fjimakihibi 2016年3月23日発売、藤巻亮太の2ndフルアルバム。シングル「ing」「大切な人」「8分前の僕ら」を含む全12曲収録。

 レミオロメンを活動休止し、ソロ名義での活動を始めてから早4年。デビューアルバム「オオカミ青年」からは約3年半のインターバルを置き、合間に再始動宣言的なミニアルバムの発売を挟んでの待望のフルアルバム。ここまで至るにはここ数年のインタビューで語られているように、バンドであるレミオロメンと個人であるソロ活動との作風の線引きに悩んで煮詰まりスランプに陥るなど紆余曲折を経て、その二つの垣根を取り払うことで折り合いをつけ(大意)、現在ではライブでも積極的にレミオロメンの楽曲も演奏しているとのこと。
 そんな彼の新作は、アレンジは連名も含めて本人が全曲参加。演奏的にはエレキ、ドラムス、ベースのスリーピースを基本に、曲によってはキーボードやストリングスを入れて味付け、という面ではレミオロメンで積み重ねた活動スタイルとほぼ同様。中でもマイナー調の「かすみ草」の雰囲気は初期レミオロメンのファンには懐かしいかも。根本的にはレミオロメンを経てソロへと至っても「バンドの中で歌う」という意味では曲調も含めて真新しい点はそれほど感じられません。

 むしろ変わったのは歌詞の面でしょうか。暗闇の中から希望を見出すべくもがいていたような内省的な「オオカミ青年」や、聴き手への共感の最大公約数を意識したレミオロメン後期の前向きな応援ソングとはまた違った作品が本作では比較的多い印象です(特に前半部分)。まあ乱暴に括ってしまうと「昨日の自分に拘らず、今を生きていく、それが明日に繋がる」といったところ。ソロになってからの苦悩の日々があるから書けたのでは、とも思えるアルバムタイトル曲「日日是好日」「花になれたら」、コミカルな「回復魔法」「春祭」など、理想を求めながらも絵空事には終わらない、地に足を付けたメッセージソングとでも言いましょうか、レミオロメンとの境界線を意識しないことで藤巻亮太としての新たな世界が広がったかな、と感じました。

 まあ、ファンとしては長々と待たされてやっと…という気持ちも無きにしもあらずですが(苦笑)、ソロミュージシャンとして改めて新たな地平に立った彼を引き続き注目していきたいと思います。…できれば次回作は、1年後ぐらいのインターバルで(笑)。