hataaof 2015年12月16日発売、秦基博の通算5枚目のオリジナルアルバム。シングル「ダイアローグ・モノローグ」「ひまわりの約束」「水彩の月」「Q&A」を含む全13曲収録。初回生産限定盤は特典DVDを同梱したデジパック+三方背BOX+歌詞カード兼用の32Pブックレット仕様。

 非シングル曲の自選ベスト企画アルバムを経て、オリジナルとしては前作「Signed POP」から約三年振りとなる作品。その間の2014年夏にシングル「ひまわりの約束」がヒットを記録し、彼の新たな代表曲としてすっかり根付いた感がありますが、アルバムレコーディング自体は2015年の年明けから開始されたということで、ヒットを受けての急ピッチの製作ではなくいつも通りの(?)マイペースなアルバム制作作業が進められたようで、リード曲的な「デイドリーマー」「ROUTES」を筆頭にアルバム用の新曲が9曲と、待たされただけのことはある(苦笑)佳曲が並ぶ構成となりました。

 本作の大きな売りは、ついに秦自身が全曲サウンドプロデュースまでを担当した、という点。これまでは日本のポップス界を牽引する大物プロデューサーやアレンジャーに楽曲の最終的な仕上がりを委ねていましたが、今回は完全にセルフプロデュース。ピアノバラードやロック色の強い曲は特にアルバムの新曲としては収録せず、浮遊感のある「嘘」「ディープブルー」、アダルトな「美しき穢れ」に対するような王道ポップスの「聖なる夜の贈り物」、さらには個人的お薦めなラテン風の「Fast Life」など、シングルA面では見せない秦基博の側面を纏めてみた、という感じ。アレンジ的にはどの曲も過剰には音を詰めず、サウンド面でのインパクトという意味では正直地味。ですが、派手さがない分耐久度が高いと言いますか、何回か聴くうちに楽曲の魅力に気がつく、という作風。カラフルさという意味では複数のアレンジャーが楽曲を彩った前作に分がありますが、アルバム1枚を通しての「芯」のようなものはこちらが一歩リードしているかな、という印象を受けました。本作も完成度の高いお薦めなアルバムですね。

 初回生産限定盤のDVDにはアルバムレコーディングと絡めてあらきゆうこ、皆川真人、鈴木正人との対談、2015年9月に青森で開催されたワンマンライブ「世界遺産劇場」のドキュメントやライブ映像で構成した「Behind of “青の光景”」、そして本作には収録を見送られたシングル「言ノ葉」のMVを収録。前者はアルバム制作の過程や演奏者から見た秦基博の人となりなどがインタビューから窺える興味深い内容。後者は完全なアニメーションで、映画「言の葉の庭」の内容を知らないと何これ?的な作品ダイジェストのようです。まあ、こちらはオマケということで。