yoshidayamada 2014年12月17日発売、吉田山田の初のシングルコレクションアルバム。全11曲収録。歌詞カードには各楽曲ごとにメンバーそれぞれの短いコメントが寄せられています。

 吉田結威(G&Vo)と山田義孝(Vo)の男性デュオ、吉田山田。2013年末にリリースされた「日々」がNHKみんなのうたに起用され話題となり、一躍お茶の間に知名度を広げた彼ら。本作はその「日々」(最新シングル)を1曲目に据え、デビューの2009年から現在に至るまでにリリースしてきた10枚のシングルA面曲を時系列を遡る形で収録し、最後に新曲の「逢いたくて」を配置した全シングル+αの内容となっています。
 ブレイク曲「日々」、そして新曲の「逢いたくて」はしっとりとしたアコースティックバラードなので、これが彼らの十八番の作風なのかと思っていたのですが、この2曲にサンドイッチされた過去の9曲のシングルはどの曲もかなりポップスに振り切った楽曲で、これが本来の彼らの持ち味なのでしょうか。「魔法のような」では島田昌典を共同アレンジャーに起用したのを筆頭に、櫻井正宏、前嶋康明、安部潤、田川伸治などの、日本のポップスシーンを影に日向に支えるミュージシャンの起用も合わせて、潤沢に音を重ねこんだトラックメイキングは00年代後半以降のポップスシーンの集大成といった趣も。

 作詞作曲面では、彼らの年代的にはプロフィールを見る限り(90年代末で高校生)、ゆずやコブクロを聴いて育った世代と考えられるのですが、初期のゆずほどフォークに特化しているわけでもなく、コブクロのように巧みな比喩表現等で解釈をリスナーの想像力に委ねるところもなく、良い意味で「世間擦れしていない青年」のモノローグをポップなメロディーに乗せました、といったところ。ボーカルも二人共親しみやすい声質の持ち主ですね。前述の楽曲コメントの中では『爽やか青春センチメンタルポジティブボーイズ』を自称(?)したりもしていますが、そんなに露骨なまでの超前向きソングはないと思うのですが(笑)自らの内なる領域に踏み込んだ「メリーゴーランド」や、葛藤しながらも走り続ける人生の様を歌った「ガムシャランナー」など、一言でポジティブといっても多角的なアプローチが散見されるあたりは特筆すべき点だと思います。

 5年間の活動をまとめたベスト盤として、アルバムの曲も何曲か入れても良かったと思いますが、まだオリジナルアルバム3枚というキャリアを考えると、シングル+新曲で50分と少しのコンパクトな構成にしたことで吉田山田の入門編としてはちょうど良いボリュームの作品。「日々」以外も奇を衒わない作風で、広い世代のリスナーからの支持を得られる可能性は十分予感できるアーティストだと感じました。