
オリジナルアルバムは7年振り、更にデビュー30周年記念盤の本作、本編扱いになるのはDISC1のほうですが、収録全16トラックのうち、3〜5トラック、10〜14トラックの約22分間をいわゆる「QUIT30」組曲としてカテゴリー。組曲で構成された彼らのアルバムといえば、1988年の「CAROL-A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-」が思い浮かびますが、あちらがイギリスの少女を主人公にしたストーリー性のある楽曲群であるのに対し、今回は「地球や時代を俯瞰する」といった、ここ数年の活動でのTMの「宇宙からの潜伏者設定」を踏まえた散文的(?)な内容であるなど、受ける印象がかなり異なります。シームレスで繋がった楽曲中にインストの「Entrance Of The Earth」や女声スキャットがメインの「The Beginning Of The End III」が挟まれる辺り、バリエーションでは「CAROL」よりも幅があるような気がしますが、歌詞の解釈が難解なのは、小室哲哉の手による文脈飛びまくりな歌詞が原因でしょうか(苦笑)。これはライブを体験すれば理解できるのかもしれません。
組曲以外に目を向けると、特筆すべきはアルバム用に書き下ろされた新曲達。リードトラック的な「Alive」、往年のマイナー調TMの十八番「Mission to GO」、本作唯一の木根尚登作曲「STORY」、そして松井五郎が1985年以来29年振りに作詞を担当したラストナンバー「If you can」。これらの4曲がそれぞれに「TMらしさ」を感じさせる好楽曲で、ファンとしてはこういう曲を待っていた!!といったところ。また、サウンド面では基本的には「QUIT30」組曲は生演奏+打ち込み、他の曲は打ち込みメイン+生ギターといったアプローチなのですが、どちらがどちらを食うこともなく、また「DRESS2」で見せていたEDM的要素も若干後退しており、彼らの近年の作品の中では聴きやすいアルバムであると思います。
DISC2は小室が2011年に国連のチャリティープロジェクト用に書き下ろした「Always be there」のTMバージョンをトップに、「Alive」の長尺リミックスをラストに配置し、その間に「CAROL」組曲の一部をリ・レコーディングした「CAROL2014」として4トラックで構成した全6トラック。これらの組曲、構築し直した、というよりも、原曲に忠実な生演奏の再現の上に現代的なエッセンスを注入した、という趣き。オリジナルとの比較では、特に原曲よりも中性的な面が増した宇都宮隆のボーカルが聴きどころでしょうか。こちらのディスクは単品販売はされていないので特典扱いなのかもしれませんが、昔のTM、特に「CAROL」に思い入れのあるリスナーには聴いて損無しの内容でしょう。
20周年時のオリジナル作と名乗りながら半分は既発曲のリメイクだった前々作、小室哲哉が明らかにお疲れモードだった2007年の前作(翌年秋に逮捕…)と、期待を肩透かしされる内容が続いていた(苦笑)TMのオリジナルアルバムでしたが、本作は久々に小室の音楽への情熱、TMに賭ける本気度を実感できる「熱い」アルバムでした。
コメント
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ただ、最初はちょっと難解な印象であまりピンと来なかったのですが
(個人的には、「Self Control」「humansystem」の王道路線を期待していたもので)、
それでも、何回か聴いていると、だんだんと魅力が分かってきて、
久々に小室さんの本気が伺える聴いていて嬉しくなるアルバムだったと思います。
Disc-2の「CAROL」のセルフカバーもいいですね。
どの曲も色褪せない名曲ばかりで、改めて「CAROL」の魅力を堪能できました。
「QUIT30」組曲は難解ですよね。歌詞が俯瞰的過ぎて何のメッセージだ?!と考えているうちに次の曲が始まってしまう感じで(笑)。
「CAROL」組曲と同じ路線に走らず、分かり易さを排除した挑戦という意味では、リスナーを良い意味で突き放す(笑)非常にTMらしい作品ではあると思います。
DISC2も含めて「久々の会心作」という印象のアルバムですね。