tutu 2016年9月21日発売、TM NETWORKのボーカリスト・宇都宮隆がTMN活動休止期(1992〜1994年)に活動していたソロプロジェクト「T.UTU with The BAND」形態でリリースされた楽曲+αの全29曲を網羅したCD2枚組に加え、当時のライブ映像を収録したDVDをワンパッケージにした、全曲最新リマスター、Blu-spec CD2仕様による3枚組アルバム。

 T.UTU with The BANDはその名の通り、宇都宮隆が率いるロックバンド。メンバーは完全固定ではないものの、葛城哲哉&是永巧一のツインギター、FENCE OF DEFENCEの山田亘のドラム、そして元REBECCA(当時)の土橋安騎夫のキーボードを核に据え、TMN活動休止から「TMN終了」直前までの約2年間、宇都宮のソロワークを担っていました。その後はこの名義での活動はありませんでしたが、今年の秋に22年ぶりの全国ツアーを展開。本作はそれを記念したプロダクトであり、収録内容は活動2年間にリリースされた3枚のシングル、2枚のアルバム、更にビデオに付属していたCDに収録されていた楽曲を一部バージョン違いを除いてすべて収録、その上に当時の未発表カバー曲、2016年に制作された新曲を1曲ずつ収めた全曲集となっています。

 Disc 1は1993年2月発売の1stアルバム「BUTTERFLY」の全10曲、シングルカップリングの「Midnight Calling You」、ビデオ付属CDの中から1曲、ラストに未発表の「シーサイド・バウンド」(ザ・タイガースのカバー曲)を収録の全13曲。ソロデビューシングル「Trouble In Heaven」(のアルバムバージョン)で始まる本作は、宇都宮のルーツであるという正統派ロックサウンドを標榜したような雰囲気の作風。キーボードの音色は90年代初頭…という印象は否めないものの、野性的なボーカルで熱く歌う宇都宮はTMではあまり見せない路線で生音のバンドサウンドと相俟って比較的新鮮。なお、「シーサイド・バウンド」はクレジットによれば1992〜1993年にレコーディングされたそうですが、バンドメンバーは全く異なり、どういった経緯で録音されたのかが不明ですが、ラフなデモ音源的なものではなくしっかりとしたテイクで収められており、これはこれでアリかな、といった感じ。

 Disc 2は1994年1月発売の2ndアルバム「Water Dance」の全13曲、ビデオ付属CDから2曲、さらに新曲の「flow」で構成された全16曲。特筆すべきはバンドのメンバーである石井恭史(コーラス→ベース担当)と宇都宮が共同で作曲を手掛けた「BOYO-BOZO」名義の楽曲が7曲収録されている点なのですが、本作のクレジットではなぜかユニット名ではなく「宇都宮・石井」の連名名義に。そんな話はさておき(?)Disc 1の前作よりも当時の音楽シーンの主流(まあ言ってみればビーイング的な)に接近したポップロックな内容で、打ち込みナンバーや穏やかなバラードもあり、TMフォロワーにはこちらのほうが取っつきやすい楽曲群だと思います。唯一の新曲「flow」は作曲・編曲が初のバンド名義で勢いのある生音サウンドを聴かせてくれています。

 Disc 3はDVD。1994年リリースの日本武道館ライブビデオの完成前映像を初商品化した「THE VIDEO “Live Water Dance” prototype」として全8曲収録。「Hothouse Fruit」以外は既発映像(の編集前映像?)のようですが、当該のビデオは筆者は未見。本作においては純粋にライブパフォーマンス映像をそのまま収録しているようで、音はライン録りがメインなのかあまり会場の臨場感は拾えていないのですが、カット割りもきちっとされており、「普通のライブビデオ」として十分楽しめる内容だと思います。しかしウツを始めとしてメンバーの皆さん、さすがに若いなぁ(笑)。

 「T.UTU with The BAND」で駆け抜けた2年間を総括、ライブ映像も付いて4,000円+税という、ベテランによくありがちな高額ボックス商法が当たり前の時代に良心的な定価も嬉しい本作。願わくば今後のTM関連のリリースがもしあれば、本作に倣った価格設定にしてもらえるとありがたいです、SONYさん(苦笑)。