2020年09月

2020年09月26日 21:17

milesmovie 2020年9月4日より全国順次公開のドキュメンタリー映画「マイルス・デイヴィス クールの誕生」を先日都内のミニシアターで鑑賞してきましたので、その鑑賞記を。
 ドキュメンタリー映画なのでネタバレも何もないと思いますので、今回は畳まずに書きます(笑)。

 アメリカで昨年夏より公開された本映画は、ジャズ界の帝王と呼ばれるトランペッター、マイルス・デイヴィスの65年の人生を彼の遺した発言からの引用や関係者からの証言を基に構成された約2時間のドキュメンタリー作品。
 基本的には時系列順に出来事を並べ(一部前後している箇所もあったような)、彼の生前のモノクロ写真、動画などを使用、BGMは彼の音楽作品からの楽曲をふんだんに使用。オープニングからラストまでひたすら彼の生涯を追った作品に仕上がっていました。

 マイルス・デイヴィスの没年は1991年。その頃筆者は中学に入学したばかりの頃だったわけで、リアルタイムで彼の音楽を意識して聴いたことのない世代ではありますが、「マイルスはこういう性格の人間だった」ということは後に情報を得て知っており、作中でも「世間一般のイメージ通りのマイルス」像が展開。こんな意外な一面が!?的な要素は特になかったような。生涯で4回も妻(あるいはそれに近い女性?)を娶るなど、恋多き人物だった面も語られていましたが、映画を観ていると彼女らの存在も音楽制作のモチベーションのひとつだったようにも思えました。

 エピソードとしては初めて聞くような話と、何度もドラッグ中毒になっては立ち直り…の繰り返しや、名声を得たアルバム「Kind of Blue」発売直後であるにも関わらず、白人警官に言いがかりをつけられ暴行を受けて血まみれに…などの既知の話が半々ぐらい。あまりマニアックになり過ぎず、彼の情報をほとんど知らない観客がふらりと観に来ても楽しめるという意味ではそれほど敷居が高くない内容だと思います(ディープなマイルスファンにとってはほとんど知ってる話になっているのかもしれませんが)。個人的にはこれぐらいの案配がちょうど良かったな、という感想。

 モダンジャズの全盛期を彩った、存命の関係者ミュージシャンがスクリーンに次々出てくるシーンではやはり興奮(笑)。特に50年代末のカルテットのドラマー、ジミー・コブ(今年逝去)、60年代カルテットのウェイン・ショーター(サックス)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)らが本人の口からマイルスのエピソードを語るシーンはテンションが上がりました。あと彼らも含めて皆マイルスのセリフを言う時は彼の声色を声帯模写して物真似っぽく語るのは何だか微笑ましかったです。ちなみにそのハスキーな声になったエピソードも劇中で語られていましたね。

 常に開明的であり、古い伝統よりも新しい音楽に刺激を受け、興味を持ったジャンルの音楽に積極的に挑戦する…という彼の芸風には賛否両論あるでしょうが、最後まで守りに入らず、死の間際までミュージシャンとしてそのスタンスを貫いたのはなかなか真似できない格好良い生き方。前述の通り一見さんお断りな内容では決してないので、マイルス・デイヴィスという人間に興味を少しでも持っている方には是非鑑賞してもらいたい映画でした。

 なお、上記ミュージシャン達のコメントトラックを含む映画のサントラも公開に先行して今年の2月に発売されたとのことです。

2020年09月19日 22:14

evabox 1995年10月より放送を開始したTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は来たる2020年の10月でちょうど25周年。そのアニバーサリー企画として、2020年10月7日にTVシリーズ(全26話・1995〜1996年)、劇場用映画(2作・1997年)関連の既発サウンドトラックを5枚組のCD-BOX「NEON GENESIS EVANGELION SOUNDTRACK 25th ANNIVERSARY BOX」に収めて発売されます。今回の「CD Review Extra」では、BOX発売を記念して、鷺巣詩郎が手掛けた収録5作のサントラ+劇場版公開前に発売された番外編CD1枚の計6枚を1枚ずつレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。続きを読む

2020年09月12日 20:57

tmclips 2020年8月26日発売、TM NETWORKデビュー35周年のフィナーレ企画として「DECADE 2020 HD REMASTER」と同時にリリースされたBlu-ray映像作品。

 元々はデビュー20周年時の2004年末「All the Clips」としてソニー在籍時代(1984〜1994年、1999年)の公式MVを網羅(1曲に複数あるMVは1バージョン)したDVDとして発売。今回はリニューアル盤としてそのDVDの全編をリマスターしたのに加え、特典映像として、1987年にリリースされた映像作品「Self Control and the Scenes from "the Shooting"」をリマスターし収録。「Self〜」も2005年にDVD化されており(現在は廃盤)、本編共々すべてが既発映像。ブックレットは「All the Clips」を踏襲したデザインに加え、3頁に渡る藤井徹貫のライナーノーツ(といっても本作品には全く触れていないからエッセイ?)、そして今回のリマスタースタッフ一覧が詳細に記載されていて僅かながらバージョンアップを感じさせる内容になっています。

 本編の内容に関しては以前に全曲レビューを行っているのでこちらも参照(今回の発売にあたって一部加筆しました)。リニューアル盤の画質ですが、デビュー当時の作品より1985〜1986年の作品のほうが画像がかなり粗かったり、90年代のTMN期以降は画質が向上していたりと、昨年発売のライブBlu-rayボックス同様の感想で、元の映像の保存状態によって大きく左右されている印象。まあ最新のものでも20年以上前の作品だし、現在の家庭用の平均的なテレビの大きさで「ギリギリ観られる」画質になった、というのが正しい表現でしょうか。個人的には「Rhythm Red Beat Black」で宇都宮隆が顔にうっすら白塗りメイク(?)しているように見えたのは新鮮な驚きでしたが。なお、旧DVDと比較すると、画面に出る白い文字(「Kiss You」「Nights Of The Knife」)の明度が少し落ちた=画面に馴染んだかな?という違いを感じました。

 特典映像は、本編でも収録されている「Self Control」のMV制作時に同時進行で撮影されたと思われるショートムービーが約10分、そしてアルバム「Self Control」の収録曲をBGMに、撮影時のメイキングやオフショットを収めた映像が約15分という内容。ショートムービーはストーリー性は一応ありますが、セリフなどは一切なく、メンバー三人の出番よりも出演している子供達のシーンの方が多いという「Self〜」のMVを素材にしたイメージビデオといったところ。むしろエンドロールの木根尚登の妙な動きのほうが気になりました(笑)。メイキング映像も特にメンバーの意外な素顔が!というサプライズもなく普通だな…という感じでしたが、宇都宮が片足を上げて映る映像(後に「Nights Of The Knife」MVで使用)はここからの引用だったのか、という発見が嬉しかったりしました。

 前述の通り、全既発映像のアップコンバーター版なので、旧盤を持っていないリスナー、あるいは筆者のような重度(?)のファン向けで、DVD盤で満足できる層にはわざわざ買う必要はないかな、というのが正直な感想。なおSONY公式では9月末まで、今回の2作品の発売を記念したWebラジオを公開中。旧知の仲であるアナウンサー・上柳昌彦の進行で宇都宮・木根がそれぞれ当時の裏話を語るなかなか面白い内容です。こういうのを副音声にでも入れてくれれば良かったのに(笑)。ファンの方は公開終了前までに是非ご視聴のほどを。

2020年09月05日 15:20

sakaitouch 2020年3月4日発売、さかいゆうの通算6作目のオリジナルアルバム。全12曲収録。初回限定盤はSHM-CD仕様+昨年10月に日比谷野外大音楽堂で開催されたライブの模様と本作のレコーディングドキュメンタリーやMVを収録したDVDが付属。なお、本作から厳選された9曲をアナログ盤で8月29日にリリース。さらに収録曲「Soul Rain」のピアノ弾き語りバージョンのシングルCDと同梱で本作の全曲のインストトラックを収録した「Soul Rain + Touch The World Instrumentals」も6月に限定生産で発売。本レビューはCDのみの通常盤となります。

 昨年1月の前作リリース後、6月、7月に配信限定のリミックス曲を2作リリースした後、8月からは新曲の配信がスタート。その際の楽曲「Journey」は本作には未収録(MVのみ初回盤のDVDに収録)で、以降の「She's Gettin' Married」(9月)、「Dreaming of You」(10月)、「孤独の天才 (So What) feat.Terrace Martin」(11月)を収録。さらにアルバム発売に先行して「21番目のGrace」(2月頭)「Getting To Love You」(2月末)も先行配信されたので、アルバム発売時の未発表新曲は7曲。なお、「21番目〜」の配信時よりユニバーサルミュージック内のオフィスオーガスタ専用レーベル・newborder recordingsに移籍しています。

 国内・海外問わずのミュージシャンを招いて制作された前作と異なり、本作はさかいが世界を旅しながら海外のミュージシャンとのレコーディング(ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンパウロ)を重ねて作り上げたとのこと。だからというわけではないのでしょうが、英語曲(一部日本語が混じっている曲も含めて)は4曲と多め。どの曲をどこの地域で誰とレコーディングしたのかは歌詞ブックレットのクレジットで詳細に記載されているので判別可能ながら、その地域独特の音が色濃く出ているか?というのところまでは正直分かりませんでしたが、どの曲も日本の(いわゆる世俗的な)ポピュラーミュージックからはかけ離れた音、フルートやサックスなどの金管楽器をフィーチャーしたソロの上質さ、そして全体に漂うきめ細やかなバンド演奏という印象は強く感じました。
 その他、耳を惹いたのは「孤独の天才〜」でのこぶし回しっぽい歌い方や、他の曲でも従来よりもハスキーな歌い方をするなど、表現力が上がっているな、と感じさせる曲が数曲あり、ソングライターやアレンジャー、プロデューサーとして評価されがちな彼の、ボーカリストとしての成長もうかがうことができました。

 ライトリスナーが興味を示しそうなシングル級のナンバーが特になく(強いていれば再録でシングルカットされた「Soul Rain」は結構いい線行ってるような気もしますが)、前作のレビューでも書きましたが、活動を重ねる毎に一般ウケから遠ざかっていくという傾向が更に強まったかな、という感想。所属のオフィスオーガスタの中のみならず、いよいよ日本の音楽界で異色のポジションを築き始めた彼、次の一手はどう出てくるのか期待です。

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