reflection 2015年6月4日発売、Mr.Childrenの通算18枚目となるスタジオアルバム。全23曲収録のUSBアルバム+写真集の「{Naked}」、「{Naked}」から14曲を抜粋し、一部曲順も変更したCDアルバム「{Drip}」という、大きく異なる二形態でのパッケージで発売。また、「{Naked}」ならびに「{Drip}」初回盤にはレコーディングドキュメンタリーを記録したDVDが付属。本エントリーのレビューは「{Drip}」となります。

 昨年の秋に、本作にも収録されたシングル「足音 〜Be Strong」にて、デビュー以来ずっと関わり続けていたプロデューサー・小林武史の手を離れ、初のセルフプロデュース作品をリリースしたことで話題になった彼ら。小林武史はミスチルを日本を代表するバンドに育てあげた功績がある一方、近年の活動ではバンドサウンド以上に主張の激しいピアノやストリングスを曲全体に過剰に取り入れ、Mr.Children=桜井和寿&小林武史+その他三人のメンバー、という図式を作り上げてしまった、というマイナスポイントもあり、筆者にとってはミスチルに関しては功罪併せ持つ人物、いう認識になってしまっているのですが(苦笑)、本作は従来のミスチルと小林の共同プロデュース曲としては、先行して出ていた配信シングル「REM」や、シングルc/wの「Melody」など、全14曲中5曲と大幅に減り、代わってミスチルのセルフプロデュースの曲が9曲。うち1曲は森俊之が単独アレンジと、プロデュース&アレンジ面において新たな試みが為されたアルバムとなっています。

 とはいえ、楽曲としては今まで通り、桜井和寿が全曲作詞作曲。相変わらずの良い意味での王道感に溢れたメロディーを聞かせてくれる、という面ではセルフプロデュースの曲を聴いても劇的に変化した!という印象は薄く(歌詞のほうは、もはや達観を経て悟りの境地みたいな歌詞が多くて共感はしにくかったですが・笑)、やはり「変わったな」と思えるのはアレンジ面。セルフプロデュース作でも「未完」「FIGHT CLUB」「Starting Over」などで見受けられる生弦、ピアノ、そしてプログラミングを含めてバンド以外のパーツが登場する作品はやはりあるものの、そのどれもが主役である曲とバンドサウンドを食うことなく、バンドを引き立てる名脇役的なポジションとして機能している辺り、2000年代過ぎぐらいから続いた「音の立ち位置」に対する見直し、再構築がうまく成されているな、と感じました。

 特に序盤の曲でのアコギのストロークのジャキジャキ感と、スネアの響く感じ。最近のミスチルの作品ではあまり目立たなかったこれらの箇所が耳を引き、久々に「ワクワク感」を彼らの作品の中で覚えたのは嬉しかったですね。また、ちょうど真ん中の8曲目に桜井のピアノ演奏による2分程度のタイトルを冠したインスト「Reflection」をアクセント的に配置し、約67分というオリジナルアルバムにしては長めの演奏時間ながら、最初から最後の曲まで一気に聴けてしまう効果を上げているのも好ポイント。「{Naked}」のみ収録の9曲のほうは一部の曲を除いて未聴なのですが、「{Drip}」に限って言えば、1枚のアルバムとしてしっかりと体をなしている作品、だと思います。

 20年近くも前のブレイク直後から、新譜が発売される度に聴き続けてきたMr.Children。今までの作品への思い入れもあり、筆者としては本作は「彼らの最高傑作、とまではいかないけれど、良作」。新旧のミスチルリスナーにお薦めですね。