
ここ数年はハワイやブラジルなどで発祥した音楽を積極的に取り入れ、自分達の音楽とチャンプルーして新たな音楽性を探っていた感のあるBEGIN。ベテランとしては開明的な方向だと思う反面、アルバム単位でのテーマやジャンルに縛られた「企画物」的なイメージを抱いていた点も否めなかったのですが、本作ではジャケットのタイトルの略称こそ暗号っぽいですが(笑)、近年続いたコンセプトのようなものは特に設けず、これまで培ってきた「BEGINの音楽」を存分に全曲新曲という形でお披露目しているかのように感じます。
収録曲を追って見ていくと、軽快なポップロックで幕開けの「Blessing Rain」、レゲエ風の「アサイーボウル」、本作では唯一三線を使用した「海の声」、ハワイアンミュージックへの接近の一つの形でもある「アロハの花」、衒いのないラブソング「僕だけの愛で出来たうた」、カフェBGM的なインスト「黄昏のリベルダージ」、久々の直球ブルーズナンバー「俺は嫌って言う」、サーフロック調の「サーファーに傘は要らないのさ」、そして夫婦の会話で構成されたしんみりバラード「ハンドル」と、親しみやすい歌詞やメロディーが最初から最後までバラエティ豊かに並んでいます。
デビュー以来、ブルースやアメリカンミュージックへの憧れを経て、地元沖縄の要素を取り入れ、そして日本国外の音楽にも改めて目を向けるようになったBEGINの過去と未来が、2015年現在での彼らのフィルターを通し、楽曲の数々となってパッケージされたかのような作品。それでいて全体的に散漫にならないのは、ボトムを支えるドラムがレコーディングメンバーであり、近年ライブのサポートでも参加している国場幸孝の存在感のある音で全曲が統一されているからかも。
そして、本作も比嘉栄昇以外のメンバー二人によるソロが2曲ずつ収録されているのですが、ここで目を引くのは島袋優の作品。上地等(キーボード)がデビュー初期から定期的に歌い続けているので安定感があるのと対照的に、島袋はあまりメインを取らず、歌う曲も悪く言ってしまえばちょっと内輪ノリ…という感じも受けていたのですが、本作はタイアップ曲「海の声」はもとより、「老眼」をテーマに(苦笑)同世代が思わず頷いてしまうかのような「Rogan's Roll」という、身内受けだけではない楽曲を書いてきたのが好印象。もちろんボーカリストとしての力量としては比嘉が圧倒的であり、BEGINの顔であることは変わらないのですが、この二人のソロも含めて1枚のアルバムとして「最新型のBEGIN」を感じさせてくれる、トータルバランスに優れた1枚になっていると思います。
なお、店頭での先着購入特典として約13分収録のDVDが配布。今年の6月27日に沖縄・嘉手納町兼久海浜公園にて開催された「沖縄からうた開き!うたの日コンサート2015 in 嘉手納」のダイジェスト映像としてマルシャバージョンの「島人ぬ宝」「ハイサイCalifornia」「国道508号線」「笑顔のまんま」、そして当時の最新曲「バルーン」を収録。曲毎にチャプター分けしていないのはご愛嬌ですが(笑)、参加型のライブ形式ということもあり、彼らの「皆で思い思いに音楽を楽しもう」という姿勢が見られる良い映像。CDショップにて新品購入を検討されている方は、是非配布対象店にてのお早目のお買い上げをお薦めいたします。
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