tokunaga 1986年のデビュー以来、シンガーソングライターとして、ボーカリストとして、幅広い人気を誇る徳永英明。今年はデビュー30周年を迎え、ファン投票で選曲されたオールタイム・ベストアルバム「ALL TIME BEST Presence」のリリースを来週に控えています。今回の「CD Review Extra」では、そんな徳永英明が節目ごとに発表してきたベストアルバム(セルフカバーベストも含む)全11作品を一挙ご紹介。「続きを読む」からご閲覧ください。
デビュー30周年記念
徳永英明全ベストアルバムレビュー



INTRO.
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 1987年12月5日発売、初のベストアルバム。全10曲収録。
 デビューからの全シングル4曲+アルバム3枚の中からのセレクト+新曲「さよなら言葉」「セレブレイション」で構成された最初期ベスト。当時はこれまでの徳永の楽曲のいいところ取り的なアルバムではあったが、後々まで彼の名刺代わりとなる「レイニー ブルー」「輝きながら…」以外に代表曲がなく、この二曲は後のベストに頻繁に収録されるので、現在においては残念ながら役割を終えた感のある1枚。


INTRO.II
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 1992年12月4日発売、「INTRO.」シリーズ第2弾。全14曲収録。オリジナル盤の歌詞カードには1曲ごとに徳永本人によるコメントが記載されていた(現行のリマスター盤にはなし)。
 「INTRO.」以降の代表シングル曲「最後の言い訳」「壊れかけのRadio」に加え、「君の青」「眠れない夜」「MYKONOS」などのアルバム楽曲も収録。最もセールス的にピークを迎えていた時期のベストであり、「夢を信じて」「Wednesday Moon」「LOVE IS ALL」「恋の行方」「I LOVE YOU」といったヒットシングルも満載。ほとんどの曲にリミックスが施され、曲順も考慮されておりアルバム全体の流れも良い。
 ラストに収録された「レイニー ブルー」は原曲のオケをリミックスし、間奏にサックスソロを追加録音したものに1992年当時の徳永のボーカルで再録音されているが個人的にはこのバージョンが一番好きである。現在でもライトリスナーが「気軽に徳永英明の代表曲を聴きたい」というニーズを満たしており、徳永入門に非常にお薦め。


Ballade of Ballade
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 1997年11月1日発売、直後開催のバラードツアーに先駆けての2枚組バラードベスト。全24曲収録。
 デビュー曲のリメイクシングル「Rainy Blue〜1997 Track〜」と同時発売で本作にも収録。各オリジナルアルバムから万遍なくバラード曲を選出。シングル曲だが「INTRO.II」には収録されなかった「風のエオリア」「恋人」「MYSELF〜風になりたい〜」や、「INTRO.II」以降の「僕のそばに」「永遠の果てに」「SMILE」などの名バラードも収められ、この時点までのバラードシンガーとしての徳永を堪能できる作品。


シングルコレクション(1986〜1991)
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 1998年11月21日発売、時系列順シングル集前編。全13曲収録。
 活動休止中にリリースされ、公式サイトには表記があるので公認扱いなものの、所属のレコード会社・バンダイミュージック(旧アポロン)主導的なベスト。デビューシングル「レイニー ブルー」から1991年の「Revolution」までの全シングルA面曲を収録。「輝きながら…」以降のセールス全盛期の作品が並んでおり勢いが感じられる。ミディアムやアップテンポナンバーも後編に比べると多めでバランス配分も良い。なお、「Wednesday Moon」のシングルバージョンが収録されているアルバムは本作のみ。


シングルコレクション(1992〜1997)
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 1998年11月21日発売、時系列順シングル集後編。全13曲収録。
 1992年の「恋の行方」から1997年時点での最新シングル「Rainy Blue〜1997 Track〜」までの全シングルA面曲を収録。長尺バラードに比重が置かれているので前編よりもやや重た目の印象。セールス的には前後のシングルと遜色ないものの、後年のベストでは何故かスルーされる「FRIENDS」の収録が貴重(?)。
 ラストには「今はさよならだけを言うけど」(「最後の言い訳」c/w)をボーナストラックとして収録。当時活動休止して情報が入って来ないところにこのような意味深タイトルの曲を最後に配置してまさか…と思ったが、翌年レコード会社をキングレコードに移籍し、無事に活動再開を果たした。


INTRO.III
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 2001年2月28日発売、約8年ぶりとなる「INTRO.」シリーズ第3弾。全14曲収録。
 1993年の「もう一度あの日のように」から、2001年当時の最新シングル「call」までの楽曲からのセレクション。前作「INTRO.II」からかなり年月が開き選曲対象が多いこともあってか、「魂の願い」「MEMO」以外はすべてシングル曲。また例外的にオリジナル音源でラストに配置された「輝きながら…」以外は時系列順に並んでおり、中盤までは「シングルコレクション(1992〜1997)」と被る箇所もあるのだが、キングレコード在籍時のシングル曲を数多く収録しているベストアルバムということで、現在も価値を保っている作品。
 なお、今回は「Rainy Blue〜1997 Track〜」が収録。これにより「レイニー ブルー」は「INTRO.」シリーズにおいて全てバージョン違いでの皆勤賞となった。


セルフカヴァー・ベスト〜カガヤキナガラ〜
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 2003年10月1日発売、病気療養後にユニバーサルミュージックへ移籍し、オリジナルアルバムの後にリリースされた現在のところ唯一のセルフカバーアルバム。全12曲収録。
 同時発売の最新シングル「君は君でいたいのに」以外は代表曲のリアレンジで構成。どの曲も小編成のアコースティック調にアレンジされ、原曲の時代性を取り払ったスタンダード寄りにお色直し。拍子を変更した「僕のそばに」や、ほぼ原曲のフレーズを踏襲した「永遠の果てに」、ピアノ一本で歌う「青い契り」などある程度の幅はあるものの、徳永の声を中心に据えたシンプルなアレンジが多く、夜長にBGMとして聴き流したい雰囲気のアルバム。
 選曲上ヒット曲が多いが、ある程度原曲を知っているリスナー向けの作品である。


BEAUTIFUL BALLADE
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 2006年2月22日発売、デビュー20周年を記念し、「20th ANNIVERSARY SUPER BALLADE SINGLE BEST」と銘打たれたバラードベスト。全14曲収録。
 既発の「Ballade of Ballade」とは9曲が重複(オリジナル音源で収録の「レイニー ブルー」を含めると10曲)で、「Ballade of〜」をヒット曲中心で1枚に編み直したという意味では聴きやすいアルバム。
 ラストに収録されたASKA提供の「心のボール」(「MYSELF〜風になりたい〜」c/w)がアルバム初収録という以外は目新しさは特にないが、徳永の代表バラード「だけ」を聴きたい層には適している選曲だと思う。


SINGLES BEST
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 2008年8月13日発売、2枚組のシングルセレクションベスト。全28曲収録。
 デビューからこの時点までの42枚のシングルから選曲され時系列順に収録。1993年までを収録したDISC-1はいつも通り選ばれる曲は選ばれ、という定番曲で占められ、1994年以降を収録したDISC-2はキングレコード時代のシングルがやけに少なく(6曲中2曲)、移籍後のユニバーサル時代のオリジナル曲シングルをほぼ網羅するというやや偏ったバランスの選曲で、初聴きリスナーにはあまりお薦めできない。
 なお発売形態は2枚組の通常盤の他、カバーシングルを収録したDISC-3が付属のものと、MVを収録したDVDが付属のもの、更に同時発売の「SINGLES B-side BEST」を同梱したボックスセットが翌2009年2月25日に発売と、様々なパターンでリリースされている。


SINGLES B-side BEST
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 2008年8月13日発売、初の試みとなるシングルのカップリング曲をセレクトしたベストアルバム。2枚組全30曲収録。
 「SINGLES BEST」同様に時系列順に収録されているが、アルバムにも積極的にカップリング曲を収録する傾向がある彼の楽曲で、本作でアルバム初収録を果たしたのは8曲と結構少ない。その一方で収録を見送られたカップリング曲も存在するのは本人の意向か。とはいえあまり実験的な要素をカップリングに持ち込まない(だからオリジナルアルバムにも収録されるのだと思うが)ということもあり、「ラバーズ」「帰れない二人」「負けるな」など、選ばれた曲は佳曲が揃っている。
 徳永英明のベストを何作か持っているけどオリジナルアルバムまでは…という層にお薦め。


VOCALIST & BALLADE BEST
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 2011年4月26日発売、デビュー25周年に際してリリースされた「究極のスーパーベストアルバム」。2枚組全30曲収録。
 DISC-1は日本の著名楽曲のカバーアルバム「VOCALIST」シリーズの「1」「2」「3」「4」からのセレクト+新録で「世界中の誰よりきっと」を収録した「VOCALIST BEST」。DISC-2は当時の最新シングル「春の雪」「黄昏を止めて」を含む、歴代のオリジナルバラード曲をセレクトした「BALLADE BEST」。基本的にはオリジナル音源だが「レイニー ブルー」「輝きながら…」「壊れかけのRadio」は再録音された「25th Anniversary Track」で、「永遠の果てに」はセルフカバーベスト音源での収録。
 世間的にカバーシンガーとしての認識が強くなった2000年代中盤の活動に加え、バラードシンガーとしての側面も味わえる美味しいところ取りのベスト。「VOCALIST」シリーズのみで徳永を知るリスナーに彼自身のオリジナル曲への門戸を開くきっかけとしては最適か。


 以上、全11作の徳永英明全ベストアルバムレビューでした。
 徳永のベストはバラードベストが多い!と思っていましたが実際はそれほどでもなく(3作)、代表曲にバラードが多く、それが各ベストで毎回のように選曲されるのでそういった先入観があったようです。確かに「徳永英明=バラード」という図式は既に90年代からありましたが、中学生の時に「夢を信じて」「Wednesday Moon」「恋の行方」などの非バラード曲を歌う徳永も好きだった筆者にとっては現状の彼に関しては若干複雑な気持ちもあります。
 さて、冒頭でも書きましたが来週4月13日に発売される「ALL TIME BEST Presence」は3枚組全44曲という重量級ベストで、ライト層が手軽に聴けるベストとは言い難いのが正直なところ。適度な曲数で彼の代表曲を聴いてみたい、という方には「INTRO.II」(リマスター盤あり)「BEAUTIFUL BALLADE」を改めてお薦めして、本エントリーを締めさせていただきたいと思います。
 長文レビューにお付き合いくださり、ありがとうございました。