2016年06月

2016年06月25日 15:32

d-pro 2016年5月18日発売、Being/GIZAの新規プロジェクト「d-project」始動第1弾作品としてリリースされた、ZARDとのコラボレーションアルバム。全14曲収録。本作のオフィシャルページはこちら。

 「d-project」とは、長戸大幸プロデューサーのもと、GIZAの作家陣や若手クリエイター達が集結して楽曲重視の質の高い作品を送り出そうと始まったプロジェクト、とのこと。本作に関してはZARDの代表曲をオリジナル曲の制作やライブに関わった徳永暁人、大賀好修、岡本仁志らに加え、若手アレンジャー、ミュージシャンの手によってリアレンジ。これに坂井泉水のオリジナル音源のボーカルを加え、「ZARD」の作品として成り立たせた新規録音アルバム、と呼んでもいいでしょう。
 アレンジャーだけでも13名が各曲に参加、コーラスとして起用されたボーカリストも男女問わずに複数クレジットされていますが、中でも目を引くのが「Guest Vocal」とクレジットされた大黒摩季。彼女といえばビーイング離脱時に色々と揉め事があったらしく、その後の非公式アルバムや某ライナーノーツでは散々暴露記事を晒され続けてきましたが、昨年あたりからまたビーイングとは交流が復活し、直近のニュースではビーイング復帰が決定。そんな流れでなのか本作にも14曲中11曲にボーカルとして参加。坂井の主線に寄り添うようにハモったり、時に単独でメインフレーズを歌い上げたりと、積極的に本作に携わっています。そのボーカルはセールス全盛期のシャキシャキ感(?)から少しウェット気味な声に変わっていますが、「ああ、大黒摩季の声」といった感じで、長年の確執を経てビーイング作品に十数年ぶりに登場した彼女のボーカルを聴いて感慨に浸ることしばし。

 作品全体のニューアレンジの方向性としては、坂井泉水逝去後の一連の「ZARDの王道」をベーシックにしたリアレンジとは異なり、四つ打ちビートをメインとした公式ページの文章通り「ダンスロック」寄りのEDMに接近したサウンドで統一。選曲もZARDのヒット曲からノリの良い曲をピックアップしており、特に中盤の「雨に濡れて」「愛が見えない」「こんなにそばに居るのに」辺りは原曲のスピード感を別方向で現代風にパワーアップさせた感がある良アレンジ。他には曲中でラップが登場する「愛は暗闇の中で」、冒頭のピアノ独唱が新鮮な「Don't you see!」など適度なバリエーションもありつつ、かつての「時間の翼」の時の10周年記念リミックスのような長尺アレンジをしてしまった曲もなく、あくまで「ボーカルを重視しメインに据えた歌モノ」の体裁になっていたのにはひと安心(?)。ラストの「かけがえのないもの」は1コーラスが完全にインストでボーカルが2コーラス目から入る、という変則構成になっていますが、エンドロール的なアプローチということで、これはこれでアリかな、とも。

 プロデューサーであり中心人物であった坂井泉水が全くノータッチにも関わらず「ZARD」名義で発表された新作ということでは賛否を呼びそうな本作。筆者としては今年デビュー25周年を迎えての記念プロジェクトのひとつ、としての制作陣からの「トリビュートアルバム」として捉えて素直に楽しむことができました。

2016年06月19日 13:02

magokoropttf 2015年10月7日発売、真心ブラザーズが設立した自主レーベル「Do Thing Recordings」からのアルバム第2弾となる、キャリア初のカバーアルバム。全11曲収録。初回生産分は紙ジャケ仕様。

 BSの音楽番組「The Covers」の出演をきっかけにスタートしたという今回の企画。1973〜1984年までに発表されヒットした昭和の女性アイドル歌謡曲をセレクトしており、彼らの少年〜青春時代に流れたであろう楽曲が揃っているようですが、選曲は彼らを含めたスタッフ一同が考え抜いたものらしく、特設サイトのインタビューによればYO-KING、桜井秀俊のどちらかしかリアルタイムで知らない曲もあるとのこと。そんな経緯もあり、原曲へのリスペクトをありったけ込め気合いを入れて…というよりも、真心ブラザーズ流の解釈で現代版バンドサウンドで甦らせてみました、という趣。ちなみに今回のバンドは前作と同様「Low Down Roulettes」(=真心二人+岡部晴彦+伊藤大地)の四人組で完全に固定ということで、全編統一感があり、加えて11曲中6曲で使用されたスティールギターの音が強く印象に残るサウンドに仕上がっています。

 さて、このカバーアルバム、一番新しい作品で1984年。筆者はその頃幼稚園ぐらいであり、今回の収録曲は半分ぐらいしか知らず、しかもほとんど後追いで他のアーティストがカバーしたものを聴いて知る、という経緯での出会いがほとんどだったので、オリジナルへの思い入れというものは正直言ってありません。なので真心ブラザーズによるカバーで女性の曲…という点でも、モロに女性言葉満載の歌詞をYO-KINGのあの独特な声で終始歌われるのはちょっとキツい…とという一点を除けば(苦笑)ほとんど抵抗なく聴くことができました。アルバムコンセプト上「女性アイドル歌謡曲」と一括りにしてはいますが、松本隆、大瀧詠一、筒美京平に細野晴臣、果ては吉田拓郎と、豪華な作家陣の手腕にも外れなし、といったところ。特に「早春の港」(南沙織/1973年)や「ゆ・れ・て湘南」(石川秀美/1982年)が気に入りました。後者などは原曲を知らなければ彼らのオリジナルと言われても納得してしまうような、真心っぽさが凝縮されたカバーと呼んでいいのでは、と思ったぐらいです。

 前述の特設サイトには 「アイドルブームに沸く現在の音楽シーンに、その礎となった名曲カバーで一石を投じる」「当時を知らない若い世代には(中略) 音楽との新たな出会いや発見になるであろう一枚」という、結構大仰な煽り文が掲載されてはいましたが、懐メロとして気軽に彼らの歌と演奏で過去の名曲を楽しむ、という意味で肩肘張らずに聴いてもらいたい作品ですね。

2016年06月12日 15:27

hataaof 2015年12月16日発売、秦基博の通算5枚目のオリジナルアルバム。シングル「ダイアローグ・モノローグ」「ひまわりの約束」「水彩の月」「Q&A」を含む全13曲収録。初回生産限定盤は特典DVDを同梱したデジパック+三方背BOX+歌詞カード兼用の32Pブックレット仕様。

 非シングル曲の自選ベスト企画アルバムを経て、オリジナルとしては前作「Signed POP」から約三年振りとなる作品。その間の2014年夏にシングル「ひまわりの約束」がヒットを記録し、彼の新たな代表曲としてすっかり根付いた感がありますが、アルバムレコーディング自体は2015年の年明けから開始されたということで、ヒットを受けての急ピッチの製作ではなくいつも通りの(?)マイペースなアルバム制作作業が進められたようで、リード曲的な「デイドリーマー」「ROUTES」を筆頭にアルバム用の新曲が9曲と、待たされただけのことはある(苦笑)佳曲が並ぶ構成となりました。

 本作の大きな売りは、ついに秦自身が全曲サウンドプロデュースまでを担当した、という点。これまでは日本のポップス界を牽引する大物プロデューサーやアレンジャーに楽曲の最終的な仕上がりを委ねていましたが、今回は完全にセルフプロデュース。ピアノバラードやロック色の強い曲は特にアルバムの新曲としては収録せず、浮遊感のある「嘘」「ディープブルー」、アダルトな「美しき穢れ」に対するような王道ポップスの「聖なる夜の贈り物」、さらには個人的お薦めなラテン風の「Fast Life」など、シングルA面では見せない秦基博の側面を纏めてみた、という感じ。アレンジ的にはどの曲も過剰には音を詰めず、サウンド面でのインパクトという意味では正直地味。ですが、派手さがない分耐久度が高いと言いますか、何回か聴くうちに楽曲の魅力に気がつく、という作風。カラフルさという意味では複数のアレンジャーが楽曲を彩った前作に分がありますが、アルバム1枚を通しての「芯」のようなものはこちらが一歩リードしているかな、という印象を受けました。本作も完成度の高いお薦めなアルバムですね。

 初回生産限定盤のDVDにはアルバムレコーディングと絡めてあらきゆうこ、皆川真人、鈴木正人との対談、2015年9月に青森で開催されたワンマンライブ「世界遺産劇場」のドキュメントやライブ映像で構成した「Behind of “青の光景”」、そして本作には収録を見送られたシングル「言ノ葉」のMVを収録。前者はアルバム制作の過程や演奏者から見た秦基博の人となりなどがインタビューから窺える興味深い内容。後者は完全なアニメーションで、映画「言の葉の庭」の内容を知らないと何これ?的な作品ダイジェストのようです。まあ、こちらはオマケということで。

2016年06月04日 22:32

kirorochild 2016年3月9日発売、Kiroroの通算3枚目のベストアルバムは、メンバー本人達が「子供に聞かせたい、子供と一緒に歌いたい楽曲」をセレクトした企画盤。今年公開のディズニー映画「アーロと少年」の日本版エンディングテーマとして新録された代表曲「Best Friend 〜Mother Earth Version〜」を含む、全11曲収録。

 近年のKiroroはメンバーそれぞれの産休を経て、育児との兼ね合いなのか非常にゆっくりとしたペースでの活動が続いており、本作はアルバム作品としては2006年の「キロロのいちばんイイ歌あつめました」以来実に10年ぶりのリリース。前作に引き続きベスト盤になってしまったわけですが、前作はファン投票による結果シングルコレクション的な編成だったのに対し、本作は前作以降のシングル「幸せの種 〜Winter version〜」「みんなあなたを愛してる」がアルバム初収録、「紅芋娘」「Wonderful Day」など、定期的に活動していた頃の終盤にあたるアルバム曲などもセレクトされており、前作とはそれほど被りのない内容。ミディアム調の曲を中心にある程度曲調にも幅があり、トータルタイムも50分と長すぎず短すぎずの適度な時間なので、「久し振りにKiroroの曲を気軽に楽しむ」、という点ではこれまでのベスト盤の中では一番とっつきやすい作品かもしれません。

 さて、選ばれた楽曲達は、本作のタイトルのように「子供向け」を強く意識した…というよりも、母親への感謝の気持ちを込めた「未来へ」、純朴すぎるラブソング「月の夜」、幼い時代を振り返る「僕らはヒーロー」、力強く前向きな「僕らのメッセージ」など、気軽に口づさめる曲からそうでないものまで結構色々なカラーの曲が集まりつつ、これからの人生の歓びや楽しさを次の世代に伝えていこう、といった点で統一された、コンセプトベストのお手本のような内容。また、彼女達のシングル曲は意外と児童層向けアニメ主題歌に起用される機会が多く、アニメソングとして聴いてきた世代がハイティーンになったと思われる現在、本作に収録されたこれらの曲を入り口にKiroroの音楽世界を体験するには良い入門編だと思います。

 なお、ラストのボーナストラックには二人の歌とピアノ演奏による新曲「おやすみのうた」を収録。これぞ子守唄、といった感じの優しいピアノバラードで穏やかに締めと、コンセプトのみならず構成面も好印象。作品の性質上、街の雑踏の中よりも自宅で静かに聴きたい1枚ですね。

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