presence 2016年4月13日発売、デビュー30周年を記念してリリースされた徳永英明のファン投票によるオールタイム・ベストアルバム。3枚組全44曲収録。初回限定盤は投票上位20曲のMVを収録したDVDが付属。今回のレビューは通常盤となります。

 昨年6月から11月末まで、公式サイトにて全キャリアの中からオリジナル曲10曲+「VOCALIST」シリーズから5曲を選曲して投票(通称:国民投票)の結果、今回はオリジナル曲の上位43曲+ボーナストラックとして最新シングル「君がくれるもの」を収録。曲順は時系列順ではなく、『心』『永』『明』というコンセプトに従って3枚のディスクに割り振ったとのこと。このコンセプトの意味は明確にはされていないので、あくまで管理人の主観にて各ディスクの感想を以下に述べることとします。

 まずDISC 1は『心』「最後の言い訳」「青い契り」「レイニー ブルー」などの代表曲が収録。これらの曲に代表されるように、このディスクは悲しい恋の終わりや過ぎ去った恋を回想する曲が多め。まさに別れの情景を描いた「さよならの水彩画」や、心が離れていく相手を引き留める「いかないで」など、聴いていてどこかやり切れない気持ちをリスナーに与える曲が満載。とはいえ最後は「Revolution」でテンション高く締めるのは収まりの良い印象。なお、Kinki Kidsに提供した「永遠に」のセルフカバーが収録されていますが、提供楽曲のセルフカバーからの選曲はこの曲が唯一。

 DISC 2は『永』「壊れかけのRadio」「もう一度あの日のように」「LOVE IS ALL」等、生きる意味をテーマにしたようなメッセージ性の強いヒット曲、「未来飛行」などの次世代へ向けた楽曲、「JUSTICE」「情熱」「負けるな」などの自らを奮い立たせるような作品を中心とした内容。明確なラブソングも数曲ありますが、「聴き手への問題提起」を強く打ち出したディスクと呼べるでしょう。個人的にはASKA提供の「心のボール」(クレジットは飛鳥涼名義)が選曲されたのが嬉しいトピック。ASKAと言えば近年の事件が色濃いわけですが、並み居る他の楽曲を差し置いてファン投票で選ばれたことには大きな意味があると思います。

 DISC 3は『明』。アルバム初収録のカップリング曲「〜 I'm Free 〜」で幕を開け、出世曲「輝きながら…」「風のエオリア」、非バラードの代表曲である「夢を信じて」「Wednesday Moon」、更に「永遠の果てに」「君をつれて」というスピリチュアル的(?)な楽曲など、他にもラブソングも交えつつ、コンセプト的には雑多ながら明るめな曲をセレクトした構成に。各楽曲の幅が広いという点では3枚のディスクの中でも抜きん出ている印象です。

 以上3枚、各ディスクは収録時間ギリギリの70分台後半と、1枚ずつ聴いてもお腹いっぱいの構成。欲を言えば「恋の行方」「SMILE」「魂の願い」あたりを入れてくれれば筆者的には完璧でしたが…。あとはやはり代表曲にバラードが多いなぁ、と改めて感じると共に、曲数が多すぎて全く徳永の曲を知らない、というリスナーには気軽にはお薦めできない内容(その辺はこちらを参照)。とはいえ、だいたいのヒット曲やアルバムの看板楽曲は選ばれており、重量級のベストならではの充足感は満たされると思います。3枚を一気に聴かずに1枚1枚をじっくり、楽曲発表当時の思い出と共に噛み締めて聴きたい作品ですね。