begin 沖縄・石垣島出身の幼馴染みで結成されたバンド、BEGIN。メンバーは比嘉栄昇(Vo&G)、島袋優(G)、上地等(Key)の三人。「イカ天」出演をきっかけに注目を浴び、シングル「恋しくて」で彼らがデビューしたのが1990年3月21日。今年2015年は彼らにとってのメジャーデビュー25周年となります。
 既に色々なイベントやリリースが控えているようですが、本ブログでも25周年を勝手に(?)祝って、今年はBEGIN関連のコンテンツに力を入れていこうと思っております。というわけで、まず今回の「CD Review Extra」では、彼らがこれまでにリリースしてきたベストアルバム全8作を一挙にレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
デビュー25周年記念・BEGIN全ベストアルバムレビュー

FAN -LITTLE PIECES-
BEGIN1
 1995年3月25日発売、初のベストセレクションアルバム。全14曲収録。
 1992年にテイチクからファンハウス(現・アリオラジャパン)へ移籍。そのファンハウス期にリリースされた3作のオリジナルアルバム「THE ROOTS」「MY HOME TOWN」「Chhaban Night」を中心にした選曲で、デビューシングル「恋しくて」はレーベルの関係か新録音で収録された。坂本九のカバー「見上げてごらん夜の星を」は本作のみに収録。
 選ばれた曲はアルバム曲が中心。アルバム未収録の「さよなら、そしてありがとう」や、ノリの良い「誰かが君を呼ぶ声が」「OKINAWAN SHOUT」などの明るめのシングル楽曲の収録は見送られ、やけに渋いミディアム〜バラード群が並ぶのは意図的なものだろうか。「この街はなれて」「幸せのBLUES」「あの空の下で」といったアルバムの佳曲のセレクトは嬉しい一方、この時期の彼らの音楽性をまとめた一作とは言い難く、少なくとも入門編としてはハードルの高い、評価の難しいベストである。
 なお、歌詞カードは折り畳み式の1枚モノなのだが、裏面に手作りパンを創作するメンバーの奮闘記が写真入りで入念に綴られている(笑)。


CM COMPILATION Twelve Steps -声のおまもり-
BEGIN2
 1996年10月23日発売、これまでにCMソングとして起用された楽曲を収めたコンピレーションアルバム。全12曲収録。
 同年夏に発売したシングル「声のおまもりください」がアステルPHSのCMソングとなり、久々のスマッシュヒットとなったのを受けて企画されたと思われる作品。初期テイチク時代の「恋しくて」「ほほ笑みに続く道」はオリジナル音源で収録されている。本作にのみ収録されている曲は「Easy Going」「今ならきっと」の2曲。
 本作制作にあたって、テイチク、ファンハウス版権を問わずに新たに5曲が再録音(1996 NEW RECORDING)された。「Sunny Afternoon」のようにオリジナルのテイストを尊重した曲から、「YOU」「誰かが君を呼ぶ声が」のようにガラリと印象の変わるアレンジで再構築した曲まで幅広く、アルバム全体に多彩なカラーを施すことに一役買っていると共に、彼らの成長もうかがえる1枚。
 結果的に本作を最後にファンハウスから古巣テイチクへと再移籍するが、ファンハウス時代の総括以外に、デビューからこの時点までに彼らが紡いだポップスとしての音楽性の広さの集大成ともいえる名盤で、90年代のBEGIN入門には最適。


BALLADS
BEGIN3
 1999年3月25日発売、タイトル通りのバラードセレクションアルバム。全16曲収録。
 デビューアルバム「音楽旅団」から、当時の最新アルバム「Tokyo Ocean」まで、約10年間の作品群の中から選ばれたバラードを時系列順に収録。テイチクからの発売だがファンハウス時代の曲も4曲セレクト。すべてが既出のオリジナル音源であり、新曲などは収録されていない。
 「恋しくて」「声のおまもりください」の二大ヒットをはじめ、代表的なバラードシングルを収めている他、初期テイチク時代の「追憶のシアター」「失われたワルツ」、ファンハウス時代の「満天の星」、テイチク復帰後の「Smile」など、隠れた名曲も顔を見せるのが嬉しい。エリック・クラプトンの「Wonderful Tonight」のカバーで静かに始まり、クレイジー・ホースのカバー(日本語詞に翻訳)「もう話したくない」で締める構成も良く、静かな夜にゆっくり聴きたいアルバムである。
 ちなみに発売から一年間限定で、CDの帯の応募券をハガキに貼って送ると、自分の誕生日にBEGINから本作にも収録されている「Birthday Song」の一節が書かれたバースデーカードが届く、という特典があった。


BEGIN BEST 1990-2000
BEGIN4
 2001年2月21日発売、精力的に活動したデビュー10周年イヤーを締めくくる時期に発売された、「初の完全ベスト盤」(CD帯より)。全16曲収録。2002年末にはDVD-Audio盤での発売もされていた。
 テイチクの公式サイト等で、好きな曲とその曲にまつわるエピソードを一般募集し、それを参考に選曲が行われたとのこと。歌詞ブックレットの終盤に選出されたエピソードが掲載されている。なお最後に収録されている「おつかれさん」は当時NHKみんなのうたでオンエアされた新曲で、本作のみの収録。
 デビューから10年間の(ほぼ)時系列順オールタイムベストだが、初期テイチク時代(1990〜1991年)が7曲、ファンハウス時代(1992〜1996年)が2曲と、年代的にかなり偏りが見られる。テイチク復帰後(1997年〜)からはシングル曲のみの選出だが、「防波堤で見た景色」「涙そうそう」などの人気曲がセレクトされており、この時期に関しては文句なしの選曲。
 リリース前後の沖縄ブームでBEGINの存在がクローズアップされ、翌年「島人ぬ宝」のヒットも手伝って、全国的に知名度を上げた影響もあり、オリコンチャートのカタログ(旧譜)ロングセラーランキングで長い時期上位に顔を見せていた。発売から15年近く経過した現在の立ち位置としては「初期ベスト」といったところか。


BEGINシングル大全集
BEGIN5
 2005年2月23日発売、デビュー15周年を直前に控えた時期にリリースされたシングルベスト。全28曲収録。
 デビューシングルから最新シングルまでを発売順に網羅したCD2枚組。彼らの音楽性の変遷が辿れるので初心者向けにも適しており、「さよなら、そしてありがとう」「愛を捨てないで」「誓い」「君を見ている」がアルバム初収録、「誰かが君を呼ぶ声が」「OKINAWAN SHOUT」「風よ」「灯り」「オジー自慢のオリオンビール(エイサー・バージョン)」「その時生まれたもの」がシングルバージョンでアルバム初収録と、旧来のファンにも嬉しい内容になっている。
 歌詞ブックレットにはメンバーの発言を引用したライターの手による1曲ずつのライナーノーツが掲載。楽曲誕生当時の裏話などが事細かに綴られ、これまでの彼らの歩みを振り返ることができる。聴く+読むことでBEGINの歴史を知ることができる、まさに決定版ベストアルバム。
 初回限定特典としてDVDが付属。本作に収録された「誓い」他、近年の楽曲のPVやライブ映像が楽しめる。


BEGINライブ大全集
BEGIN6
 2008年3月26日発売、資料用も含めた過去のライブ録音の中からセレクトした、オムニバスライブアルバム。CD2枚組全30曲(うち1トラックはMC)収録。
 一番古い音源が1993年7月、一番新しい音源が2007年12月と、幅広い年代からの選曲。DISC-1は「涙そうそう」「三線の花」「恋しくて」「オジー自慢のオリオンビール」等、代表曲中心のベスト選曲、一方のDISC-2は「いつものように」「東京Ocean」「イラヨイ月夜浜」「おっちゃんタクシー」など、アルバム収録曲中心の裏ベスト的な内容で、それぞれのディスクで明確に性格が異なる。また、歌詞ブックレットには本作収録音源をメンバーが聴きながら感想を言い合う、1曲ごとの座談会的ライナーが掲載。
 メンバー三人のみの演奏、バンド演奏、ブラスチームや祭り太鼓隊といった大所帯を従えての演奏など、年代を前後しながら構成されており飽きさせない。ジャケットイラストやボックスケースなど「シングル大全集」のフォーマットを踏襲しつつ、より踏み込んだ内容のアルバムであり、「〜大全集」を聴いてもっと深くBEGINの音楽に触れたい人向けで、特に隠れた名曲を見つけられるDISC-2はお薦めである。


BEGINシングル大全集 特別盤
BEGIN7
 2011年2月16日発売、先述の「BEGINシングル大全集」(以下、「15周年盤」)発売以降にリリースされたシングルタイトル曲を追加して収録した3枚組ベストアルバム。全34曲収録。高音質SHM-CD仕様。
 DISC-1、2の内容は15周年盤と同一。追加の6曲を収めたDISC-3には1、2と異なるリマスタリングエンジニアが起用された。「ここから未来へ」「僕らのこの素晴らしき世界」がシングルバージョンとしてアルバム初収録となっている。追加楽曲に関してもブックレットに15周年盤の時と同じライターのライナーノーツが追加されたが、制作秘話というよりも純粋に曲のレビューといった側面が強調されており、15周年盤をそのまま再録したDISC-1、2のライナーとはやや雰囲気が異なる。
 こちらにも初回限定特典のDVD付。15周年盤との違いはメイキングがカットされ、「三線の花」「僕らのこの素晴らしき世界」のPVが収録された点。あらゆる意味で15周年盤のバージョンアップ版であり、これからBEGINを聴くなら断然こちらがお薦め、だったのだが…(以下後述)


ビギンの島唄 オモトタケオのがベスト
BEGIN8
 2011年7月20日発売、「オリジナル島唄」のみで構成されたコンセプトベスト。全16曲収録。
 オモトタケオとはBEGINが島唄を作る時にだけ現れる心の住人の名前とのこと。2000年から始まったミニアルバム「ビギンの島唄 オモトタケオ」シリーズ三作からの選曲と、通常シングルでリリースされた「三線の花」「ユガフ島」なども加わり、彼らの人気に火をつけた2000年代の集大成とも呼べる作品。
 収録音源はすべて既発のものであり、本作用の新録音などはされていないものの、彼らの代名詞的な「島人ぬ宝」「涙そうそう(三線バージョン)」を筆頭に、オリオンビールシリーズや「竹富島で会いましょう」「かりゆしの夜」「オバー自慢の爆弾鍋」等、ライブの定番曲などは軒並み選曲されており、「BEGINの島唄ファン」の最大公約数に応える内容。ポップなイラストのジャケットも手に取りやすい。なお、本作をプライスダウンした期間限定盤が2015年3月18日に発売される予定。


 以上、BEGINの全ベストアルバムレビューでした。
 数あるベストアルバムの中で入門編を選ぶとすれば、彼らの代表曲である「恋しくて」「声のおまもりください」「涙そうそう」「島人ぬ宝」「オジー自慢のオリオンビール」「三線の花」、そして「笑顔のまんま」。これらの曲が全て収録されているアルバムは現時点では「BEGINシングル大全集 特別盤」のみで、こちらをお薦めしたいのですが、今年の3月18日にはさらに「特別盤」以降のシングル(と言っても二曲だけですが)を収録した、その名も「BEGINシングル大全集25周年記念盤」がリリースされるということです。5年ごとにアップデートするなよ!というのが正直な感想なのですが(苦笑)、これから聴きたいリスナーの方にはせっかくなので最新曲まで入っている「25周年記念盤」を是非手に取っていただければ、と思います。ちなみに個人的には「CM COMPILATION Twelve Steps」の時期にファンになったのでこちらもイチ推し。
 前述の3月18日には他にも様々なCD、DVDが発売され、デビュー25周年の3月21日にはメンバーの故郷である石垣島でワンマンライブが開催されるということ。筆者の希望としては、気がつけば2年近くシングルがリリースされていない(アルバムは2年半近く)ので、今年は久々の新曲発売を期待しつつ、本レビューを締めさせていただきます。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。