
コラボベストを挟んで約2年振りのオリジナルアルバムとなった本作。バンドを固定した前々作、feat.名義でゲストアーティストを招くなどの試みが特色でもあった前作に比して、本作は突出したゲストクレジットを設けずに曲ごとに様々なミュージシャンが演奏参加するという、ある意味普遍的な内容。目を引いたのは基本的に全曲さかい自身が編曲を行っていたクレジットが今回は単独名義では11曲中4曲と大幅に減少。既発売の「ジャスミン」は蔦屋好位置、その他Avec Avec、石崎光、mabanuaらが編曲に携わるという試みがなされていた点。
とは言っても、それによって劇的に彼の楽曲が変わった!ということはなく、ピアノを軸に置いたポップミュージックは今まで通り。軽快に奏でられる「Doki Doki」「WALK ON AIR」、アダルトテイストの「下剋情緒」「愛は微熱」、歌詞に奏法も登場するスローナンバー「あるギタリストの恋」、テーマ性を含んだ「SELFISH JUSTICE」等々、良い意味でのさかいゆうのカタログ見本市のような構成が楽しめる充実の内容。ボーカルにも曲によって微妙に声色を使い分けるなど、以前よりも表現力がついてきたような気がします。全体を通してアップテンポ気味な曲が多いので、最後の「ジャスミン」のバラードの良さがより引き立った、という配置も特筆しておきたいポイントでした。良質のピアノポップスアルバムとして本作もまたお薦めの作品です。
初回生産限定盤の特典CDは「さかいゆう COVER COLLECTION」。過去に参加したカバーアルバムから7曲+新録の「よさこい鳴子踊り」、そして2015年9月に開催されたビルボードライブからのカバー音源2曲を加えた全10曲収録。どの曲もカバー元のアーティストの著名な楽曲がセレクトされており、「今夜はブギーバック(NICE VOCAL)」(小沢健二 featuring スチャダラパー)はラップ部分が完全カット、ヒップホップ調の装いの「The Stranger」(ビリー・ジョエル)などの変更はありますが、基本的には原曲を尊重したアレンジ。筆者としては以前にも書きましたが本作にも収録された槇原敬之のトリビュートアルバムでの「遠く遠く」が気に入って、ここでさかいゆうに興味を持ったので、今回の収録は嬉しい限り。また、新録として彼の地元である高知県の舞踊曲をファンク風にアレンジした「よさこい鳴子踊り」も洗練された好アレンジ。こちらのCDも聴いて損なしの内容でした。
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