2008年03月

2008年03月31日 21:37

khfakinpop 2008年3月12日発売。平井堅のオリジナル7thアルバム。前作オリジナルから何と3年4ヶ月。その間に出たベスト「歌バカ」にも収録された「POP STAR」から最新シングル「キャンバス」までの全シングルを網羅して、さながらベストアルバムのような内容。

 13曲中8曲が既発売曲ということで、まさにここ2〜3年の活動の総まとめ的な内容でしょうか。新曲が5曲というのはオリジナルにしては少々寂しいものがありますが、これらの新曲はどれも気合の入った作品で聴いて損はなしです。特にKANが作詞・作曲・編曲・プロデュースまで担当した「Twenty! Twenty! Twenty!」は歌詞が個性的すぎてKANファン必聴(笑)。
 それにしても最近の平井堅の作風は本当にポップに傾いてきていますね。今までのアルバムの中で数曲入っているような実験路線のサウンドは今回は無しで、R&B風の曲でもかなり分かりやすい方向でアレンジされていると思います。今後もこのポップ路線で行くのかな?久々に「楽園」みたいなアプローチの曲も聴いてみたいような気もします・・・。

2008年03月29日 23:38

worldgroove 今年でデビュー16年目、avex勢の重鎮として存在感を示し続けるTRF。今週の1枚でご紹介するのは、彼らのユニット名がまだ小文字(trf)だった、1994年2月9日に発売されたアルバム「WORLD GROOVE」です。

 1992年、「小室ファミリー」という言葉もなく、小室哲哉を表すTKという二文字も世の中に浸透していなかった頃。当時の小室先生の本職であるTMNの活動休止中に彼が陣頭に立って結成された、日本ではまだ珍しかった「テクノ+レイブプロジェクト」TK RAVE FACTORY(=trf)は、1993年夏の「EZ DO DANCE」のヒットで一躍その名前を知られることになりました。「EZ DO〜」の時は総勢10人だったらしいのですが、この直後に現在のヴォーカル+DJ+ダンサー3人の5人形態となってよりユニットらしくリスタート。3枚のシングルを先行させた後で発売されたこの作品は、ホンキになった小室先生の実力をまざまざと見せつけられる、TMファン戦慄の一作(?)となっております。

 このアルバムはリミックス盤を除くと通算3枚目。1st、2ndアルバムとの違いは、アルバムとしてのトータル性に優れていること。良くも悪くも最初から最後まで踊っとけ!というジュリアナ東京的雰囲気(懐かしい響きだな)が無きにしもあらずだった前二作から一転、今作は「テクノ」「ダンス」というtrfの根底に流れる部分は変えずに、曲の幅やアレンジにバリエーションを増やして、踊る以外にも(笑)、家でBGMとして流しても十分聴きごたえのある作品に仕上がりました。
 例を挙げると、「愛がもう少し欲しいよ」みたいなゆったりと身体を動かせるような曲。跳ねるリズムの上に、空港へ向かうまでのワクワク感を描いた歌詞の「Waiting Waves」では親近感(しかしこの曲イントロがこの直後に出た「Survival dAnce」のサビそのものなんですけど^^;)と、これまでにないtrf像をリスナーに与えることに成功。従来の「Fell the CENTURY」「Beauty and Beast」、そして「EZ DO DANCE」を彷彿とさせる「Silver and Gold dance」といったサウンド志向の曲も収録しているものの、他の曲とのバランスを保つためか曲数を絞って収録。個人的にはこういうタイプの曲はアルバムの中では2、3曲でいいかなとか思っているので十分です(笑)。ロングヒットになったシングル「寒い夜だから・・・」は原曲の雰囲気を保ちつつ、シーケンスをオーバーダビングしているバージョンで収録。これはTMNの「CLASSIX」で培った技術のフィードバックかな?なかなか出来の良いリミックスです。
 ・・・そして、それらの音楽をすべて総括したタイトル曲「WORLD GROOVE 3rd.chapter(main message)」は、大陸系のサウンドも取り入れて広義な意味での愛を歌い上げる圧巻の名曲。ライブでの終盤の大団円の様子が思い浮かんできそうな感じです。また、ラストを飾るバラードの後で、隠しトラックとして小室先生のピアノ弾き語りが収録しているあたりは、この数年後に出る小室プロデュースでのアルバムのラスト(globeとか華原朋美)のプロトタイプといったところ。
 最初から最後まで、1994年当時の小室哲哉のアイデアが注入されまくったこのアルバム。他のアイドルやアーティストに楽曲提供の経験はあっても、彼がTMやサントラ以外でトータルプロデュースを行ったのはこのtrfが確か初めてだったはず。それだけに、「絶対成功してやる!」という気迫が伝わってくる、そしてそれが見事に完成度の高さにつながっているという、会心の作品になったのではないでしょうか。

 このアルバムで商業的にも成功を収めた小室哲哉。ここで得たノウハウを持ち込んでTMNを活動再開するんだろうなぁ・・・という筆者の願いも空しく、この年の4月、TMNは突然の終了宣言(涙)。小室哲哉はプロデューサーTKとして、篠原涼子や安室奈美恵、hitomiや華原朋美などをブレイクに導いていく、いわゆる「小室ブーム」がこの後始まるわけです。まあ当時TMファンだった筆者の心境の複雑っぷりと言ったらなかったですが(苦笑)、今振り返って聴いてみると、音楽性を模索しながらも実験に走らず、リスナーに伝わりやすい音楽を提供する、小室サウンドの黎明期にあたるこの時期の音楽は素直に好きだと思えますね。
 また、現在は小室哲哉の手から離れ、独自の色を出して活動するTRFの結成初期の音に触れてみたい、振り返ってみたいという方にも、このアルバムはお勧めの1枚です。


2008年03月26日 22:35

bumpperiod 2007年12月19日発売。メジャー3rdアルバム。
 星の鳥と王様と動物達の物語を織り込んだ歌詞カード付き絵本(?)が同梱。といってもこの物語と直接リンクしているわけではないようで、CD単体だけでも十分に聴けるアルバムです(「ハンマーソングと痛みの塔」と「涙のふるさと」などは物語に沿って読んでいくとダイレクトな曲だと思いますが)。絵本はより深く楽しむための副読本という感じですかね。

 シングル6曲収録、計17トラックと、かなりの大作ですが、インストや小品的な作品を挟んで進んでいくので、70分という長さをあまり感じさせませんでした。彼らの作品はシングル以外はあまりチェックしていなかったのですが、アルバムの曲もシングルに劣らずのキャッチーさを持っているみたいですね。大変聴きやすかったです。
 あと、彼らの作品は歌詞に物語性があるものが多いので、BGMで流して聴いていてもつい歌詞に耳を傾けてしまいます。これが歌の力というか、言葉の力というか。若手バンドの中で頭ひとつ抜けている理由も分かるような気がしました。

2008年03月24日 21:57

 今年でデビュー15周年を迎えるDEENが、6月4日にデビューから現在に至るまでのシングルコレクションアルバムを発売するそうです。

 シングルを集めたベストアルバムは1998年の「SINGLES+1」以来10年ぶり。
 その後、バラードベスト、セルフカバー、アコースティックベストなどの発売はあったものの、デビューから現在までをオリジナル音源で総括した時系列的なベストアルバムは前述の「SINGLES+1」以外リリースされなかったので(多分ビーイングとの版権の関係?)、このアルバムの発売で、15年を一気に振り返ることのできる作品集が発売されるというのは素直に嬉しいですね。この形態、待ちに待ったというか、待たされまくったというか(苦笑)。
 通常盤ならCD2枚組で3,500円ぐらいなので、DEENに新たに興味を持った人にも手に取りやすい価格設定かな、と思います。
 コアなファン向けには、CD2枚組+豪華ボックス仕様+PV集「THE GREATEST CLIPS 2003-2007」が付いてくる5,040円の初回盤を・・・と言いつつ、この時期のPVはCD+DVDの初回盤で既に市販されていたりするので、コアなファンになるほど微妙な内容ではあるんですが・・・^^;

 ちなみに、5月21日には去年の47都道府県ツアーと、今年のZEPPツアーをパックにしたライブDVDも発売決定。この2つのツアーには行けなかったので発売が楽しみです。


■リンク先一件追加■
 朱雀さん運営のサイト、「休息の間」を音楽サイトの項にリンクさせていただきました。
 J-POPを中心とした音楽レビュー、中でもアーティストのシングルレビューを一気に掲載した「ディスコグラフィーレビュー」が面白いです。他、「金田一少年の事件簿」コーナーなど、バラエティ豊かなサイトとなっています。ぜひ遊びに行ってみてください。 

2008年03月22日 13:09

sweetandbitter 今週の1枚は、1998年7月29日にリリースされた、四人組バンド・CURIO(キュリオ)のセカンドアルバム「Sweet & Bitter」をチョイス。

 デビュー当時から佐久間正英、白井良明といった大御所プロデューサーによる強力なサポートと緻密なアレンジで、音楽ファンの間で注目されていた彼らですが、この年は「粉雪」、「君に触れるだけで」という2枚のシングルがスマッシュヒットを飛ばし、世間一般的にもCURIOの名前が知れ渡りはじめた時期。セールス的にも勢いを得た中で発売されたこのアルバムは、上り調子を感じさせる、勢いのある内容になっていました。

 もともと、彼らがリリースするシングルはこれ以前にも「ときめき」「ひまわり」など、いわゆる売れ線のメロディーにポップなアレンジを施した楽曲が多く、このアルバムも前半は「ブランコ」「Sweet & Bitter」といった、「ああ、CURIOってこんな感じだよね」という曲が並んでいるのですが、そんな「CURIO=ポップなバンド」という先入観のまま聴き続けると、途中から「?」となるかも(笑)。
 具体的には5曲目の「欲望のはじまり」あたりから、シングル群では見せなかったハードな面が徐々に顔を出してきます。やけにドラムがハードな音の「クルージン」、ギターとサックスのバトルが聴ける(?)「素晴らしき世界」、そして曲順は前後しますが、パンクロックと呼んでもいいであろう「BIG TODAY」に至っては、ヴォーカルをデジタル処理していて、何を歌っているのかあまり聞き取れないという^^;。ラスト曲を流麗なストリングスで聴かせる「粉雪」で締めているので鑑賞後は後味スッキリといった感じなのですが、中盤から後半への流れはCURIOの音楽の多様性を感じることのできる構成。それでいてアルバム全体を見渡してみると、楽曲のカラーがバラバラにならず、ある種の抑制が取れているのは、全作曲を手がけるAJAのマニアックになり過ぎないメロディーのおかげかも。この辺のバランスが絶妙です。
 シングルでポップな曲を出して、アルバムでバンドの引き出しを見せていくという手法は、実はすでにデビューアルバムから始まっていたのですが、このアルバムで特にその傾向が顕著。遊び心とチャレンジ精神が溢れる一枚に仕上がっています。彼らのディスコグラフィの中でも、最もバラエティに富んでいる内容ではないでしょうか。この時期を総括したベストアルバムも数年後に出ていますが、CURIOのオリジナルアルバムでのお勧めはこの作品ですね。

 このアルバムが出た1998年当時は、ヴィジュアル系アーティストがヒットチャートを席巻していて、彼らのようなポップ/ロックなバンドが影に隠れて目立たなかった時期だったので、CURIOのブレイクは「こういうバンドが音楽シーンの前面に出てきてくれて嬉しい!」と思っていたのですが、彼ら自身はこの後1作アルバムを出した後、ヴォーカルのNOBが覚醒剤所持で逮捕され活動停止。そしてメインコンポーザーだったAJAが脱退して三人となり、音楽性をガラリと変えて活動再開するも、2003年に解散、という経緯をたどっていきました。
 正直、メジャーのフィールドで活躍する姿をもっと見たかったとは思いますが、彼らが残した音楽は世の中に残るし、(そういえばレミオロメンが「粉雪」出した時に一部で話題になりませんでした?)今は、各メンバーがそれぞれの活動で頑張っているようだし、悲観的にならずに、今後の彼らにエールを送りたいと思います。ありがとう、CURIO!


2008年03月17日 23:57

pamelahbest1000 Being誕生30周年記念事業の一環として、過去に所属したバンドのベストセレクションを超格安の1,050円でリリースするという、価格破壊的なシリーズの1枚。2007年12月12日発売。

 同日にリリースされたWANDSやT-BOLAN、MANISH、FIELD OF VIEWあたりはリアルタイムで体験していたのでスルーして、あまり聴いたことのなかったPAMELAHをセレクトしてみました。打ち込みダンスビートに攻撃的なギター、それにハスキー声の女性ヴォーカルが乗るというサウンド構成は、いわゆる「ビーイング的」なものをあまり感じさせず新鮮。90年代のビーイングサウンド好きよりも、エイベックス系ダンスサウンド好きの方にお勧めかも。あとは独特の毒の混じった歌詞が耳をひく(?)とでも言いましょうか。水原由貴の歌詞は聴いた直後で思わず歌詞カードを読み返してしまうような不思議な魅力があります。筆者も、このベストだけではなく、もうちょっと深く聴いてみようかな、と今になって(苦笑)思い始めております。

2008年03月15日 23:19

realize ここ数年は、カヴァーアルバム「VOCALIST」シリーズで歌い手としての再評価が高まっている徳永英明。今週の1枚は、1989年5月21日発売の彼の5枚目のオリジナルアルバム「Realize」をご紹介します。

 徳永英明自身のインタビューでもかなりの頻度で語られたと思うのですが、基本的にはソングライターである自分が、提供楽曲である「輝きながら・・・」を歌ったところ大ヒットしてしまい、この曲のイメージだけでバラードシンガーと括られることに悩み苦しんだ時期があったそうです。
 世間の認識と自分の意識とのズレに葛藤しながら、名曲「最後の言い訳」が誕生。本人作曲のこの曲が評価を得たことで彼自身の精神状態が好転したのか、翌年発表されたアルバム「Realize」は、そのアルバムタイトル(現実を把握する)という一見重そうな印象とは裏腹に、人間的に一皮むけたかのような、現実の悩み苦しみではなく、喜びや楽しさを前面に押し出した、とても風通しの良い作品になっています。心なしか、ブックレットの本人の写真もどこか自信に溢れているような・・・?

 このアルバムの特徴は、各作品の歌詞に頻出する「空」という言葉。そして、「風」を感じさせる、濁りのない爽やかなサウンド。この二点が相俟って、歌詞のテーマは壮大なものもあるのに、聴いていて疲れない、むしろ心地良いぐらい、何か脳からα派が出ているかのようなリラクゼーション的な空気を体感(聴感?)できるところでしょうか。
 具体的に一曲目から順に追っていくと、オープニングの「君の青」でいきなり雄大な空の中に聴き手を誘い、2曲目の「眠れない夜」は、現実社会をシビアに綴りながらも、前述のアレンジのおかげかそれほど重たくならず、メッセージも心の中に突き刺さるのではなく、スッと心の中に溶け込んでいく感じの一曲。表現力に長けた彼のヴォーカルで、空の情景がダイレクトに浮かび上がってくる「ラバーズ」に続き、本人が嫌っていたバラード歌手としてのイメージに対する踏ん切りがついたかのような「You're in the sky〜Eolia〜」から3曲続くバラードでは、ただ甘いだけではなく、渋みのあるストーリーが彼の手による言葉で描かれ、作詞家としての徳永英明の成長がうかがえると思います。
 地に足をつけた決意表明ソング「MYSELF」(「地に足を〜」と言いながらサブタイトルは「風になりたい」だけど・笑)、シングルでのピアノのフレーズをオルガンに置き換えて、教会音楽風にリミックスされた「最後の言い訳」と、シングル曲の配置にも無駄がなく、一通り聴いた後で思ったのは、このタイトルの「Realize」というのは、1989年当時の徳永英明の「現実=今の自分の音楽に対する充実感」を表したアルバムタイトルだったのかなぁ?ということ。本当のところは分かりませんが、筆者は勝手に邪推したりしています。

 「VOCALIST」シリーズや、バラードベストで彼の音楽を知り、過去のオリジナル作品に触れてみたいというリスナーの方には、聴きやすさやメロディーの親しみやすさという点で、このアルバム「Realize」を入門編としてまず聴くことをお勧め。そしてこの作品が気に入ったら、内面的により深く、音楽的にはよりヘビーな方向性に向かっていった以後の作品「JUSTICE」「Revolution」「Nostalgia」と順に手に取っていただけるとより濃厚な徳永ワールドの変遷を楽しめると思います(笑)。今だとリマスター音源で1,700円ぐらいで購入できるようになってるらしいですよ(宣伝?)。カヴァーだけではない、バラードだけでもない、オリジナルの徳永英明の姿にも触れていただければと思います。そして、個人的に、徳永英明本人には、そろそろオリジナルアルバムのリリースを期待したいところですね。首を長くして待ち続けているんで^^;


2008年03月13日 22:17

lovepropose 2008年3月7日発売。西日本を中心に根強い人気を持つ三人組・The LOVEの一年ぶりのニューシングル。

 彼らはバンドの名前通り「愛」を歌う作品が多いのですが、今回はズバリ「プロポーズ」の現場(?)を描いたシングル。男性視点の「プロポーズの詩」に対して、カップリングの「プロポーズされちゃった夜」は女性視点。歌詞カードを対照しながら見るとなかなか面白い・・・って、面白い歌じゃなくて、感動的な歌なんですが(笑)。
 アレンジはインディーズチャートを賑わした「再会」から続くメロウなバラード風。この路線がもはや定番になりつつあります。まあある意味彼らの看板サウンドですね。バンドとしての音楽の幅は、来月発売のニューアルバムで見せてくれることでしょう。

2008年03月10日 22:48

 昨日3月9日、KANさんのライブを観にZEPP TOKYOまで行ってきました!
 1990年末にファンになってから18年、ご本人のライブを観に行くのは初めて。なぜ今まで行かなかったかというと、気軽にライブに行けるようになった年の頃にはKANさんはフランスに行ってしまったからです(泣)。
 帰国後の2006年のバンドツアーは諸事情で行けず、今回は何としても行くぞ!と気合を入れてチケットをゲット。去年末にDVD化された90年代後半のライブDVDも観て予習は十分(笑)。喜び勇んでお台場に駆けつけました。

 というわけで、一ヶ月ぶりの「ライブレポート」カテゴリー、ライブの模様をネタバレしまくりで書きたいと思います。興味のある方、今後行くけどネタバレが怖くない方は、「続きを読む」からどうぞ・・・。続きを読む

2008年03月08日 13:12

tobira 早いもので、「今週の1枚」も10回目。週イチ更新だから今年の終わりには無事に52回目が達成されてるんでしょうか・・・?と未来のことを心配しつつ(苦笑)、今回ご紹介するのは、ゆずのメジャー3rdアルバム「トビラ」。2000年11月1日発売の作品です。

 ゆずについての一般的な認識というと、「路上ライブ出身の爽やかな二人組」とか、「親しみやすい曲調で真っ直ぐな歌詞を書く」とか、そういうイメージだと思います。実際、今回紹介する「トビラ」の前のアルバム「ゆずえん」では、前述のイメージそのもののシングル曲を5曲収録していて、あくまで「爽やかフォークデュオ」の枠内で作り上げたアルバムだったと思うのですが、そのアルバムで一旦そのイメージ戦略は終了したのか、続くシングル「心のままに」では激しい心情吐露を、そして「嗚呼、青春の日々」ではエレキサウンドで従来のゆずのイメージを破壊しにかかっていく、という具合にアピールの仕方を変えてきていたような気がします。そして、これらのシングルが収録されたニューアルバム「トビラ」では、「これってあのゆずなのか?」と思ってしまうほどの新境地が聴ける、いわゆる挑戦的な作風に仕上がっていました。

 このアルバムに収録された北川悠仁の楽曲は、「仮面ライター」「何処」「午前九時の独り言」など、社会に対する風刺(というか反発?)を色濃く描いた曲がほとんど。「俺は今こういうことが歌いたいんだ〜!」という彼の心の叫びをそのまま歌詞にしたような、ある意味、ゆずのパブリックイメージとかけ離れた野心的な作品が並んでいます。ギターもエレキを多用していて、アコギを抱えて路上ライブを行っていた以前の面影はかなり薄まっている様子。そんな「動」の部分を強調した北川に対し、岩沢厚治は、「飛べない鳥」「ガソリンスタンド」「新しい朝」といった「静」の作風に終始。北川よりは従来のゆずのイメージを守りつつも、今回のアルバムでは、どこか目線が達観しているというか、世間に対してどこか諦観を抱いているかのような楽曲が多く、何やら寂寥感すら感じさせる作品を連発。

 例外として「気になる木」「シャララン」あたりは以前のゆず的なアプローチをしてファンサービス的な匂いがするものの、アルバム全体を通して聴くと、北川、岩沢両氏の作風があまりに乖離し過ぎていて、クレジット見なくても「あ、この曲はこっちが作ったな」というのが一聴して分かるほど。基本的には自分で作った曲は本人がメインを取っているので、下手すると「二人がバラバラに作ったソロアルバム」となってしまいそうなところですが、それを防いでいるのは二人のハーモニーなんですね。どんなに挑戦的な曲や諦観を感じさせる曲を書いても、二人がハモればやっぱりゆずになってしまうという。ただこれはゆずの弱点ではなくて長所だと思います。すでにこの時点でその「二人の声=ゆず」という図式が確立していたからこそ、アルバム「トビラ」も一枚通してバラバラにならず、形になったと言えるでしょう。

 このアルバム関連の一連のリリースを終えた後、ゆずはあくまでシングルはパブリックなイメージを貫き通して、アルバムでは密かな毒を仕込んでいく、という活動方針になり、それを2008年に至る現在でも続けていると思います。この後のアルバムでもブラックな曲や社会を風刺したような曲は意外とあるのですが、アルバム一作を覆えるほどの問題作になったのはこの「トビラ」が最初で最後ではないでしょうか。このアルバムの、特に北川悠仁の楽曲のアクの強さは、今でもゆずファンの中では賛否両論で、個人的にもあまり好みじゃないな〜という感じなのですが(おい)、ゆずにとっては彼らの歴史上、良かれ悪かれ、重要な足跡を刻んだ作品なのではないでしょうか。
 また筆者も、このアルバムを聴いたことで「これからもゆずを聴き続けていこう」と決意したこと、逆に言えば、このアルバムがなければ今に至るまでゆずを(アルバム単位で)聴くことはなかっただろう、ということを考えると、少なくとも、自分にとってはこのアルバムの存在は大きかったと思います。


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