kan6953 2016年2月3日発売、KANの通算16枚目を数えるオリジナルアルバム。シングル「Listen to the Music」「桜ナイトフィーバー」のアルバムバージョンを含む全10曲収録。通常仕様でレコーディングドキュメンタリーを約1時間収録したDVDが同梱されています。

 前作「カンチガイもハナハダしい私の人生」からは何と約6年振りというKANのオリジナルアルバム史上最長のインターバルを挟んでようやく発売された新作。その間にシングルやカップリング集が出たり、ライブツアーが開催されたりはしており、活動的にはそれほどブランクはないのですが、やはりファンとしては「や〜っと出たか!」という心境(苦笑)。シングルタイトル曲2曲と、既にライブで披露され、ライブDVDにも収録されている「scene」を除いた7曲が純粋な新曲。今回は制作にあたってSTARDUST REVUEの根本要、TRICERATOPS、佐藤竹善、馬場俊英など、繋がりのある著名アーティストがゲストとしてクレジットに名を連ねています。また、レコーディングには参加していないものの、Mr.Childrenの桜井和寿が「安息」という曲で作詞を手掛けるといったトピックも。

 さて、待望の本作、前作はビッグバンドジャズやシャンソンなど、どうやっても普通のバンドじゃ再現できないだろ!と突っ込みたくなるような曲(実際ライブでは完全には披露されていない模様)もありましたが、本作はきゃりーぱみゅぱみゅに音楽的影響を受けたと力説する(苦笑)「ブログ!ブログ!ブログ!」以外はストレートなポップロックからAOR風、ピアノがメインのバラードなど、ジャンルは多様ながら基本的にはバンド編成で演奏可能な楽曲が多数。また今回は収録曲のメロディーラインが非常に耳に残りやすく、メロディーメイカーとしての彼の手腕が存分に発揮された作品集となっているように思えます。

 ただし、本作で賛否両論を巻き起こしそうなのは何と言っても歌詞。元々ライブでコスプレしたりヅラ被ったりするのは彼にとって基本…という先入観を抜きにしても(笑)、今回の歌詞はいささかコミカルを通り越したものが結構多いかなと。街や電車でのアクシデントから材を採った「胸の谷間」などには嫌悪感を覚えるリスナーもいるのではないかと思います^^;。まあ、KANも結婚し家庭を持って今や53歳。90年代半ばのアルバム「東雲」「MAN」の時のような人生に対する苦悩や成就しない恋愛の悲しみなどを歌詞に描く年齢でもなくなったということでしょうが、そんな中で守るべき家族を持った今、高らかにロックンロール宣言をブチ上げる「ロックンロールに絆されて」(馬場俊英とのデュエット)などは筆者としては心打たれましたので、ある意味朗らかで時にオフザケもする「現在のKANの歌詞」も好きなのだなぁ、と思った次第です。

 付属DVDは収録曲を1曲ずつKAN本人が解説しながら、レコーディングの模様を収録したドキュメンタリー。ゲストミュージシャンもチラっとずつですが多数登場する中、普段のスットボケぶりはどこへやら(笑)かなり真面目にレコーディングに臨むKANの姿という貴重な(?)映像が見られます。楽曲制作における解説も分かりやすくされていて、本アルバムを深く理解する「参考書」としては最適。なかなか見応えのあるDVDでした。