sakaiissyo 2015年2月4日発売、さかいゆうのコラボレーション・ベストアルバム。新録3曲(うち新曲は2曲)を含む全14曲収録。初回限定生産盤には昨年6月に開催された渋谷公会堂でのライブ映像を抜粋して収録したDVDが付属。ジャケットイラストはリリー・フランキーの手によるものだそうで、これもコラボの一環だとか。

 所属するオフィス・オーガスタの面々の中でも、事務所内外にわたって幅広く他のアーティストの楽曲に参加したり、プロデュース等を手掛けているさかいゆう。そんな彼がメジャーデビュー5周年を迎えるのを機に企画されたという今回のコラボベストですが、本作の収録範囲はインディーズ時代にリリースしたアルバムからの楽曲も含まれています。ほとんどの曲は彼と共に制作を行ったアーティスト側のCD作品に収められていただけだったので、さかい名義のアルバムとしては初収録の作品が大半。既に20曲を超えるというコラボ作品の中から時系列順に11曲+新録3曲を並べた構成になっています。

 そんな彼の「コラボの歴史」が詰まった本作、一聴してすぐ気付くのは、前半はKREVA、マボロシ、KOHEI JAPAN、そしてRHYMESTERと、やたらラッパーやトラックメイカーとのタッグが多い、という点。緩急が分かりやすいという点でボーカル+ラップの組み合わせはコラボの定番とも思えるのですが、コラボする両者ともに作詞作曲に関わっているということもあり、feat.される側もゲスト的な参加ではなく、二人三脚で作り上げている印象を強く感じました。
 聴き進めていくと、中盤のオーガスタオールスターズユニット・福耳をプロデュースした「LOVE & LIVE LETTER」前後からは、シンガーとのタッグが中心。こちらの方では楽曲作りには関わらず、純粋にさかいがボーカリストとして参加した「いつもどこでも(冨田ラボ)」「Hold You(Ovall)」、両者イーブンに歌い回す「ピエロチック(feat.秦基博)」「Life is(feat.Emi Meyer)」の2パターン。後者2曲は最新アルバム「Coming Up Roses」に収録された作品なのですが、ハモリの効果も相俟って、本作中で最も「さかいゆうといっしょ」している感(?)が感じられる好作品なので、選曲されたのは個人的に嬉しいポイントでした。

 新録作品は原曲よりも音数を減らし、十代半ばの女性ボーカルグループ・Little Glee Monsterをフロントに出した「薔薇とローズ」、完全単独制作のオケにライブオーディエンスのハンドクラップを取り込んだ「Mirror」、トランペット奏者・日野皓正のソロを大々的にフィーチャーした「闇夜のホタル」の以上3曲。中でも「Mirror」は多重録音アルバム「ONLY YU」を彷彿とさせる作品でお薦め。この曲のように、基本的には全部自分で素材を用意できてしまう彼なのですが、枠に収まることなく、積極的にコラボを通して外部開拓を展開していく姿には好感が持てます。これらのコラボで得たものを今後のオリジナルにどう反映してくれるのか、「次」が楽しみなアーティストの一人ですね。