
代表曲「ナキムシのうた」「愛してる」「サヨナラの向こう側」…等々、世間一般が抱いている「風味堂=メロウで優しい曲調」というイメージ。そこから新たな一歩を踏み出した「ロック感や遊び心がふんだんに盛り込まれた」(CDの帯の文章より)楽曲を揃えたという本作。前作「風味堂5〜ぼくらのイス〜」は、テーマが「夢」ということもあり、確かに真面目で優等生的なアルバムでしたが、そんな前作がかなり好きだった筆者としては、本作の「アイドルとつきあい隊」やら「男子んぐ喰ぃ〜ん」といったタイトルを見ただけでかなり不安な気持ちになったのですが(苦笑)、蓋を開けてみれば、インディーズ時代を想起させるアッパーな「“TIME”」を筆頭に、ピアノトリオでパンクっぽさを打ち出した「大空へ」、構成に凝った「SPACE TRAVELERS」、先述のタイトルで不安になった2曲も歌詞こそブッ飛んでいるものの、素直に身体が乗れる好印象の曲が多いです。それだけではなく、「記憶の朝」や「心」、「帰り道」などでは、パブリックイメージに沿った姿も見せており、アルバム全体で挑戦的なアプローチを見せつつ、聴き手を置き去りにしないトータルバランスも良好。
サウンド面に関しては、味付け程度にアコギやシンセの音が加わっていますが、基本的な軸はピアノ+ベース+ドラムスのスリーピースの演奏という点では前作を踏襲。出てくる音色が統一されているという意味では飛び抜けて強烈なインパクトを示す曲はないですが、何度か聴いていくと詞曲の世界に入り込んでいける、という意味ではこれも前作同様の「スルメ的」なアルバムと呼べるかも。ただし、ボーナストラックとして最後に収められた、博多地下街50周年誕生祭テーマソング「博多地下っぱ音頭」はホーン隊を派手に投入な上に、「博多弁で音頭」という強烈な曲調なので、別格として切り離して聴くべきでしょう(笑)。
DVDのメインは昨年12月19日、渋谷のロック喫茶「B.Y.G」にて開催されたワンマンライブの模様を収録。その内容はステージを前半・後半に分け、インディーズ時代も含め今までリリースしてきたシングル曲を時系列順に並べて演奏するという、「ALL SINGLES LIVE」。曲順に一切の工夫はナシなので(笑)彼らのシングル史の後半にあたる終盤はバラード続きだったりと、セットリストとしてはどうかな?という場面もあり、演奏ステージの都合上、三人が若干余裕のない足場でカメラワークも大味だったり、ライブ常連の曲と久々に演奏したと思わしき曲のパフォーマンスの明らかな差など、色々と気になる点はあるのですが、ほぼベストアルバム「エレベスト」のDISC-1の曲順と同様ということで、「ライブ盤エレベスト」というコンセプトで楽しめる映像作品だと思います。
CD単品の通常盤に+1,000円程度(ネット通販では割引が適用されるのでもっと安い)で内容充実のDVDが付いてくるという、かなり良心的な価格設定なので、お薦めはやはり初回限定盤。本編CDの楽曲バランスの良さで「エレベスト」後の1枚、としてもいけると思います。
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