kyuusojinsei 2015年10月21日発売、キュウソネコカミのメジャー通算3枚目のオリジナルアルバム(フルアルバムとしてはメジャー初)。シングル「MAGA SHAKE IT!」「ハッピーポンコツ」を含む全11曲収録。初回限定盤には副音声解説付のライブ映像やドキュメンタリー映像を収録したDVDが付属。

 キュウソネコカミは昨年メジャーデビューを果たした5人組ロックバンド。楽器編成はツインギター+リズム隊+キーボードといった普通のバンド編成で、奏でられるサウンドはガレージロック系。これにキーボード…というかシンセが入っているのですが、このシンセの入れ方がいかにも電子楽器!といった音使いをしていて、そのピロピロした音色がバンドサウンドと溶け込まず乖離しているのがインパクト大。これがまず彼らの個性の一つかもしれません。本作はCMソングとしてオンエアされた「MEGA SHAKE IT!」を代表する、シンガロング系のナンバーを中心に、最初から最後までを一気に駆け抜けるテンション高めの楽曲で構成されています。

 さて、音色がインパクト大、と書きましたが、それ以上に強烈なのがフックの効いたメロディに畳み掛けられるかのような字余り気味の歌詞。詩的なものというよりも、日常の不満や不安をコミカルに描いた歌詞が特徴だと思うのですが、年頃の娘に冷たくされるようになってもどうすることもできない父親が主役の「泣くな親父」、猫贔屓の世の中にあやかろうとして自分も猫にハマってしまう(笑)「NEKOSAMA」、嘘をテーマにハイテンションな「記憶にございません」、そして酷い医者に遭遇してしまった悲劇を描いた「ヤブ医者」など、ユニークな視点が散見されて、思わずしっかりと歌詞カードを熟読してしまったほど(笑)。
 何でもインディーズ時代はもっと強烈なディスりを炸裂させた内容の楽曲もあるらしく、メジャー進出以降はその辺りの表現がマイルドになって物足りない、というコアなファンの方の意見もあるようですが、筆者としてはこれぐらいのエンターテイメント性があったほうが一般のリスナーに向けての聴きやすさ、という意味でも適しているかな、と思いました。

 最後に本編終了後の隠しトラックとして「ブルース」という曲のライブ音源が収録されているのですが、「僕らいつかは消えるけど(中略)俺らが元気なうちにまた遊びに来いよ」というバンドマンの視点からの気持ちの籠ったフレーズが泣ける、なかなかの名曲。
 行きつけのレンタルショップで大プッシュされており、どれどれと思って(笑)手に取った本作、普段はなかなかチェックしないジャンルではありますが、かなり面白い作品として楽しめました。