BEGIN7 2015年3月18日に、BEGINのデビュー25周年を記念する8アイテムと共に発売された「BEGINシングル大全集 25周年記念盤」。「CD Review Extra」では三回に分けて本作の全曲をレビューしている真っ最中。今回はDISC-2に収録された、1998年6月発売の「未来の君へ」から2004年12月発売の「君を見ている」までの全14曲をご紹介。「続きを読む」からご閲覧ください。
「BEGINシングル大全集」シリーズ全収録曲レビュー・中編
 ※特に表記のない場合は作詞・作曲・編曲:BEGIN。


1.未来の君へ
 1998年6月24日発売、15thシングル。
 9thアルバム「Tokyo Ocean」と同時発売。編曲とプロデュースは朝本浩文が担当。同アルバムはほぼ全てメンバー三人の演奏で成り立っている作品なのだが、ラストに収録されたこの曲のみは生バンドを招いて本編を壮大に締めている。
 ボーカル比嘉栄昇に長男が誕生し、「親から子へ」「次の世代へ」といった輪廻を表現したという力強いバラード。この辺りからメッセージ性を込めた作品が増え始める。
 2008年発売の「BEGINライブ大全集」では、オルガンが荘厳に鳴り響く2003年末のライブバージョンが収録されている…が、「大げさなことをしているな」というメンバーのコメントが同アルバムブックレットに寄せられていた(笑)。

2.防波堤で見た景色
 1998年8月12日発売(「BEGINシングル大全集」2005年盤のブックレットの発売年は誤り)、16thシングル。
 アルバム「Tokyo Ocean」からのシングルカット。アルバムではいきなり歌から始まるが、シングルでは4小節アコギのイントロが追加された別バージョン。FM802でヘビーローテーションされ、大阪方面で特に人気の高い曲のようだ。「声のおまもりください」以来久々にオリコンTOP100内にランクインを果たしている。
 生まれた土地を離れ、忙しい街で暮らす「俺」と、久々に会った変わらない「おまえ」。都会の荒波に揉まれる自分への葛藤や、故郷への郷愁が綴られたアコースティックバラードで、「夢と現実はいつも少し違う」等のフレーズは、当時二十歳そこそこの筆者の心にダイレクトに響いた。そういった経緯もあってか、当時も今も愛聴している曲である。
 余談であるが、だいたいアーティスト写真はアロハシャツで笑顔、のパターンが多いBEGINだが、この時期はジャケットに身を包み、シリアスな表情のモノクロ写真が多い。彼らの歴史の中では異色の時代であるのかも。

3.愛を捨てないで
 1999年10月21日発売、17thシングル。
 TBSの昼ドラ「温泉へ行こう」シリーズ第一作目の主題歌。作詞はサンプラザ中野の手によるミディアムナンバー。
 温泉旅館を舞台にしたドラマで、特に歌詞にタイアップを意識したフレーズは見受けられないが、ジャケット写真は銭湯の富士山の絵をバックに、湯船の前をステージにして演奏するメンバー三人、というギャグのような(笑)構図であった。前年までシャープな顔立ちだったギターの島袋優がこの頃から急激に貫禄が付き出したのは何かあったのだろうか(余計なお世話)。
 この年は3月にバラードベスト、10月に本作と、かなり大人しめのリリース活動であった。オリジナルアルバム未収録。

4.涙そうそう
 2000年3月23日発売、18thシングル。
 デビュー10周年を記念するシングルとして、1998年に森山良子に楽曲提供をした曲をセルフカバー。作詞は森山良子、編曲は萩田光雄。翌年に夏川りみが新たにカバーしたことで知名度を上げた。
 BEGIN史上初のマキシシングル。収録曲は沖縄テイストの「かりゆしの夜」、喜納昌吉のカバー「花」のライブ音源と、この年以降の彼らの指標となった楽曲達が収められている。結果的にかもしれないが、ある種の転換点だったのかもしれない。なお、オリジナル盤では比嘉栄昇の顔のどアップという濃いジャケット(笑)だったのだが、後にメンバー三人を引きで撮った無難な写真のものに差し替えられた。
 代表曲ということもあり、三線バージョン、三線ウチナーグチバージョン、メンバー三人のみの演奏バージョン、一五一会バージョンなど、様々なバリエーションが存在する。

5.風よ
 2000年10月18日発売、19thシングル。
 タイトルは「かじよ」と読む。
 同年7月に発売された、オリジナル島唄アルバム「ビギンの島唄 オモトタケオ」に新良幸人作詞のウチナーグチバージョンで収録されていた楽曲を、BEGINが標準語バージョンに書き換えてシングルカット。
 数あるオリジナル島唄の中でも哀愁が色濃く出た作品である。編曲は平山文一と共同。

6.灯り
 2001年10月24日発売、20thシングル。
 この年はNHK朝ドラ「ちゅらさん」(BEGINもチョイ役で出演)をはじめ沖縄ブームが巻き起こった年でもあるのだが、音源制作面においては彼らは波に乗っかることもなくマイペースであり、シングル1枚のみのリリースとなった。
 久々の新曲はストリングスアレンジに今野均を迎えた、切ないメロディーのバラード。帯に「月の光のラブソング」と書かれており、遠く離れた人への想いを歌った曲のようにも思えるのだが、発売直前にアメリカで9.11のテロが起こり、この曲の歌詞の一節が一人歩きしたことがきっかけとなり、「ライブでは歌わない曲」という封印楽曲になってしまったが、2010年のデビュー20周年ライブの時には短縮バージョンながら演奏されている。11thアルバム「MUSIC FROM B.Y.G」には再録音バージョンで収録。

7.ボトル二本とチョコレート
 2002年2月27日発売、21stシングル。
 通称「ビギンのがんば労歌」。メンバーの出身地である石垣島にある石垣第二中学校の吹奏楽マーチングバンド部(島袋優が在学中に所属)と共に、同校の体育館でレコーディングされた異色の作品。アレンジは梅口敦史(BLACK BOTTOM BRASS BAND)、大浜浩一(同中学校吹奏楽部顧問)との共同名義。
 BEGINと同年代で夭折したドラマーの盛山達也に捧げた歌、ということでしんみりするフレーズも登場するが、基本的には陽気なブラスアレンジが全体を引っ張る、明るい酒宴ソング。「俺らおんなじ話で何年笑うだろう」というくだりは、青春時代を共に過ごした仲間同士がいれば頷ける名フレーズ。ライブでの定番ソングとして親しまれている模様。

8.島人ぬ宝
 2002年5月22日発売、22ndシングル。
 7月発売のオリジナル島唄アルバム「ビギンの島唄 オモトタケオ2」の先行シングルとしてリリース。
 石垣島の中学生に「島への想い」を書いてもらったことをヒントに作り上げたということで、一番は「この島の空」、二番は「この島の海」、そして三番は「この島の歌」をテーマに「大切なもの」をゆったりとしたバンドサウンドを従えて歌い上げている。
 オリコンチャートでは最高位が47位。その後、ロングヒットを続けるものの売上自体は10万枚弱と「恋しくて」「声のおまもりください」には及ばず。だが、この曲でこの年の紅白歌合戦に初出場、一般的にも「BEGIN=島人ぬ宝」というイメージを広く知れ渡らせたという意味で、記録より記憶に残る曲とはまさにこの曲のことだと思う。文句なしの彼らの代表曲。
 翌年発売のカバーアルバム「ビギンの一五一会」ではシンプルな味付けでリメイクされた。

9.オジー自慢のオリオンビール(エイサー・バージョン)
 2003年2月20日発売、23rdシングル。
 原曲は前年発売の「オモトタケオ2」に収録。タイトル通り沖縄のビールメーカー・オリオンビールのCMソングとしてオンエアされ、沖縄限定でのシングルカットに際してサビから始まる構成や、最後に歌詞を追加するなどの変更と、創作太鼓集団・琉球國祭り太鼓をフィーチャーした、より賑やかなアレンジにリメイクしてリリースされた。なお、CDジャケットは色違いで三種類あったそうである。限定販売だったが、一応、ネット販売で日本全国にも行き渡るようにはなっていた。
 なお、カップリングは姉妹作的な「オバー自慢の爆弾鍋」(「オモトタケオ2」収録のバージョン違い)。また2004年には「オジー自慢のオリオンビール 〜旨口厳選RE-MIX〜」というリミックスCDが発売、さらに2010年の「オモトタケオ3」にはアンサーソングたる「アンマー我慢のオリオンビール」が収録と、やたら派生作品の多いシリーズになっている。

10.その時生まれたもの
 2003年6月18日発売、24thシングル。
 沖縄電力30周年を記念してのイメージソングとして制作された。電気=人々を照らす光というお題目だったのか、歌詞は「街灯り」「瞬き輝き」といったフレーズを盛り込んだ仕上がりに。また、ヤイリギターと共同開発した創作楽器「一五一会」が演奏に用いられ、以後、彼らのレコーディング、ライブでの定番楽器となる。翌月のセルフカバーアルバム「ビギンの一五一会」にもバージョン違いで収録。
 ボーカルは島唄を意識した節回しでレコーディングされたが、比嘉栄昇によると作為的過ぎて後から反省したとのこと。2008年の「BEGINライブ大全集」では素直な歌い方で披露された2005年のライブバージョンが収められている。

11.いつまでも
 2004年2月25日発売、25thシングル。
 久々にリリースされた感のあるシングルだが、一昨年の「島人ぬ宝」、昨年の「一五一会シリーズ」で、完全に音楽シーンに確固たる地位を築いたことで自信が生まれたのか、奇を衒わずに王道、シンプルながらバンド感のあるバラードが世に放たれた。同年夏の12thアルバム「Ocean Line」にも当てはまる傾向を感じたが、良い意味で緩く、温かく、朗らかな、BEGINのパブリックイメージに忠実なナンバーである。
 なお、本シングルで初めてPV収録のDVD付きの初回限定盤がリリースされた(CD収録内容は同一)。

12.ユガフ島
 2004年2月25日発売、25thシングル両A面曲。
 映画「星砂の島、私の島」主題歌として書き下ろされた。歌詞に島言葉を使うなど、通常シングルながら「オモトタケオ」路線の楽曲であり、2011年の島唄ベスト「オモトタケオのがベスト」にも収録された。ストリングスアレンジは今野均。
 ピアノ、三線、ストリングスを中心に奏でられる美しい旋律のバラード。発売当時は両A面の2曲目ながら地味な曲…という印象しかなかったのだが、近年聴き返してみて、その素朴さに個人的に惹かれた。また、本シングルには同曲の一五一会バージョンも収録されている。

13.誓い
 2004年8月11日発売、26thシングル。
 テレ朝「熱闘甲子園」エンディングテーマということで、真夏の高校球児を熱く盛り上げる…という曲では勿論なく(笑)、目標に向かって少しずつ進んでいくその背中をそっと押すような優しさの中に力強さを感じさせる熱唱型バラード。だいたいBEGINのバラードはギターがメインになるのだが、この曲は上地等のピアノが楽曲の前半部分をリードする、彼らにしては珍しいタイプの作品だと思う。オリジナルアルバム未収録。
 この年は同時期にアテネオリンピックが開催されており、そちらに話題を完全に持っていかれて甲子園は注目されなかった…とメンバーは15周年時のインタビューで嘆いていた(苦笑)。
 なお「BEGINシングル大全集」「同特別盤」の初回特典DVDにはこの曲のPVが収録。スタジオでメンバーとストリングス隊が演奏するオーソドックスな映像作品だが、滅多にPVを商品化しないBEGINなのでこのDVDはかなり貴重。また、2008年の「ビギンの一五一会2」では軽快なアレンジにガラリと変更してリメイクされている。

14.君を見ている
 2004年12月16日発売、27thシングル。
 我が子を見守る父親目線で描かれ、自分が子供だった頃の父親への想いも綴られる、前作「誓い」とはまた違ったタイプの優しさ溢れるバラード。シンプルな演奏に間奏では三人のコーラスが重なる、地味ながら「これぞBEGIN」と思わせる暖かいナンバーである。TBS系アニメ「ジパング」エンディングテーマ。
 オリジナルアルバム未収録。「ビギンの一五一会2」にも収録されたが、根幹のアレンジを尊重したリメイクに仕上がっている。


 以上、DISC-2、全14曲の収録曲のレビューでした。なお、「涙そうそう」と「風よ」の間に、「空に星があるように」の再発シングル(カップリング違い)がリリースされていますが、あくまで再発と判断し、シングル枚数のカウントからは除外させていただきました。
 この時代はまさに「BEGINブレイク期」。「涙そうそう」「島人ぬ宝」といった看板楽曲、「防波堤で見た景色」「ボトル二本とチョコレート」「オジー自慢のオリオンビール」「誓い」などの人気曲のみならず、オリジナル島唄を軸に、日本の音楽シーンの中にBEGINという存在を一般層にも認識されるに至った5年間だったと思います。通常の作品以外も「オモトタケオ」に「一五一会」と、意欲的に制作活動を続けた会心の時期ではないでしょうか。DISC-1の時期からのファンの筆者としては、人気が出たのは嬉しいけどだんだん彼らが遠くなっていくなぁ、と若干贅沢な寂しさ(?)も感じていたことをここに告白いたします(苦笑)。
 さて、「シングル大全集」全曲レビュー、残るDISC-3の8曲、2006年から2013年までのシングルも近日中にエントリーする予定です。同時に「25周年記念盤」の簡単なレビューも行おうと思っています。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。