
「evergreen」は本ブログでも「今週の1枚」で紹介しているマイラバ屈指の名盤。それをこの度、小林武史自身が「現代の解釈でリプロデュース」ということで、まずはDisc.2の「evergreen+」から聴いてみることに。収録曲は全10曲で曲順もまったく同じ、akkoのボーカルの歌い直しや大胆なアレンジ変更などは一切なく、音のバランスの調整、曲によっては原曲の打ち込みを生楽器に差し替え、プログラミングの追加など、あくまでオリジナル盤をミックスし直した、といった趣で、オリジナルを知っているリスナーにとっては「あ、この部分が元とちょっと違うぞ」というのを楽しみ、知らないリスナーには実験的要素の少ない純ポップスアルバムを楽しめる、という内容。近年においてはストリングスやピアノの音を過剰なほど潤沢に入れまくる…というイメージの強い小林武史が、20年前の自ら指揮を執ったアルバムに一体どんな解釈を加えるのか…と期待と不安が半分ずつ(苦笑)の思いだったのですが、結果は杞憂に終わってひと安心(?)。
そして対になるDisc.1の「re:evergreen」は配信シングルとして先行リリースされていた「ターミナル」を含む全10曲収録。作詞・作曲・編曲・プロデュースすべてが小林武史の手によるマイラバのアルバム、というのは小林離脱前の「FANTASY」(2004年)以来となります。本作のコンセプト上、「evergreen」を意識したポップな音作りにDisc.2との共通項が見受けられるのですが、「evergreen」の模倣をもう一度、という印象は受けず、親しみやすいメロディー、生演奏を重ねた各楽器のアンサンブルのバランスの良さなど、「究極のポップスアルバムを作りたかった」という、小林武史のトータルプロデュースワークが光る逸品に仕上がっています。なお、歌詞は…元妻のakkoに「バランス」みたいなテーマの曲を歌わせるあたりはオイオイ…と思ったりもするのですが(苦笑)、複数の様々な女性主人公が登場する短編作品集といったところでしょうか。
akkoのソロプロジェクトに移行してからのマイラバは、「初期路線」を現代の感覚で再現、というテーマが根底にあったように思えるのですが、今回この「re:evergreen」を聴いて、その路線を完全に再現できるのはやはり小林武史しかいない!と痛感してしまうアルバムでもあり、何やら複雑な思いを抱いてしまったのですが、「evergreen」ありきの「re:evergreen」ではなく、単品でも上質のポップミュージックを詰め込んだ良作だと感じました。
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