
横山剣のデビュー35周年を記念して制作された本作は、新曲は「TOTSUZEN CAR CLUB」「モトマチブラブラ」の2曲のみで、過去に彼が他のアーティストに提供してきた楽曲、または彼が昔在籍していたバンドの楽曲をクレイジーケンバンドでセルフカバーした作品。その提供範囲は幅広く、TUBE、SMAP、ジェロ、和田アキ子、一青窈、シゲルBROWN(松崎しげる)、グループ魂、MOONDOGSなどなどと、男女世代の分け隔てなく提供してきた各作品を、CKB流のアレンジでお色直ししています。
筆者は提供先の原曲についてはほとんど聴いたことがないのですが、本作のセルフカバーを聴く限りでは各アーティストへのイメージを尊重して…というよりも、横山剣の作風のまま提供したかな、といった感じ。タイトル曲の「香港的士 -Hong Kong Taxi-」や「バスが来る」の原曲が神崎まき(90年代にデビューした女性J-POPシンガー)に提供した曲というのがまず想像つかないと言いますか。一青窈に提供した「茶番劇」が王道CKB節に思えるのもまた然り。まあこれはCKB色にばっちり染め上げたアレンジ+剣さんの独特の歌いまわしで余計にそう思わせてしまう感があるのですが(笑)。
とはいえ、提供ということなのか、「退屈な日曜日」(SMAPに提供)のようなCKBよりもポピュラー寄りの曲もあったり、原曲が小泉今日子&中井貴一のデュエットだった「T字路」では野宮真貴をフィーチャリングしたり、グループ魂に提供した「欧陽菲菲」が本作ではネタ要素のない正統派な作品に仕上がっていたり、みんなのうた風の「オヤコのマーチ」(シゲルBROWNに提供)では新たな一面を感じたり、かと思えば「BABY BABY BABY」(ダックテイルズ時代の楽曲)など筆者の好むメロウ路線の曲も取り揃えられていたりと、通常のオリジナルアルバムよりも曲調のバラエティ感はあり。相変わらずトータル演奏時間は長い(約75分)のですが、彼らの中では比較的聴きやすいアルバムでもありました。
あまりにもCKB色が強くて、コアなファン以外のリスナー(筆者がそうなんですが)に「これ、全部新曲のオリジナルアルバムだよ」と言ってしまっても全く疑われなさそうな恐るべき(?)企画盤。楽しく聴けました。
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