uechi48 2016年8月3日発売、BEGINのキーボーディスト・上地等の初のソロアルバム。地元石垣FM番組のテーマソング「熱帯楽園島」、SIONのカバー「がんばれがんばれ」を含む全10曲収録。

 現在は本体とは別に、三人のメンバーそれぞれのソロ活動も並行して行われているBEGIN。上地等はこれまで楽曲提供やプロデュースワークなどを務めてきましたが、今回はアルバムジャケットの写真撮影を担当した比嘉栄昇や周りのスタッフに勧められて、人生初のソロアルバムを制作することになった、という経緯がインタビューで語られています。内容は先述のカバー1曲以外の9曲はすべて作詞作曲(1曲はインスト)、編曲も共同クレジットも含めて自身が手掛けており、上地のシンガーソングライターとしての側面を表に出した作品になっています。

 元々上地はBEGINのアルバムでも早い段階(1991年の3rdアルバム)でボーカリストデビューはしており、その後も90年代中盤ぐらいまで、そして00年代半ばあたりからはアルバム毎にギターの島袋優共々ボーカルを務める曲を収録しているので、アルバムまでチェックするBEGINファンならば上地の歌声、というのはある程度浸透していると思われますが、やや高めで真っ直ぐにして癖のない歌声は、比嘉とは好対照。楽曲も三線を取り入れたインストの「蝉の鳴く夜」以外は基本的にピアノやアコーディオンを中心に据えたアコースティック編成で、ボーカル・アレンジも含めてブルースや島唄色といったBEGINのサウンドからは距離を置いた聴き心地。

 また、「大人世代に向けての応援歌集」というテーマで制作されたそうで、人生の決意表明的な「回遊者」、ノスタルジー溢れる「俺たちの草野球」、旧友との酒盛りソング「軽く一杯」など、歌詞は全体的に自叙伝風。自宅で飼っているウサギへのラブソング「栗色の月」BEGINの最新アルバムに収録の「俺は嫌って言う」(比嘉作品)の意匠返しのような「俺は好きって言う」などのコミカルな曲もあり、見渡すと確かに応援歌的な曲は多いのですが、熱い声援を同世代に!というわけではなく、「レモンチューハイ」を筆頭に肩の力を抜いて「色々あるけどお互い頑張ろうな」という緩く温かいメッセージは伝わってきました。

 タイトルの「48」は本作品リリース時点での上地の実年齢。そんな彼の作風は年相応…よりも結構若く(年の積み重ねをあまり音に出さずポップでライトな方向)癖もないので聴きやすい一方、耳当たりが良くてスッと通り抜けてしまう面もあります。地味ではありますが、何回か聴くうちに染み渡ってくる作品でした。