
1981年から現在まで続く、甲子園での夏の高校野球開催期間中に連日オンエアされるその日の試合のダイジェスト番組「熱闘甲子園」。ドキュメンタリータッチを基本に汗と涙の勝ち抜き戦を伴走するJ-POPアーティストによるオープニング、またはエンディングテーマを12曲収めたのが本作。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この「今週の1枚」では、既に2011年時に「一番熱かった夏〜熱闘甲子園の歌〜」というコンピをご紹介しているのですが、本作はその純然たる続編にあたり、前作以降の2001〜2009年の間に使用されたテーマソングを収録対象(選曲されなかった曲もあり)としています。タイトルが若干被っているので分かりづらい、という声もありそうですが(苦笑)、00年代の「熱闘甲子園」関連楽曲のほとんどが一同に会した作品となっています。
続編ということで各年ごとの出場校、各大会の簡易的な説明をその年に起用された楽曲の歌詞と並べて記載するという、前作のフォーマットを踏襲しつつ、収録曲順に関しては時系列だった前作とは逆に、2009年から年代を遡っていく構成。聴き進めていけば21世紀のJ-POP史を遡っていくタイムトラベル的な内容になるわけですが、既に多様化に次ぐ多様化が進んでいた2001年時点の楽曲でもそれほど時代性を感じることなく聴くことができるのは前作とは大きく異なるポイント。
参加アーティストもブレイク直後の森山直太朗、セールス全盛を迎えていたガールズバンドZONE、既に安定した人気基盤を獲得していたBEGIN、一時期毎年のように枠を確保していたこともあった秦基博、スキマスイッチ、スガシカオに福耳といったオーガスタ系アーティスト、そして高校野球中継のテーマソングといえばこの人!という西浦達雄等々…と、若手からベテランまでが集結し、それぞれに彩りを添えています。
そんな中で個人的にピックアップしたいのは「泣き声のようなサイレン/陽射し吸い込むダイヤモンド/この熱さだけはきっと忘れない」という歌詞から試合の光景が浮かぶ「Halation」(秦基博)、一発逆転への高揚感と試合終了の無常感をそれぞれに感じる「奇跡」「夏陰〜なつかげ〜」(スガシカオ)、選手の父親目線で描かれた「やさしさにかわるまで…」(西浦達雄)、甲子園出場経験のある実弟に材を採ったという、実感が伝わる応援歌「終わらない夏」(我那覇美奈)。直接的であれ間接的であれ、それぞれのフィールド、それぞれの体温で放ったこれらの楽曲は夏の甲子園の映像にピッタリとハマっていました。また、普段はクロスしなそうな面々が一つのテーマで1枚のアルバムに収められる、というのはコンピ盤ならではの大きな魅力。各アーティストのカタログ市、という要素もしっかりと併せ持った作品だと思います。
筆者も年を重ねて、子供の頃は憧れのお兄さん的な眼差しで見ていた高校球児達の年齢の倍ぐらいを今や生きてきてしまいましたが(笑)、一球に賭ける彼らの全力勝負の姿はいつの時代も輝いて見えるもの。明日より開幕の2016年大会も高校野球史に残る熱戦を期待したいと共に、そのお供に本作(と前作)を傍らに暑い夏を乗り切りたいと思っております。
なお、本作発売後も毎年様々なアーティストによって「熱闘甲子園」テーマソング史は続いています。いつの日か初代からの全テーマソングを収めた「熱闘甲子園主題歌集・完全版」をCD3枚組ぐらいで出してもらえないかな…と、この季節になるといつも願っています(無理かな・苦笑)。
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