2008年09月

2008年09月27日 21:27

natsunoowarinisecond 10月を間近に控え、急に涼しくなった今日この頃。今週は、そんな季節にピッタリの1枚をご紹介。タイトルは「夏の終わりに供Lookin' for the eighth color of the rainbow〜」。T-BOLANのコンセプトミニアルバムの第2弾として、夏の終わりよりも一足早い(?)1994年8月6日にリリースされた作品です。

 90年代中盤に音楽シーンを賑わせたビーイング系アーティストによるいわゆる「ビーイングブーム」。T-BOLANはそのブームよりも一足早く、シングル「離したくはない」を1991年末頃からロングヒットさせ、B'zと共に、90年代初頭のビーイング系ロックバンドの代表格とも言える存在だったと思います。今、改めて彼らのディスコグラフィを眺めてみると、半年ペースでオリジナルフルアルバムをリリースしたり、その間にミニアルバムをリリースしたり、アルバム発売と同時に新曲のシングルを発売していたり・・・と、尋常じゃないリリースペースの跡に驚かされます^^;。
 今作は、そんな90年代前半から中盤を駆け抜けた彼らが、従来の「曲が出来たらすぐレコーディングしてリリース」という活動形態や、ロックバンド的な曲作り、アレンジからは少し距離を置いて、「夏の終わりに」というひとつのテーマに基づいて、製作されたコンセプトアルバムの第2弾。ちなみに第1弾「夏の終わりに〜Acoustic Version〜」は1992年にリリースされています。

 収録曲は全6曲。うち、過去に発表された楽曲のリアレンジが4曲、そして新曲が2曲。選曲も前述のテーマをもとに絞り込まれたそうです。いずれもアコースティックアレンジで、彼らの特徴とも言うべきエレキギターの音は一切取り入れられていません。
 リアレンジの曲からご紹介していくと、まずは1曲目の「悲しみが痛いよ」。デビューシングルとしてリリースされ、王道ビーイングサウンドだった原曲よりも侘びさび(?)を感じる、左右に振り分けられたアコースティックギターの音が印象的な1曲。ヴォーカル・森友嵐士の表現力もあり、オリジナルよりもぐっと心に響く歌い方になっている気がします(歌詞は川島だりあですが、この人は良い詞を書くんだよなぁ・・・)。続く「泥だらけのエピローグ」では、「HEART OF STONE」に収録されているアップテンポのオリジナルから一転、BPMをかなり落としてバラード調に。原曲の焦燥感を煽るような感じも好きですが、ブルースハープの演奏や、噛み締めるような雰囲気が出ているこちらのバージョンもなかなかのもの。他、「すれ違いの純情」「シャイなJealousy」も、「泥だらけ〜」ほどの印象の違いはないものの、アコースティックギターを中心に据え、ピアノやハモンドオルガンが効果的に響いており、地味ながら新たな魅力を感じるアレンジになっています。

 そして2曲の新曲のうち、アルバムのサブタイトル曲になった「Lookin' for the eighth color of the rainbow〜8番目の虹の色をさがしに〜」。この曲はドラムスの他に随所にパーカッシブな音も取り入れられ、内省的な歌詞世界とは裏腹に聴き心地の良いアレンジで、聴くときはヘッドフォンを推奨(?)。小さいライブハウスで、じっくりとこの音と歌詞に酔いしれながらアンプラグドで聴きたい楽曲。
 もう1曲の新曲の「マリア」は、このアルバムの翌月にテンポを上げ、ロックアレンジでレコーディングされたバージョンをシングルでリリースしてヒットしたこともあり、ファン以外でも結構有名な曲だと思いますが、本作に収録されている「Acoustic version」のほうは、ハモンドオルガンの荘厳な調べから始まり、徐々に他の楽器が重なっていく、壮大なアコースティックバラード。
 「泥だらけ〜」のところでも書きましたが、本バージョンも、シングルバージョンもそれぞれの魅力があるのは、良い曲はどんなアレンジを施しても良い曲になる・・・というよりも、これらの作品が持つ流麗なメロディーラインが、どちらのアレンジにもぴったりとはまった、ということが最大の要因ではないでしょうか。ちなみに本作のバージョンで、森友氏がセピア調の画面の中、セットの階段に腰掛けて歌っているPVも製作されていて、UHF局でこのPVが流れ、筆者は久々の動くT-BOLANの映像に感動したものでした。当時彼らはなかなかちゃんとしたPVを作ってくれなかったもので(苦笑)。

 今でこそT-BOLANといえば最大ヒットの「Bye For Now」や「離したくはない」、「HEART OF GOLD」「LOVE」といった、ロッカバラードが得意なバンド、という認識がされていると言えなくもないと思うのですが、個人的には「じれったい愛」や「刹那さを消せやしない」といった、ロックバンド的な楽曲のイメージで彼らを捉えていたので、このミニアルバムシリーズでは、彼らの違った一面を見ることができて新鮮だったことを思い出します。まさかこの時は、この作品が結果的に、メンバーが製作に携わったアルバムとしては最後(この後、解散するまでにコンピレーションやリミックスアルバムなどが出ましたが・・・)のリリースになるとは思わなかったのですが・・・^^;。
 ともあれ、タイトル通り、晩夏の夕暮れあたりに部屋でひとりじっくりと聴きたい作品として、今のような季節になるとふと思い出して、CDプレイヤーにセットしたくなる小粋なミニアルバム。余談ですが彼らの他のアルバムとは一線を画した、コラージュ写真によるジャケットもアート性を感じます。ファンならずとも、アコースティックサウンド好きにはお薦めの1枚ですね。

2008年09月23日 17:32

waytonormal ベン・フォールズの待望のニューアルバム(何と前作から3年半ぶり)がついに発売されたので、先日購入してきました。オリジナルアルバムでは通算3作目の作品。2008年9月17日発売。

 前作「ソングス・フォー・シルヴァーマン」から、再びベン・フォールズ・ファイブ時代と同じピアノ+ベース+ドラムスのトリオ編成(もちろんベースとドラムスはBF5とは違うメンバーですが)でのレコーディングが復活。今作も編成は同じですが、前作の穏やかでリラックスした作風とは一転、今作では「これってBF5?」って思わせるような攻撃的で勢いのあるピアノロックが炸裂し、メロディアスな曲調が多くなっていると感じました。そしてこういう作風は筆者の好みでもあり(笑)、愛聴盤になりそうな1枚です。

 BF5であってBF5でない・・・クラブサウンドのようなドラムスの曲もあったりして、ベンがソロで培ってきたアプローチも取り入れた、この時点での(BF5時代を含む)ベン・フォールズの集大成のような作品ではないでしょうか。
 最近はソロ開始当時に比べると創作活動がスローペースになっているベン氏ですが、これだけの質の高いアルバムを作ってくれれば、次も3年ぐらいは待てるかなと思います(笑)。

2008年09月21日 17:09

evergreen 9月もあっという間に下旬。そんな中ご紹介する「今週の1枚」はMY LITTLE LOVERのデビューアルバム「evergreen」。1995年12月5日発売。トイズファクトリーからのリリースでしたが、何でも今年、現在所属のエイベックスから再販されたとか。

 この年の5月、シングル「Man&Woman」でデビューしたマイラバことMY LITTLE LOVER。当初はヴォーカル担当のAKKOと、ギター担当の藤井謙二の二人組ユニットを、小林武史がプロデュースするという形態を取っていました。前年、Mr.Childrenを大ブレイクに導いた小林氏が、新たなユニットをプロデュースということで、デビュー曲から既に世間一般的にも注目を受けていたことを思い出します。筆者もミスチルファンであり、彼らのシングル「【es】〜Theme of es〜」の中に「Man&Woman」の告知カードが入っていたこともあり(笑)、マイラバの活動にはごく自然とチェックを入れていました。
 デビュー曲がロングセールスという形で結果を出した彼らは、続く「白いカイト」、そしてミリオンセールスとなった「Hello,Again〜昔からある場所〜」で一気にブレイクへの道を進み、満を持して発売されたデビューアルバム「evergreen」も、当時280万枚近くのヒットとなる、新人としては破格のセールスを記録。そしてこのアルバムより、小林武史が正式に3人目のメンバーとして加入しています。

 そんな彼らのデビューアルバムを聴いて最初に思ったこと。「・・・こんなクオリティの高いデビューアルバム作る新人は見たことがない」(笑)。まあ、すでに80年代からキャリアを積み重ね続けていたコバタケ先生が全面的にプロデュース・楽曲製作を担当している時点で、彼らを「新人」と呼ぶのはかなり語弊があると思うのですが(苦笑)、とにかく全10曲、かなりの気合が各作品に込められているのが聴いていて伝わってくるアルバムです。

 例えば、サウンドの多面的なアプローチ。現在の小林氏がしばし行う、ミスチルの他、レミオロメンやbank bandのプロデュースで良くも悪くも代名詞的になってしまった「ストリングスを導入して壮大に楽曲を盛り上げる」といった画一的な手法ではなく、曲調に合わせてキラキラしたグロッケンでファンタジックに曲を彩ったり(「Magic Time」で特に顕著)、ブラスを聴かせたり、隠し味的に打ち込みサウンドを使ったり、細かいギターのカッティングテクを多用したり(これは藤井謙二の功績?)、と、彼自身のアレンジの引き出しをどんどん開けて、効果的に楽曲に注入していっているという、サウンド職人的な嗜好がこのアルバムでは(というか、この後のマイラバのアルバムでもほとんどそのスタンスで製作していると思うのですが)かなり見受けられます。
 また、バンドのメンバーが一通り揃っているミスチルとは違って、あくまでユニットであるという特長を活かして、曲ごとにゲストミュージシャンを使い分けてそれぞれの色を出しているという点にも注目。まさにポップセンスの結晶といったこの完成度の高さは、大御所の風格を身に着ける前の、彼のギラギラした野心もうかがい見ることができるのではないでしょうか。

 そして多分、このアルバム、というよりも、マイラバ自体に欠かせない最大の魅力、それはAKKOのヴォーカル。彼女の歌声はどこか幼く、そしてつたない印象を受けるのですが、それが上に書いたコバタケ先生のトラック、さらに彼がほとんどを手がける歌詞のテーマにもピッタリとマッチしていたというのが、彼らがブレイクした最大の要素ではないかと思います。
 彼女のヴォーカルには何といいますか、「年齢不詳の少女性」のようなものがあって、メルヘンチックだったり、日常的な恋愛風景だったり、または哲学的で難解といった歌詞を歌わせても、すべてが彼女の歌声から発せられる世界観のもとに統一されてしまうような、不思議な魅力があると思うんですね。彼女よりも表現力が豊富で歌唱力も上の女性ヴォーカリストは、多分他に山ほどいると思うのですが、彼女にしか出せないあの独特な味こそが、おそらくマイラバに最も適した世界観なのでしょう。

 まあ、前にも書きましたが筆者は女性ヴォーカルに関しては技巧に走るよりも、ストレート主体な歌唱法のほうが好きなので、贔屓目だと言われてしまえばそれまでなんですが^^;。
 ついでに言わせていただきますと、メロディーがあっちこっちに展開するような曲を歌う時のAKKOの歌声は絶品ですね。「Free」とか「Delicacy」はまさにその典型例。完璧に歌い上げているわけではなく、展開されるメロディーに付かず離れずという、あのギリギリ感で発せられるヴォーカルはかなりツボです(笑)。それとは別に個人的に好きな曲は、この年の夏ヘビーローテーションで聴いていたシングル曲の「白いカイト」、フレンチポップス風の「My Painting」、ピアノをバンドサウンドの中心に据えた「めぐり逢う世界」もお薦め曲。

 このアルバム発売と同時ぐらいに小林氏の加入が発表された時は、「プロデューサーがメンバーになるなんて、globeみたいだなぁ」とか思っていたのですが、globeもマイラバも、時期は違えどメンバー内でくっついちゃったという面でも共通点がありましたね(笑)。まあマイラバは現在ではAKKO一人のソロユニットになり、小林氏とも離婚してしまいましたが、それとは関係なく、本作は日本のポップス史に残る、今聴いても時代を感じさせない、まさに「evergreen」の名を冠するに相応しい、普遍的な輝きを放っている名盤です。当時このアルバムを購入した280万の皆様、久々にCDラックの奥から取り出して聴いてみませんか?

2008年09月15日 15:24

scizzorsagogo 三連休の最終日に間に合いました(苦笑)。「今週の1枚」、本日ご紹介しますのは、シザーズのミニアルバム、その名も「シザーズ ア ゴーゴー!!!」。2004年9月15日発売。おお、ちょうど4年前の今日が発売日だったんですね。

 アルバムの前に、まずはシザーズの紹介から。彼らは2002年結成の、ギターボーカル、ベース&コーラス、ドラムス&コーラスというスリーピースロックバンド。2003年にデビューアルバムをリリースし、かのNHKの深夜番組「熱唱オンエアバトル」でのオンエア経験もあるそうです。ちなみに筆者はひょっとしたら、かつて所属していた部活の合宿で、メンバーの一人が所属していた他校の団体とニアミスしていた可能性があるらしいです。もちろん直接どころか間接的にも面識はありませんが(笑)。

 そんなシザーズがリリースしたこのミニアルバム。4曲入りと曲数は少ないものの、これがなかなか聴きごたえがあって楽しいアルバム。ジャンルはというと、パンクロックが根底にある・・・と思うのですが、「sunrise」の序盤ではヒップホップ調のアレンジを生バンドで演奏したり、「你好★シャイン」では真っ直ぐでキャッチーなメロディーをコーラスワークで支えたり、「フィーバー フィーバー」では三連でまったり始まったと思いきや、終盤いきなり加速して聴き手を驚かせたり、など、ひとつのジャンルにとらわれない自由な作風が聴いていて感じ取れる内容になっています。

 今挙げた3曲は、歌詞も英語+日本語で構成される前向きな内容ということもあり、一言でいえば「爽快」といった聴き心地で、非常に風通しの良さを実感できるのですが、ラストの「バイバイ。」では空間系エフェクターかけまくりのトランスしそうな渦のような(笑)ギターサウンドで別れを切々と歌いつつも、こちらもなぜか後味は爽やか。なんでもこのアルバム、「気持ち良さ」を詰め込んで作り上げたらしく、様々な音楽性を取り込みつつも、アルバム全体をこのテーマ(気持ち良さ)で貫いているおかげで、一本芯の通った作品になっています。
 また、親しみやすく、惹きつけられるメロディーをしっかりと書けている曲が多いのも特徴(これはデビューアルバムでもそう感じました)で、良い意味で「メジャー向き」のバンドだなぁ、と思わせるアルバムでありバンドであると思いました。それにしても、こんなアルバムが作れるバンドが自分とほぼ同年代だという事実には少し嫉妬の念すらおぼえます(←見苦しいぞ・笑)。

 あと、このアルバムのジャケット、何かいいんですよね〜。スリーピースのトライアングルシフトで、メンバー三人がそれぞれ三角形の頂点の部分に配置されているジャケ写なんですが、シンプルながらバンドを見事に記号化していて、センスを感じさせるアートワークではないでしょうか。

 この後、シザーズは2006年にメジャーレーベルからアルバムをリリースしましたが、数ヵ月後残念ながら活動停止(=事実上の解散?)になってしまった模様。こういうバンドがメジャーの表舞台に出て、音楽シーンを賑わせてくれる可能性があっただけに残念。すでにこのミニアルバムは全国量販店でも取り扱い終了ということで、入手は難しいのかもしれませんが、こういった元気で、爽快で、溌剌としたサウンドを聴かせてくれる三人組がいた、ということを、記憶の中で今後も風化させないでいきたいと思っております。好バンドでした。

2008年09月14日 23:55

9a06d69b.jpg 現在活動休止中のcuneの歩みがまとめられた、ヒストリーブックが我が家に到着しました。

 2006年末発売のミニアルバム「EUPHORIA」とライブアルバム「HORIZON」の同時購入応募特典だったわけで、到着まで約1年半以上待たされたわけですが(苦笑)、思ったよりも詳細に彼らの歴史が綴られていて、なかなか読みごたえのある内容でした。

 …というか後半の内容は読んでて少々辛い^^;活動休止も出るべくして出た結論だったんでしょうか。
 いつか、また四人のメンバーがcuneとして活動再開する日が来ることを切に願っております。


2008年09月11日 22:43

deenatbudohkan 2008年9月3日発売。デビュー15年目にして初の日本武道館での公演となった、今年6月8日の一夜限りのライブの模様を収録したCD+DVDの2枚組。今年末までの期間限定生産だそうです。管理人も参加しましたこのライブ、詳しいレポートはこちらで。

 CDは「LIVE REQUEST CD」と銘打たれ、ライブ公演の中からBMGのモバイルサイトで行われたファン投票の結果が反映された(らしい)10曲を抜粋しての収録。うち1曲はバラードメドレー扱いなので、実質的には19曲収録されています。
 全シングル曲演奏というコンセプトのライブということもあり、「瞳そらさないで」とか「ひとりじゃない」といった、過去のライブDVDでも定番の曲が原曲あるいはリメイクでのCDバージョンのままのアレンジ(キーは下がってるけど)で収録されているので、この辺はおなじみだな〜という感想になってしまうのですが(汗)、弦楽器隊が導入された「MY LOVE」「夢であるように」「Smile Blue」は、ストリングスの響きの効果で壮大に聴こえて、こちらは新鮮に楽しむことができました。
 また、ライブCDということで、音だけを集中して聴く用にしっかりとマスタリングされているのかな、と思えるぐらい、ライブの臨場感を体感できるミックスになっていると思います。

 DVDは「LIVE NAVIGATING DVD」。メンバーのインタビュー、ライブのダイジェストなどが収録された、まさに「冬に出る予定の完全版ライブDVDの予告編」とでも呼べる内容。CDでは未収録だった曲も一部分とはいえ収録されていて、これ観たら絶対完全版欲しくなると思います(笑)。唯一フルで収録された「翼を広げて」のオーディエンスとの大合唱シーンにはやっぱり感動してしまいました。

 CD、DVD共に楽しめる内容ではありますが、完全版DVDが後ろに控えているということもあり、いずれは微妙な存在になりそうなこのパッケージ。とりあえず冬までのつなぎとして、コアなファン向けの商品かな、と思います。できれば、完全版にはなるべく多めにMCを収録とか、未発表ドキュメンタリーを特典で付けるとか、内容の濃い構成にしてほしいですね。

2008年09月07日 21:51

digitalianiseatingbreakfast 今月からまた通常仕様に戻って紹介していく「今週の1枚」。再開1発目は、TM NETWORKのキーボーディスト・・・というより、音楽プロデューサーという肩書きのほうが有名になってしまった(?)小室哲哉のソロアルバム「Digitalian is eating breakfast」をピックアップ。1989年12月9日発売。

 80年代を飾る最後の小室作品となった今作。当時小室哲哉はTM NETWORKの一員として活動中。前年の冬からこの年の夏にかけて行われた一連の「CAROLプロジェクト」が終了し、TMの活動は約1年間停止となっていました。その間、メンバーの宇都宮隆はアクターとして、木根尚登はライターやラジオDJとして、直接的には音楽とは関わらない活動を行っていたのに対し、小室が選択したのは「ソロシンガーとしての活動」。以前にもアニメ作品の劇伴や劇場映画のサントラCDを手がけていたこともある彼ですが、「メインでソロを取って大々的に歌う」という行為はマーケティング上では初めてだったのではないでしょうか。そしてこのアルバムは、この年の10月から始まった小室ソロ・プロジェクトの集大成としてリリースされた作品です。

 もともとサウンドプロデュース面ではTM NETWORKのデビュー当時から指揮を取っていた小室先生なだけあり、このアルバムの音楽性もあくまでTMの延長上。特に1989年にリリースされたTMのリプロダクションアルバム「DRESS」、そしてシングル「DIVE INTO YOUR BODY」のユーロビート路線を突き詰めた内容になっていると思います。あえて違いを探すならば、当時最新鋭の録音機器・シンクラヴィア(いわゆるハードディスクレコーダーみたいなもの?)を駆使し、リズム隊やキーボードパートは完全な打ち込み、ギター(ちなみにB'zの松本孝弘も数曲参加)やサックスといった生楽器も一度シンクラヴィアに取り込んでから再編集している(らしい)など、デジタル面での挑戦が多い、という点でしょうか。ちなみに各曲のメロディーもおなじみの王道小室節が満載なわけですが、中盤に収められたアジアンテイストの「NEVER CRY FOR ME」や、インストの「WINTER DANCE」の曲調からは、小室哲哉の別の引き出しを見ることができるかも。

 むしろ、TMとの差異を述べるならば、歌詞の面でそれが顕著な気がします。TMのメインライターである小室みつ子が手がけた「RUNNING TO HORIZON」「OPERA NIGHT」(この曲ってtrfの「masquarade」の元ネタ?)は、TMのシリアスな作風や、架空的なテイストを汲んだ歌詞になっていると思うのですが、その他の小室哲哉作詞の作品で見受けられる、例えば「GRAVITY OF LOVE」では「港見下ろすサタデーパーク」「レタス入りのハンバーガー/カーラジオからジャクソン・ブラウン」といった、具体的な情景・状況描写や、「SHOUT」の冒頭での服のブランド名連発、「オフィス街」や「Bedの上」など、かなり身近な恋愛テーマを克明に描いている「HURRAY FOR WORKING LOVERS」、ピュアなクリスマスソングの「CHIRISTMAS CHORUS」などなど、SFやファンタジーが根幹にあった当時のTMではほとんど見られないような歌詞には驚かされるばかり。TMの持ち味である「テーマやコンセプト」に縛られず、自由に製作した結果がこうなったのかもしれませんが、そういった意味では、完全に「TM NETWORK」と「小室哲哉ソロ」とは明確な線引きが出来ているな、と思いました。

 そしてやはり触れなければならないのは、小室氏の超独特のあのヴォーカル(汗)。TMN終了以降もその歌声をしばしば披露している小室先生ですが、か細いハイトーンの性質かつ、「ぅ〜ねぇ〜むぅ〜れないごぅぜんにぃじぃ〜♪」に代表される独特のアクセントをつけて繰り出されるあの歌声は、やはり何というか・・・アルバム一枚まるまる聴かされると壮絶としか言いようがありません^^;。無機質な歌声はまさに「Digitalian」と呼ぶべきでしょうか(←フォローのつもりか)。まあこれはこれで妙な味わいがあるとは思うのですが。後年にはラップまで披露するようになったTKの歌心の原点がここにあるのかも・・・?

 「同じアプローチは二度とやらない」というTM NETWORKに倣ったのか、この後の小室先生は提供曲のセルフカヴァーアルバム「HIT FACTORY」(←こっちの方が歌が上達している^^;)と言う例外はあるものの、完全な新曲で構成された歌入りのオリジナルアルバムは現時点ではこの作品のみ。結果的に、今回のソロ・プロジェクトはTMNとしての活動にはほとんど反映されなかったという点では、その後に繋がる活動だったとは言い難いのですが、ヒットのセオリーに縛られずに伸び伸びと造った作品集、といった趣が強い今作は、globeでもTKでもない、そしてTMでもない、一個人の「小室哲哉」の個人的側面を垣間見ることができる作品だと思います。怖いもの見たさ(失礼!)に皆さんも一度聴いてみませんか?

2008年09月05日 23:37

ichigoichie2 2008年7月23日発売。BEGINの考案した和楽器「一五一会」をメインに据えたセルフカヴァーアルバム第2弾。内容とは関係ないですが、良く見ると、ジャケットの写真の手の部分がブレています(笑)。

 前作「ビギンの一五一会」以降に発売された楽曲を中心に、アコースティックアレンジで楽曲を再構成。とはいっても基本の路線は原曲を重視していて、レゲエ調になった「誓い」以外は、聴いた感じはオリジナルとそれほど変わらないかな、という印象。使用楽器は一五一会だけではなく、アコーディオンやパーカッションの音なども効果的に取り入れて、曲に彩りを添えています。全体的に琉球音楽とハワイアンミュージックのチャンプルーといったところでしょうか。
 ミディアム〜バラード曲からの選曲がほとんどということもあり、癒し系のサウンドが終始展開されるので、CDプレイヤーにかけるとこの空間にマイナスイオンが大量発生したような気分になります(笑)。発売は7月でしたが、むしろ今のような残暑の季節にピッタリのアルバムなのかもしれません。個人的には「夏の花火」や「会いたい言葉」は今回のバージョンのほうが好きかも。新曲の「僕らのこの素晴らしき世界」「ホクレア」も良い曲。

 ある意味「今のBEGIN」のベストアルバムとも呼べる1枚。「シングル大全集」などを聴いて、BEGINに興味を持った方にも最適な作品だと思います。

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