
本作はデビュー当時のORUMOK(パイオニア)、1998年より移籍のワーナー、そして現在所属のユニバーサルの各社レーベルの垣根を越え、これまでリリースしてきた全シングルA面曲を時系列順にコンプリート収録したオールタイム・ベストアルバム。2006年に発売された「華」「Keep On Running」「あのさよならにさよならを」の3曲、そして最新シングル「はじまりのうたが聴こえる」がアルバム初収録。さらに2枚目の最後に書き下ろしの新曲「Long way to go」が収録されています。
まずDISC 1は1995年〜1999年までのシングルを収録。小室プロデュースの新人(恋人)として「keep yourself alive」でデビュー、「I BELIEVE」「I'm proud」「Hate tell a lie」等々、ミリオンセラーを連発してTKファミリーのトップに立っていた、このディスクの中盤まではまさに名曲の連発。小室も気合を入れて彼女のシンデレラストーリーを詞の面からも強力にプロデュースしており、ああ、この頃は二人とも順風満帆だったのだな、と思うことしばし(苦笑)。ただしディスクの後半「たのしく たのしく やさしくね」辺りに差し掛かると、徐々に実験路線の楽曲が目につくようになってしまうわけですが、今改めて聴くとサウンドメイク的にはそれほど突飛ではないのかも。この時期の迷走の一因は彼女の不安定なボーカル、そして誰が歌っても上手く歌えなさそうな怪奇なメロディー、さらに支離滅裂な歌詞にあったのではないでしょうか^^;。
…やがて二人は破局し、小室プロデュースから離れて「as A person」なる本人作詞の恨み節(?)が登場。続く同じく本人作詞の前向きポップス「be honest」という、とりあえずひと安心といった形で本ディスクは締められていますが、振り返るにこの時期の彼女の状態は相当不安定だと思われ、聴いていて痛々しいものも感じてしまいました。
DISC 2は2000年〜2006年まで、そして復帰後の2013年以降のシングルを収録。海外に留学したり、バラエティ番組に出演するようになったり…と激動の時期にあたりますが、楽曲は様々な作家からの提供によって定期的にリリース。バラード曲の割合が比較的多めなものの、「Keep On Running」のようなアップテンポナンバーや、肩の力を抜いた「あきらめましょう」といった個性的な曲もチラホラ。中でも中島みゆきが作詞作曲を手掛けた「あのさよならにさよならを」は頭ひとつ抜けている印象。歌唱力もリリースを重ねるごとに上昇していることを実感できます。しかし、歌詞のテーマは大きく分けて「過去の失恋を振り返る」系か「前向きに明日に向かって生きてゆく」系の二つが占めているのは戦略だとは思いますが、ちょっと狙い過ぎの気も。
さて、復帰後のシングルは2曲。復帰作の「夢やぶれて-I DREAMED A DREAM-」と、約9年ぶりのオリジナル作品となった「はじまりのうたが聴こえる」。後者は作詞が華原、そして作曲が小室(プロデュースは復帰作以降と同じく武部聡志が担当)という、まさかのコンビ復活作は、小室らしいメロディーの良曲。そして新曲の「Long way to go」も未来へ向かっての決意を表明したオーケストラバラードで、約3時間に及ぶシングルヒストリーに幕を下ろすのには最適な楽曲だと感じました。
ORUMOK期のみのベストや、ワーナー期までを収めたベストは今までもありましたが、紆余曲折を経て辿り着いた彼女の現在までを一気にさらえるという意味では待望の決定盤としてお薦め。なお、同日にはシングル表題曲以外の楽曲をファン投票を基に選曲した「ALL TIME SELECTION BEST」も発売。こちらのレビューもいずれ機会を見て行いたいと思っております。
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