goingbox 2016年7月現在、松本素生(Vo&G)、中澤寛規(G)、石原聡(Ba)の三人で活動しているGOING UNDER GROUND。伊藤洋一(Key)、河野丈洋(Dr)の脱退を経て、ここ数年はインディーズ流通での販売を続けてきましたが、来月に発売となる約2年半ぶりのニューアルバムはかつて所属していた古巣・ビクターからのリリースが決定。
 そしてこれは個人的な話ですが、2014年12月末に発売のビクター時代の音源ボックスセット「THE BOX」を最近ようやく入手、というタイミングもあり(?)今回の「DVD Review Extra」ではそのボックス内のMV集DVD「Music Video Collection」収録の全26曲をレビューいたします。「続きを読む」からご閲覧ください。
GOING UNDER GROUND
「Music Video Collection」(「THE BOX」DISC-10)全曲レビュー



1.涙がこぼれそう
 1998年12月12日発売、インディーズ1stミニアルバム「Cello」収録曲。
 インディーズ最初期ということで、いかにも的な演奏の粗さが今となっては新鮮。MVもローカルな街で家庭用VTRを回したようなチープ感があるが、これはこれで良い意味での若さを感じる。松本素生の髪の毛の色がピンクということが一番の衝撃(?)。

2.思春期のブルース
 1999年9月23日発売、インディーズ2ndミニアルバム表題曲。
 前曲に引き続き粗さの残るパンクロック調だが、松本も髪を黒く戻すなど、メンバーの容姿はだいぶ世間的イメージ(?)に近づいた。ラストで一瞬表記される曲名表示は突如エヴァンゲリオン風。既にこの時期エヴァブームは去っていたが、やりたい気持ちは分かる(笑)。
 
3.ロマンチック街道
 2000年4月21日発売、インディーズ1stシングル。
 単音系ピアノが挿入され音楽面での「ゴーイングらしさ」がこの辺りで表出。MVは打ちっぱなしのスタジオでの演奏と、森や川などを散策するメンバーの素っぽいやり取りが交互に展開。

4.桜が咲いたら
 2000年9月23日発売、インディーズ2ndシングル。
 冒頭で松本が運転するバイクの後ろに乗っている彼女が怒って降りてしまう。曲中でもメンバーそれぞれが女性と絡むのだが、どれも別れの旅立ちだったり破局を予感させるようなシチュエーション。これは歌詞の世界をなぞったものかも。

5.アロー
 2001年3月10日発売、インディーズ3rdシングル。
 メジャー1stアルバムにも収録されており、インディーズながらメジャーへの第一歩的な楽曲。MVは夜から朝にかけて屋外でのメンバーの演奏が中心であまり面白みはない。画面が暗くて明確には確認できないが、松本の髪が若干金色がかっているような…。

6.グラフティー
 2001年6月21日発売、メジャーデビューシングルにして代表曲。
 夕暮れが近い学校の音楽室で輪になる形で演奏するメンバー5人のショットが中心。既にこの時点で二十歳を過ぎて少し経つ彼らだが、まだ顏付きなど(特に河野丈洋の髪型)に幼さが残っており、高校らしき建物で演奏していてもあまり違和感はない。まさに青春、といったMV。

7.センチメント・エクスプレス
 2001年9月19日発売、2ndシングル。疾走感溢れるビートロック。
 こちらも演奏が中心だが、前作が練習風景ならば本作は学祭あたりのステージで演奏しているような演出がなされている。その中でなぜか松本が泣きながらバイクに跨って夜道を疾走する映像が挿入されるのがかなりのインパクト。タイトルは特急なのにバイク、そしてなぜか神戸ナンバー…と、ツッコミ所少々あり。

8.ミラージュ
 2002年4月17日発売、3rdシングル。イメージ的には前作、前々作の延長線上の楽曲。
 恐らく新宿周辺をロケーションしたビルや階段、自然の風景と、モノクロ調での演奏シーン、そして水飛沫や流れる波などがコラージュされた初のアート系MV。

9.ランブル
 2002年7月10日発売、4thシングル。
 屋内外での演奏場面もそれなりにあるが、コンビニ前で傘をさして歌う&自転車に乗って走る松本、中澤&河野、石原&伊藤の街中でのやり取り、メンバー全員で草原をスローで駆けるシーンなど、それぞれの演技のほうが印象に残る。タイトルの熱帯魚も曲中でグラスの中を泳いで出演。

10.ダイアリー
 2003年5月7日発売、5thシングル。シンガロングタイプの賑やかなナンバー。
 古びた雀荘にメンバーが大量のビールを持ち込み、仲間達を招いてパーティー(ビールかけ?)を行う様子を描いたドキュメントタッチの作品。こういった和気藹々としたやり取りを自然に見せるのもメンバー全員がバンド結成以前からの知り合い、というバックボーンがあるからでは。そんな点も含めて良MV。

11.トワイライト
 2003年9月24日発売、6thシングル。彼らの中ではダントツの知名度を誇る看板曲。
 男女のカップルの日常、喧嘩から別居、そしてその後までを描いたストーリー仕立ての作品。メンバーは隠れキャラ的に喫茶店のウェイター(石原)、客(中澤)、コインランドリーの客(河野)、工事現場の同僚(松本、伊藤)という形でカメオ出演。演奏シーンは一切なし。タイトル通りの美しい夕焼け風景も要所要所で挿入されている。

12.ハートビート
 2004年1月21日発売、7thシングル。ライブでの定番曲。
 前作に続いてストーリー仕立て。主人公(やよい)がコンビニで働いている男性店員(ヒロシ)に近づくべく(?)バイトとして採用される。が、その店員はクリスマス前から長期休暇を取り、休暇明けの日にも姿を見せず、クリスマスプレゼントも渡せないまま、主人公は結局バイトを辞めてしまう・・・。という内容。今回はメンバーが一瞬たりとも登場しない。

13.サンキュー
 2004年9月22日発売、8thシングル。アレンジに変化球を加えだした時期の佳曲。
 ローカル線を降りて久々に地元に戻ってきた松本の胸を去来する、両親との様々な思い出をモノクロでインサート。終始無愛想な表情で田舎道を歩いていく中、ラスト近くですれ違う自転車に乗った少年の姿を振り返ってようやく軽く微笑むのが印象的。また、いかにも松本の両親!という役者を配役した点も光る。他のメンバーは演奏シーンのみの登場。

14.同じ月を見てた
 2004年12月8日発売、9thシングル。
 主演は石原聡。結婚式を舞台に、披露宴の余興として新郎・石原を含むメンバーが花嫁に向けてこの曲を演奏。プロジェクターに映された石原夫妻の映像、挿入される二人の様々な思い出、一瞬ライブシーンも盛り込みつつ、感動的な結末を迎える。石原もだが、彼を祝福する松本をはじめとしたメンバーの表情の演技も良い。ゴーイング史上屈指の傑作MV。

15.アゲハ
 2005年2月9日発売、10thシングル。表記はないが河野が一部ボーカルを担当する「alternate version“ アゲハとトカゲ”」バージョン。
 描画アニメでアゲハ蝶がゆらゆら漂う中、1コーラス目はモノクロでのライブシューティング、2コーラス目はカラーでライブからの名場面セレクト(たぶん渋谷公会堂)映像。ここではメンバー同士の絡みや客席を巻き込んだ盛り上がりシーンなども差し込まれているのだが、メンバーが皆イキイキとした表情をしていて観ているだけでも楽しい作品。

16.STAND BY ME
 2005年5月18日発売、11thシングル。2016年現在、彼らの最大ヒットシングル。
 MVにはメンバーは登場しない。女子フットサルチームの練習風景や試合の様子をカメラが捉えたドキュメンタリーで、丁寧に歌詞も文字で挿入されるが、曲と映像内容の直接の結びつきがないのがちょっと残念。三ツ矢サイダーのCMソングだったためか、ラストにサイダーのペットボトルが登場。

17.きらり
 2005年8月17日発売、12thシングル。残暑の余韻を漂わせるミディアムナンバー。
 メンバーと共に乗り込んだ車の助手席のサイドウインドウから、自分と彼女が並んで歩く姿を眺める松本の図。浜辺で遊んだり、海岸沿いを並んで座ったりと二人は良い雰囲気なのだが、曲の歌詞とも相俟って過去の幸せな思い出的に描かれているのが切ない。メンバー五人で海辺を歩いたり、夜の海岸で花火をするシーンが挿入されるが、演奏シーンは室内でグランドピアノを演奏する伊藤洋一のみ。

18.Happy Birthday
 2006年2月1日発売、13thシングル。タイトル通りのアッパーなバースデーソング。
 久々の全編バンド演奏MV。パーティー風に装飾された空間でひたすらメンバーが演奏している姿を特殊効果を交えて構成した比較的シンプルな内容だが、松本がラストサビで宙返りを試みるシーン、アウトロの最後でそれに失敗したのか倒れてもがいている(?)シーンが映るのが瞬間のインパクト。

19.VISTA
 2006年5月3日発売、14thシングル。初の武道館公演に向かう勢いが感じられるナンバー。
 色々な世代の人達(動物も含む)が跳び箱に向かって踏切台を蹴って青空にジャンプする突き抜け感、開放感多めの作品。メンバーが実は跳び箱の中の空間をステージ(スタジオ?)にして演奏しているというのは案外シュール。伊藤がショルダーキーボードで演奏しているのが珍しい。

20.ハミングライフ
 2006年5月3日発売、14thシングル両A面曲。
 「VISTA」と雰囲気は似ているが、こちらは白い画面をバックに一人の青年が何かを探すようにメンバーが演奏する少し離れたところをぐるぐると歩き回るのを終始カメラで追っている。歩き疲れて座り込んだり、仰向けになったりしながらもまた歩き出す青年に人生の縮図を投影した演出か。劇的な展開などはないが何か心に残る作品である。

21.胸いっぱい
 2007年3月21日発売、15thシングル。ベスト盤明けの王道テイスト楽曲。
 どういうわけかMVはミュージカル仕立て。外国人カップルが歌詞の内容に沿って歌ったり踊ったりするのだが、大仰な身振り手振りが笑いを誘う。メンバーは後ろで演奏しているのだが、最後のサビではカップルと一緒に振り付けで踊ったりする演出もあり、全体的にギャグの要素多め。

22.TWISTER
 2007年6月13日発売、16thシングル。四つ打ちテクノ風サウンドが異色で新鮮なナンバー。
 歌詞とはMVの内容はまったく関係なく、松本が彼女と良い雰囲気になると画面外のどこからか銃撃されて倒れ、側にいるメンバーが驚き、彼女が絶叫するという展開が様々なシチュエーションで繰り返されるシュールさが面白い一作。6分超えの長尺曲だからか、MVでは曲の一部分がカットされている。なお、ラスト付近で出てくる武装した鎧姿の松本は「松本素生右衛門」と名付けられているらしい(当時の公式携帯サイト情報)。

23.さかさまワールド
 2007年10月17日発売、17thシングル。
 全編モノクロの中、群衆に囲まれたバスの中で食事をしたり演奏をしたりするメンバーのカットが中心。シリアスでハードな楽曲内容に準じた映像内容で、食事中にメンバーが一人ずつ消えていき、最後は松本一人だけになる(それでも黙々と食事を続ける松本)などの意味深な演出があり。ラストは五人で外の世界に出ていくという希望を見せるエンディングではあるのだが、この後の脱退劇を思うと何やら複雑な思いも抱いてしまう作品である。

24.初恋
 2008年3月19日発売、18thシングル。村下孝蔵のカバー曲。
 堀北真希が出演していた「白いなっちゃん」のCMソングで、本作にも大々的に彼女が登場。ただしメンバーは松本しか出演せず、彼がどこかの(校舎?)屋上で弾き語るシーンのみで、堀北との絡みはなし。結果、階段や浜辺で涙を流す彼女のイメージビデオっぽくなっている。

25.My Treasure
 2008年5月21日発売、ベストアルバム「COMPLETE SINGLE COLLECTION 1998-2008」収録曲。ありそうでなかったピアノをメインにしたロックサウンドが展開。
 ほぼ固定カメラで前方でひたすら唄う松本、後方ではソファに座ってピザを食べたりゲームをしたり和気藹々の他のメンバー四人。たまに四人も演奏シーンで登場するが、基本的にどのシーンでも松本がほぼ空気扱い。「さかさまワールド」といい思わせぶりな映像作品が続く時期であった。

26.いっしょに帰ろう
 2009年1月21日発売、19thシングル。結果的にビクター時代最後かつ、伊藤洋一在籍時のラストシングル。
 冒頭は松本が寺(実家?)らしき場所で生でさわりを演奏した後で本編スタート。松本、劇団ひとり、そしてもう一人の女性が中心にガクガクした静止画を含めた映像が展開していくが、抽象的すぎて何を伝えたいのかがちょっと不明な作品。スタジオでのリハの様子も途中挿入されているが、昔のVHSフィルムのノイズらしきものが頻繁に出てくる演出も含め、全編画質がやけに粗い。


 …以上、「Music Video Collection」全曲レビューでした。
 映像作品的にゴーイングを振り返ると、最初期はいかにもその辺のロック好き青年達が感情の赴くままに音楽やってます、といった雰囲気が濃いめ。メジャーデビュー後は各作品のディレクターの個性でストーリー仕立てだったりイメージ系だったりと内容の幅を広げていった印象を受けます。また大変失礼ながら、フロントマンの松本素生はビジュアル的にフォトジェニックとは言い難く、だからなのかバンドでよくある「ボーカルが主人公のMV」は少な目。むしろ、メンバー全員で騒いでいたりする映像のほうに「素の彼ら」の魅力を感じました。そんなわけで、今回ご紹介したMVの中では「ダイアリー」「同じ月を見てた」「TWISTER」の3作をTOP3に挙げさせていただきます。

 さて、その後のゴーイングの活動に関しても少し。伊藤洋一脱退を経て、レコード会社をポニーキャニオンに移籍。アルバム2作をリリースした後はインディー流通へと移行し、2014年3月、現時点での最新アルバム発売後に河野丈洋が脱退を表明。翌年1月の渋谷公会堂ワンマンが最後のステージとなり、以降は3人での体制となりました。ライブパフォーマンスの面では伊藤が、ソングライターでもあり音楽面の要的なイメージのあった河野が脱退し、果たしてどうなることか…と不安だったのですが、とりあえずは(アルバム1枚だけのワンショット契約だとしても)メジャー流通でニューアルバムがリリースされる、ということを素直に喜びたいと思います。あとは最近はライブハウスツアーの続く彼らですが、また野音あたりでやってくれないかな、と願いつつ、今回のレビューを締めさせていただきます。長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。