
1995年のデビューから2000年までの彼女のトータルプロデュースを務めた織田哲郎。そんな彼の本人名義の楽曲や、作家として他アーティストに提供した作品をカバーしたのが本作。織田自身は歌詞ブックレットに相川とのツーショット写真が1枚、巻末クレジットに「Very Special Thanks to〜」として名前が記載されているのみで、今回の作品の制作には直接関わっていないようですが、発売直後の相川七瀬のインタビューではアレンジに関して提言をしていたことが彼女の口から語られるなど、間接的には絡んではいるようです。
選ばれた楽曲は1991〜1995年まで、相川のデビュー直前までに織田が発表してきた作品の中からのセレクト。この時期は彼のビーイング在籍時にあたり、本人名義の「いつまでも変わらぬ愛を」、近藤房之助&織田哲郎名義の「BOMBER GIRL」を除くと8曲中5曲が当時所属のビーイング系のアーティストに提供した楽曲で占められています。また、ゲストボーカルとしてつるの剛士、SHOW-YAの寺田恵子、杏子、中村あゆみが招かれている他、コーラスとしてビーイング関係者である大黒摩季、宇徳敬子、元WANDSの柴崎浩、元the FIELD OF VIEWの浅岡雄也もクレジット。宇徳以外は自身と関わりのある楽曲のコーラスに主に参加。ギタリストの柴崎がギター演奏ではなくコーラスで参加する、というのは少々驚きましたが、アレンジ、演奏自体は当時のビーイングとは関わりのないメンバーで制作されています。
さて、リアレンジされた楽曲の感想なのですが、上記のインタビューにもありますが、「相川七瀬の良さってものは、パンチがあるっていうこと」という織田のアドバイスに従って、どの曲もエレキギターがバリバリに鳴り、ドラムが隙間を埋めるように響く、ラウドなロックサウンドが炸裂。「チョット」「Precious Summer」など、元々アッパーな曲に関してはコード進行を一部変更するなどして現代的によりビルドアップ、という感想ですが、「碧いうさぎ」や「君がいたから」「翼を広げて」などのミディアム〜バラード系の曲でも歌詞に寄り添う気配はほとんどナシで(苦笑)、良くも悪くも「相川七瀬のセールス全盛期のイメージ通り」の仕上がり。これらの原曲のイメージに思い入れがあるリスナーは正直戸惑うと思います。筆者も一聴してちょっとギョッとした曲もあったのですが(笑)、相川七瀬が織田哲郎作品のカバーをする意味、というものを考えて構築した世界、これはこれでアリかな、とも思いました。
せっかくならば久々に織田哲郎プロデュースの新曲でも1曲ぐらい…とも思いましたが、既に独り立ちを果たし、自分の足で歩き続けている彼女ですから、敢えてそうしなかったのかもしれません。本作、特にサウンド面では賛否両論あるとは思いますが、結構面白いアルバムでした。
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