフライナーノーツと本作用に新たに制作された「境界線」(収録曲)のMVを含む特典DVDが付属。
 DISC-1「根」は1997〜2000年まで、DISC-2「音」は2002〜2006年までのそれぞれの年代からのセレクト。「根」は時系列順、「音」はランダムと、「Home」「Going」を意識したような曲順なのだが、今回は2002年のMDダウンロード配信限定シングル「アゲイン」、2005年のDVDシングル「今夜君を迎えに行くよ」の初CD化以外はシングル表題曲やカップリング曲などは一切収録されておらず、各オリジナルアルバムからの選曲というかなりコアな内容。
 どのアルバムからも満遍なく2〜3曲程度選ばれていることもあり、これまでの10年間のアルバムダイジェスト的な役割も果たせそうな作品。ゆずの曲には興味あるけどオリジナルアルバムまではちょっと…というリスナーはこれを聴けばこの時点までのアルバム人気曲が大体分かる、はず。


YUZU YOU 【2006-2011】
yuzuyou
 2012年4月25日発売、デビュー15周年を記念したベストアルバム。全16曲収録。初回限定盤はカラーブックレット付属のスペシャルパッケージ仕様。
 2005年末(サブタイトルと齟齬あり)の両A面シングル「超特急」「陽はまた昇る」から2011年頭のシングル「Hey和」までのゆず名義の全シングル曲(「桜会」と両A面の「マイライフ」は除く)に加え、ラスト2トラックに「栄光の架橋」の新録フルオーケストラバージョン、2011年に関ジャニ∞に楽曲提供した「T.W.L」のセルフカバーバージョンを収録。曲順は「Going」に続いて流れを重視した構成。
 デビュー当時からのプロデューサー・寺岡呼人の手を徐々に離れ、外部アレンジャーとの共同作業を経て、蔦谷好位置&ゆず名義でのプロデュースを本格的に開始した時期の総括的ベスト。「虹」「Yesterday and Tomorrow」のような王道ポップスから、「シシカバブー」「いちご」などの弾け路線、ストリングスバラードの「逢いたい」など、フォークデュオとしての枠を完全に取り払い、「何でもありのゆず」を定着させた年代のシングル各楽曲の完成度の高さには彼らの成長がうかがえる。その何でもあり感を極端に振り分けた新録2曲はまさにこの時期のゆずを象徴しているかのよう。振り幅の大きかった5年間が凝縮された作品。


 以上、ゆずがこれまでにリリースしてきたベストアルバム全4作のレビューでした。
 長期に渡って活動を続け、活動年数では既にベテランの域に差し掛かろうとする彼らですが、移り変わりの激しい音楽シーンに対しての攻めの姿勢を貫く北川、ゆずのイメージを崩さずに内容を深化していく岩沢、という二人のコントラストは他のデュオではなかなか見られない光景(?)でもあります。
 そんな彼らが来週リリースする「ゆずイロハ 1997-2007」は、初のオールタイム・ベストということで、上記4作のベストとは約半分収録曲が被っていますが、収録漏れのシングル曲も結構ありますし、これまでのベストはお役御免、ということにはならないと思います(特に「ゆずのね」)。
 本エントリーが、最新ベストを手に取った後で他のベストに興味を持ったリスナーへのガイドとなってくれれば幸いです。