zard25th 来る2016年2月10日、ZARDのデビュー25周年イヤーの始まりの日にリリースされるオールタイム・ベスト「ZARD Forever Best 〜25th Anniversary〜」。ビーイング総帥の長戸大幸と、ZARDのメインスタッフである寺尾広が選曲した52曲をディスク4枚にわたって収録した本作、収録順は時系列ではなく、リリース年を度外視した「発売日順」という、ある意味新しい並びになっています。
 昨年末の全ベストアルバムレビューでも触れました通り、これから「CD Review Extra」では4回に分け、各ディスクの全曲レビューを行いたいと思います。まずはdisc-1 -早春-からの13曲。「続きを読む」からご閲覧ください。
ZARD Forever Best 〜25th Anniversary〜
全曲レビュー/disc-1 -早春-


※全曲・作詞:坂井泉水。


1.Don't you see!
 作曲:栗林誠一郎/編曲:葉山たけし
 1997年1月6日発売、19thシングル。
 アニメ「ドラゴンボールGT」二代目エンディングテーマに起用。オンエアバージョンは商品版とは細部が異なり、TVで聴いたイントロ部分がCDでは出ないままに演奏が終わる、というのが結構衝撃だった思い出がある(笑)。ちなみにオンエアバージョンは2012年発売の「ZARD Album Collection」のPREMIUM DISCに収録。
 タイトルは「分かってないね!」という意味らしい。歌詞は恋人に対する不安(不満?)らしき内容で、「裏切らないのは家族だけなんて寂しすぎるよ」というシビアなフレーズも登場するが、ラストの一行に光が見出せるのが救いか。ニューヨークでロケされて信号機にぶらさがる坂井泉水の姿が映るMVは結構有名?
 オリジナルアルバムには未収録。同年春の「ZARD BLEND -SUN & STONE-」には、2コーラス目の後のコーラスの余韻があっさり気味にエディットされたミックス変更バージョンで収録。以降のベストにはこちらのバージョンで収録されているようだ。

2.マイ フレンド
 作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
 1996年1月8日発売、17thシングル。
 ZARDにとっては初のアニメタイアップとなる「スラムダンク」の最終エンディングテーマ。オンエア自体はリリース前年の秋から開始されていたが、なかなか発売されなかった記憶がある。
 タイトル通りの友人を応援、鼓舞するような歌詞が特徴。強力なタイアップ効果も手伝って、シングルでは「負けないで」「揺れる想い」に続く三作目のミリオンセールスを達成。
 当時のTVスポットや、音楽番組での楽曲紹介時には、坂井がロンドンで群衆に混ざって歩きながらアップで振り返るシーンが頻繁に流れた。この数年間はスタジオの作業シーンかロケ地での静止画ぐらいしか露出がなかったので、「スタジオ外で動く坂井泉水」が見られるというだけで有難かった(笑)。

3.この愛に泳ぎ疲れても
 作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 1994年2月2日発売、11thシングル。
 オムニバスドラマ「愛と疑惑のサスペンス」オープニングテーマ。バラード風に重ために始まり、1コーラスが終わるとバンドインして加速する構成はZARDの作品の中では結構異色。発売時はまさにビーイングブーム真っ盛りで、似たような音やアレンジの曲がビーイング内外問わず飽和状態だったのだが、その中でも新鮮に聴こえたアレンジだった。
 ジャケットは日本青年館で撮影されたとのこと。またTVスポットでは同所のステージ前で佇んだり、客席の中を歩いたりする坂井の姿がスロー映像でオンエアされていた。

4.Good-bye My Loneliness
 作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 1991年2月10日発売、デビューシングル。
 記念すべきデビュー作はドラマ「結婚の理想と現実」の主題歌に起用され、同年春まで地味にロングヒットを記録。ちょうどこの頃から筆者はFMのチャート番組をチェックするようになり、この曲をリアルタイムで知ったのでZARDとはデビュー当時からの付き合い(?)ということになる。イントロがThe Policeの某曲にソックリなのを知ったのは大分後だったが…(苦笑)。
 後の映画監督・岩井俊二の手によるモノクロのMVが制作され、ローカル局の音楽番組などで流れていた。1コーラスのみだが2006年発売のDVD「Le Portfolio」に収録されている。
 坂井泉水自身の始まりの曲ということもあり、歌声がまだ歌謡ロックっぽい雰囲気。後の1997年「ZARD BLEND -SUN & STONE-」収録の際にはボーカルを再録、アレンジも中音域を強調したミックスに変更された。

5.WAKE UP MAKE THE MORNING LAST 〜忘れがたき人へ〜
 作曲:福山廣也/編曲:古井弘人
 1999年2月17日発売、8thアルバム「永遠」収録曲。
 主力作家陣が相次いで離脱した1998〜1999年は様々な作曲家の作品を採用していたZARDだが、この曲がZARDへの唯一の楽曲提供となった福山廣也もその一人。
 ブラスやストリングスをアカデミックに使用したり、Wow Wow〜を繰り返すコーラスアレンジなどはあまりビーイング的ではなく斬新で、以後もこういったタイプの楽曲は存在しない王道を外した作品。それ故に今回のベストで選出されたのは正直意外であった。「こういうZARDも聴いてほしい」という選曲者のこだわりかも。というわけで勿論ベスト初収録。

6.君に逢いたくなったら…
 作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
 1997年2月26日発売、20thシングル。
 ドラマ「理想の結婚」主題歌。結婚への秒読みをテーマに描かれ、「遠い将来がこんなに早く来るとは思わなかった」などの、戸惑いや葛藤などが感じられるものの、一歩ずつ幸せに向かう流れが好印象の歌詞。アコギのストロークをメインに据えたバンドアレンジもほのぼのとして良い雰囲気である。
 珍しくMVが制作され、発売当時から音楽情報番組などでほぼ1コーラスながらオンエアされていた。セットの中で絵画を拭いたりシャンパンを撒いたり、ボールを投げつけられたり(?)する坂井の姿は、ほぼレコーディングスタジオでの作業シーンしか見られなかった中で新鮮だった。
 直近作の「Don't you see!」同様オリジナルアルバム未収録で、「ZARD BLEND -SUN & STONE-」収録の際にミックス変更された…が細かい違いが分からないので違いの分かる方は是非ご一報を。なお、リクエストベストには二回選出されるなどファン人気が高い一方、スタッフ選曲のベストでは何故か収録を見送られる傾向にある曲である。

7.息もできない
 作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
 1998年3月4日発売、24thシングル。
 友人から好きな相手へと変わっていく主人公の心境を、春の訪れと共に描く瑞々しい片想いナンバー。インタビューでは「ティーンを意識した歌詞」と語られている。アレンジはそんな恋愛を応援するかのような勢いのあるバンドサウンドが展開。この後、ZARDのシングルは実験的方向に傾き始めるので、この曲がシングルでは90年代最後の王道アレンジナンバーかもしれない。
 タイアップはアニメ「中華一番!」のオープニングテーマ。2008年の「ZARD Request Best」には原曲アレンジを手掛けた葉山たけし自身によるリアレンジバージョンが収録。基本アレンジは同一ながら若干落ち着いたトーンに変更されている。

8.今すぐ会いに来て
 作曲:栗林誠一郎/編曲:明石昌夫
 1995年3月10日発売、6thアルバム「forever you」収録曲。
 アルバムの冒頭曲にしてイントロなしでAメロが始まる構成も含めて、シャッフルビートの効いた異色作品。歌詞は恋愛真っ最中の一番良い時期を描いているようで、恋に夢中な甘酸っぱさが良い(笑)。
 ベストアルバムには本作にて初収録。

9.ハイヒール脱ぎ捨てて
 作曲:栗林誠一郎/編曲:明石昌夫
 1995年3月10日発売、6thアルバム「forever you」収録曲。
 タイトルや雰囲気的に夏っぽい曲…と思いきや、舞台は三月末。かつて別れを告げた元の彼氏に未練ありの働く女性が主人公のようだ。
 1997年の「ZARD BLEND -SUN & STONE-」にてシンセのブリリアンスを後退させたリミックスで収録。2008年の「ZARD Request Best」にも25位にランクインし収録と、根強いファン人気を持つ楽曲。

10.Forever you
 作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 1995年3月10日発売、6thアルバム「forever you」収録曲。
 紆余曲折を経て、過去を悔やまず「もう迷わない 今が幸せだから」と高らかに歌い上げるミディアムバラード。坂井の略歴を見るにパーソナルな部分が色濃く出ている曲だと感じさせる。アコースティック調で始まりボーカルに演奏が追従して盛り上がっていくアレンジも感動的で、アルバムでは3曲目ながらクライマックス、エピローグといった雰囲気を醸し出していた。
 「ハイヒール脱ぎ捨てて」と並ぶ、アルバム「forever you」の人気曲。

11.明日を夢見て
 作曲:大野愛果/編曲:小林哲
 2003年4月9日発売、35thシングル。
 アニメ「名探偵コナン」エンディングテーマ。オンエアバージョンの編曲は徳永暁人だったが商品化の際にアレンジャーを変更。テンポも含めて大幅にリアレンジされている。オンエアバージョンは2012年の「ZARD Album Collection」のPREMIUM DISCに収録。
 いわゆる「ZARD第2章」のプロローグ的なシングルだが、どこか憂いや諦観を感じさせる今までと違った世界が垣間見られる歌詞が印象的。アンニュイな雰囲気のMVも制作され、坂井がピアノを演奏するシーンも一瞬映る。この年は他に「瞳閉じて」や「もっと近くで君の横顔見ていたい」など、意欲的なアレンジのシングルが多く切られた一年だった。

12.翼を広げて
 作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 2008年4月9日発売、44thシングル。
 原曲は1993年にDEENに作詞提供した楽曲。提供楽曲は積極的にセルフカバーしていたZARDだが、この曲は坂井泉水逝去の翌年に蔵出し音源としてリリースされた。劇場版「名探偵コナン 戦慄の楽譜」主題歌。
 アレンジャーも楽曲制作期に参加していた明石昌夫のクレジットなので、商品化にあたり特に手を加えていなさそうである。熱いギターソロやコーラスなどで終盤どんどん盛り上がるDEENバージョンに対し、こちらは途中からリズムセクションが入るものの、最後まで淡々とした演奏であっさりと終わる。ベストアルバム初収録。

13.愛は暗闇の中で featuring Aya Kamiki
 作曲:栗林誠一郎/編曲:森下志音
 2008年4月9日発売、44thシングル両A面曲。
 元々はHMバンドBLIZARDの「Empty Days」という曲のカバーのこと。デビューシングル「Good-bye My Loneliness」のカップリングと同名デビューアルバムに収録されたきりだったが、アニメ「名探偵コナン」の2008年初頭からのオープニングテーマとしてリアレンジされてオンエア。
 リアレンジを担当した森下志音は当時GIZA所属のバンドNaifuのメンバー。原曲の雰囲気を尊重しながらも、90年代初頭らしさをオミットし、現代的なリフなどを導入した再構築が光る。
 また、上木彩矢がボーカリストとして参加しており、オリジナルの坂井の声に合わせてほぼ全てユニゾン&ハモリを担当しているので、完全なツインボーカル楽曲といった感じに。なお、2コーラス目のAメロ途中に四行分のメロディーに合わせた歌詞が追加され、上木が単独で歌っているが、これは坂井が生前に書き加えたものとのことで、シングルの歌詞カードはその部分だけ坂井の筆跡による手書き印刷だった。「翼を広げて」同様、ベストアルバム初収録。


 以上、disc-1 -早春-の全曲レビューでした。
 さて、ここでは管理人独自の「この曲も今回のベストに入れて欲しかった!」コーナーとして(笑)、惜しくも選に漏れた曲を挙げていきたいと思います。disc-1の発売日範囲(1〜4月上旬)では、何といっても「Just believe in love」。最初のベスト「The Single Collection -軌跡-」に一度収録されたのみで、ヒットシングルにも関わらず不遇の扱いが続いており、今回も残念ながら未収録となってしまいました。他には6thアルバム「forever you」収録の「I'm in love」、9thアルバム「時間の翼」収録の「hero」、10thアルバム「止まっていた時計が今動き出した」収録の「pray」などですかね。
 次回の「CD Review Extra」では、disc-2 -初夏-の13曲をレビュー予定。長丁場のレビューになりますので、また通常レビューと交互のペースで更新していきたいと思っております。