kirorochild 2016年3月9日発売、Kiroroの通算3枚目のベストアルバムは、メンバー本人達が「子供に聞かせたい、子供と一緒に歌いたい楽曲」をセレクトした企画盤。今年公開のディズニー映画「アーロと少年」の日本版エンディングテーマとして新録された代表曲「Best Friend 〜Mother Earth Version〜」を含む、全11曲収録。

 近年のKiroroはメンバーそれぞれの産休を経て、育児との兼ね合いなのか非常にゆっくりとしたペースでの活動が続いており、本作はアルバム作品としては2006年の「キロロのいちばんイイ歌あつめました」以来実に10年ぶりのリリース。前作に引き続きベスト盤になってしまったわけですが、前作はファン投票による結果シングルコレクション的な編成だったのに対し、本作は前作以降のシングル「幸せの種 〜Winter version〜」「みんなあなたを愛してる」がアルバム初収録、「紅芋娘」「Wonderful Day」など、定期的に活動していた頃の終盤にあたるアルバム曲などもセレクトされており、前作とはそれほど被りのない内容。ミディアム調の曲を中心にある程度曲調にも幅があり、トータルタイムも50分と長すぎず短すぎずの適度な時間なので、「久し振りにKiroroの曲を気軽に楽しむ」、という点ではこれまでのベスト盤の中では一番とっつきやすい作品かもしれません。

 さて、選ばれた楽曲達は、本作のタイトルのように「子供向け」を強く意識した…というよりも、母親への感謝の気持ちを込めた「未来へ」、純朴すぎるラブソング「月の夜」、幼い時代を振り返る「僕らはヒーロー」、力強く前向きな「僕らのメッセージ」など、気軽に口づさめる曲からそうでないものまで結構色々なカラーの曲が集まりつつ、これからの人生の歓びや楽しさを次の世代に伝えていこう、といった点で統一された、コンセプトベストのお手本のような内容。また、彼女達のシングル曲は意外と児童層向けアニメ主題歌に起用される機会が多く、アニメソングとして聴いてきた世代がハイティーンになったと思われる現在、本作に収録されたこれらの曲を入り口にKiroroの音楽世界を体験するには良い入門編だと思います。

 なお、ラストのボーナストラックには二人の歌とピアノ演奏による新曲「おやすみのうた」を収録。これぞ子守唄、といった感じの優しいピアノバラードで穏やかに締めと、コンセプトのみならず構成面も好印象。作品の性質上、街の雑踏の中よりも自宅で静かに聴きたい1枚ですね。