suemitsu 2016年10月12日発売、末光篤のソロ・プロジェクトSUEMITSU & THE SUEMITHのメジャー3作目となるオリジナル・フルアルバム。シングル「This Merry-Go-Round Song」(末光篤名義)「Appassionata feat.細美武士」を含む13曲+ボーナストラック「Glory Days」(大江千里のカバー)「Venus feat.Kentaro Takizawa」(配信シングル・SHOCKING BLUEのカバー)2曲の全15曲収録。初回限定盤にはMVを収録したDVDが付属。

 末光篤名義のミニアルバム2枚、フルアルバム1枚を挟み、2008年の「Shock On The Piano」以来実に8年半振りとなるSUEMITSU & THE SUEMITH名義でのアルバムリリース。前年の2015年からこの名義での活動を再開したとのことですが、インタビューによると本作はアルバム自体を貫くテーマなどは特になく、彼の言葉を借りれば「やりたいことを、やりたい人と、1曲ずつ完成させていく」という制作姿勢だった様子。
 末光名義での三年前の前作「色彩協奏曲」でも行われていたボーカリストとのコラボレーションは継続され、大橋トリオを招いた「Invention」、かねてから末光がファンということを公言し、カバーも発表していた少女隊による「Shooting Star We Are」、チャットモンチーの橋本絵莉子とのデュエット「幻想ノ即興曲」などより活性化。さらには大江千里作詞、tofubeats編曲による異色のEDMナンバー「Pinocchio」も収録されるなど、これまでプロデュース業などで培ってきた彼の人脈を活かした沢山のミュージシャン達が集った作品になっています。

 上記の競演陣との楽曲作りという影響もあるのか、「未完成」「Rock Black」など、活動休止前のSUEMITSU & THE SUEMITHで感じられたピアノやドラムスが主張しまくる質量の濃いサウンドも何曲かありますが、全体的にはもう少し軽やかな雰囲気。ピアノロック!というよりも、ライトな「水玉賛歌」「Summertime '83」や、哀愁漂うミディアムナンバーの「言葉」など、ピアノ主導の生音中心のポップミュージックといったイメージの曲が多く、これまでの彼の作品の中ではかなり聴きやすいアルバム。曲のキャッチーさに比べると正直埋もれがちに感じていた末光自身のボーカルもしっかり前面に出ているミックスにもなっており、彼のボーカリストとしての成長もうかがえました。

 今回の復活はかつての焼き直しではなく、「SUEMITSU & THE SUEMITH」→「末光篤」と経てきたこれまでの音楽活動を咀嚼しての新たなステージ、といったところでしょうか。ボーナストラックの2曲のように次はフロア向けのバリバリのEDMで…という展開はないとは思いますが(笑)、とりあえずは祝・復活。そして今後の活動にも期待したい1枚ですね。