fukunooto 2015年12月23日発売、福山雅治のデビュー25周年記念としてリリースされたベストアルバム。全46曲収録のCD3枚組+スペシャルタオル+20曲のMVを収録したBlu-rayを同梱した完全初回生産限定盤、CD3枚組のみの通常盤の二種で発売。今回のレビューは通常盤となります。

 デビューからのオールタイム・ベストとしては、発売当時までの全シングル収録だった1995年の「M-COLLECTION 風をさがしてる」も含めると、ユニバーサル移籍直前の「MAGNUM COLLECTION 1999 "Dear"」、デビュー20周年時の「THE BEST BANG!!」に続く4作目。本作は基本的に時系列順だったこれまでのベストとは逆に、最新シングル「I am a HERO」を皮切りに、Reel.1は2015年〜2010年+ボーナストラックの「破曉」、Reel.2は2010年〜2006年、Reel.3は2005年〜1994年までの楽曲+デビュー曲「追憶の雨の中」を含めたBMG期の楽曲のライブバージョン(演奏は近年のもの)といった具合に、現在から過去へと遡っていく曲順構成。歌詞ブックレットに掲載された写真もそれに倣っており、直近の福山からだんだんと若返っていく姿になっています(笑)。

 さて、5年振りのベストアルバム…ということですが、この5年間の間にシングルは多数リリースしているものの、オリジナルアルバムは1作のみ。そんなわけでReel.1の収録曲はほぼ最新オリジナルの「HUMAN」からの選曲(クレジットを見るにミックスもアルバムと同様のようです)。CMやドラマで耳にした曲、年末の音楽番組などで披露された曲が多く、どこかで聴いた覚えのある曲多数、という意味では2010年以降のベストディスク、と呼べる内容だと思います。
 続くReel.2は5年前の「THE BEST BANG!!」に選曲された曲が同盤のリミックスのまま収録という既視感ありありの内容、Reel.3も同様ながらBMG期のヒット曲は「HELLO」「IT'S ONLY LOVE」の2曲のみで5曲が先述のライブ音源という意味では意表を突いており、福山がキーボード弾き語りで歌う「Good night」には意外性が感じられましたが、選曲はいつもベストに収録される定番曲ばかり…と、新鮮味を欠く内容である点は否めません。

 ベストをリリースする度に何らかの形でリミックスを行い、特に「THE BEST BANG!!」では入念な作業が行われたエピソードが語られるのに対し、本作はあくまでもこれまでの素材をそのまま活用したベスト盤、という印象。またオールタイム・ベストと謳いながら90年代のスタジオ音源がほとんど選ばれていない、という偏った内容なので、万人向けのベストとは言い難いのが正直なところ。
 強いて推すならば、「90年代の福山雅治は聴いていたけどそれ以降はまったく聴いておらず、ふと最近の福山に興味を持った」という層には2000年以降の彼の15年間の音楽の軌跡を辿れる意味では最適なベストでしょうか。そういう層が果たしてどれぐらい存在するのか、というのは別として、ですが(笑)。総じて20周年ベスト以降の5年間でのベストを新たに編むのはちょっと早過ぎたかな、という感想でした。