
レコード会社3社の垣根を越え、華原朋美の全キャリアの中からシングルタイトル曲以外を公式サイトのファン投票で募って選曲した「オールタイム・リクエストベスト」という本作。時系列に沿った曲順ということで、いきなり「Just a real love night」「summer visit」と、小室哲哉からの愛全開(笑)の作品からスタートするのですが、その関係も3曲目の「Every morning」から雲行きが怪しくなり、理解し難い歌詞+実験的なサウンドで早くも迷走期に突入。その迷走の極みともいえる「needs somebody's love」を過ぎ、破局後の2000年作品「True Mind」では明らかにボーカルが不安定…と、6曲目まで聴いたところでこのアルバムちゃんと最後まで聴けるかな…と不安になってしまったのですが(苦笑)、その後は一気に5年後の作品に飛んだことで、「好きは世界一長い言葉」「運命の糸」の2曲は歌唱力の上昇を実感できて一安心(?)。ここまでの8曲が長期活動休止までの作品となります。
9曲目以降は武部聡志をサウンドプロデューサーに迎えたセルフカバー「I'm proud -2013 Orchestra Ver.-」を皮切りに、活動再開後の2013年以降の楽曲が並びます。再開後は「DREAM -Self Cover Best-」(セルフカバー)、「MEMORIES」(邦楽カバーアルバム)を2作リリースにとどまり、オリジナル曲のリリースが無かった、ということで、カバー曲がズラリと並んだ構成に。「MEMORIES」シリーズをコンパクトにした内容とも言えるのですが、セルフカバーも含めて6曲も選曲されたのはファン投票の結果とはいえ、もっとオリジナル曲を収録して欲しかった…というのが正直なところ。最後にボーナストラックとして収録されたアップテンポの新曲「never give up!!」の出来の良さもそんな気持ちに拍車を掛けてしまいました。
2枚組の「ALL TIME SINGLES BEST」が華やかなシングルヒストリーなのに対し、隠れた佳曲を集めた拾遺集、という趣の本作。構成は前述の通り若干物足りない感もありますが、2枚組にせずに1枚で20年の活動を収めたことでライト層にも訴求力のある作品だと思います。「ALL TIME〜」からもう一歩踏み込みたいリスナーの方にお薦め。
コメント