keizo25 2016年9月7日発売、中西圭三のデビュー25周年を記念してリリースされたベストアルバム。CD2枚組全30曲をリマスターして収録。初回限定盤にはDVDが付属。本エントリーは初回限定盤のレビューとなります。

 1991年にデビューし、90年代に男性ポップスシンガーとして活躍、その後は提供作家として地道に活動を続ける中西圭三。ベストアルバム自体はこれまでにシングルコレクション2作、セルフセレクション1作、レーベル主導と思わしきベストが2作と、既に5作がリリースされていますが、本作は彼の25年間の活動をレーベルの垣根を越えて選曲し、基本的に時系列順に並べられたオールタイム・ベスト。各ディスクのラストには新曲が収録されています。なお、これまで彼の作品はパイオニア、ユニバーサル、VAPなどからリリースしてきましたが、今回は今まで個人名義としては一度も関わりのなかったワーナーミュージックからの発売となっています。

 Disc1はデビューから1995年までの楽曲を収録。出世曲「Woman」、代表曲「Ticket To Paradise」「You And I」「眠れぬ想い」「非情階段」など、小西貴雄とタッグを組んでいた活動全盛期の楽曲がズラリ。ダンスビートを基調にしたこの頃が今でも中西のパブリックイメージであると思われますが、「Kiss,Merry X'mas」以降、佐橋佳幸をアレンジャーとして迎え、「SO BAD」などのアコギを前面に押し出した時期の楽曲も収録。この路線、当時はちょっと馴染めなかったのですが、今聴くとこの時期の楽曲も改めて良さを感じられました。

 Disc2は1996年から現在に至るまでのセレクション。小田和正をアレンジャー&コーラスとして迎えた「次の夢」、大御所シンガー、ピーボ・ブライソンとのデュエット「What I Do For Love」、ブレイク前のゴスペラーズをゲストに招いた「WITH」など、コラボレートやバラードシンガー的な側面が目立ってきた時期から、「Choo Choo Train」「タイミング 〜Timing〜」「ぼよよん行進曲」という提供曲のセルフカバー、AOR要素満載の「Twilight Stream」、死別を歌ったバラード「風雅」など、多種多様な楽曲が選ばれています。後半はリリース時期が飛び飛びになっていることもあり、Disc1ほどの統一感は感じられませんが、彼自身が作詞を手掛けた活動後期の曲も多く含まれており、詞曲を手掛けるソングライターとしての手腕も大いに感じられる内容になっています。

 新曲は全部で3曲。「Goods for you.」「美しい唄」はこれぞ往年の中西節の美メロバラード。「千年の誓い」はケツメイシのRYOをフィーチャリングしたEDMナンバーで現代の音楽シーンに寄せた作品と、ある意味両極端の楽曲を配置。だいぶ待たされた(苦笑)新曲ですが、どの曲も好印象の仕上がりでした。
 欲を言えば車のCMソングに起用された「Precious Love」や、「MUST BE HEAVEN」「HIGHER SELF」などのドラマ関連のシングル曲、現時点での最新アルバム「I'm home」からも選曲して欲しかったところですが、それを言い出すとキリがないので省略(笑)。2000年代突入以降はリリースペースが極端に落ち、かつてのように音楽シーンに頻繁に顔を出す機会も減ってしまいましたが、相変わらずのソウルな歌声やメロディーメイカーぶりの健在を堪能できる、お薦めベストアルバムです。

 初回限定盤付属のDVDには初商品化となる歴代のMVを11曲収録。本編CDとは異なり時系列はランダムで収録しているようですが、本編では収録漏れした「片想いのバースデー」「新しい僕になろう」「それぞれの地平線」「願い」が含まれるなど、ベスト本編を補完するような意味合いもあるのかも。中西圭三は当時の他のアーティスト同様、MVは曲によって作ったり作らなかったり…というスタンスだったのですが、地方局のMVオンエア番組で定期的に流されていたのをリアルタイムでよく観ていたので、各ヒット曲のクリップは懐かしさ満載でした。だいたいは歌唱中心のオーソドックスなタイプのMVが多めですが、「片想いのバースデー」の内容のコミカルさには、この映像は初見だったので結構驚きました(笑)。あと言っちゃいけないかもしれませんがこの頃はスリムだったよなぁ…と。まあこちらは初回盤ということで結構高めですし、中西圭三の提供楽曲を含めたベストを聴きたい、という層は通常盤をどうぞ。