COLORFUL 2014年11月26日発売、辛島美登里通算15枚目となるオリジナルアルバム。チャリティーシングル「手をつなごう 〜ひとりぼっちじゃない〜」のニューバージョン、中川晃教とのデュエット「つよく、つよく…」、代表曲「サイレント・イヴ」「あなたは知らない」のセルフカバーバージョンを含む全11曲収録。

 オリジナルの前作「Bouquet Garni」から7年、ソニーからユニバーサルへとレーベルを移しての本作は、「25周年アニバーサリーアルバム」とのこと。確かに1989年にファンハウスからデビューしてから今年でちょうど25年ですが、その前の数年間にアニメ関連の歌をリリースしていた年数はカウントされていないようです^^;。まあそれはともかく(笑)久し振りのオリジナルアルバム、プロデュースは冨田恵一。クレジットによればアレンジ、全楽器の演奏、プログラミングやミックスまで彼自身が手がけているということで、様々なアレンジャーの手によってバラエティ豊かな装いだった前作とは対照的。ほぼ全ての作詞作曲を手掛けた(「名前のない空」のみ犬飼伸一が作曲)辛島美登里と、彼女の作品に彩りを施した冨田恵一の二人三脚的な作品と呼べると思います。
 アレンジ面では冨田氏らしい、穏やかでお洒落な音使い、生に近い打ち込みのドラム、時にストリングス系の音色を絡めた楽曲が多い印象。セルフカバーに関しては「あなたは知らない」はともかく「サイレント・イヴ」はもう何度目のリメイクか、という感じなのですが(苦笑)、今回は二曲ともちょっと不穏なコードを使ったり、ジャズ風な進行に変えてみたり…と、今までにない角度からのアプローチが新鮮でした。

 辛島美登里の作風は本作についても従来のイメージを裏切らず、持ち味の手堅く地味ながら流麗なメロディーで聴かせるセンスは制作上でのブランクを感じさせません。通しで聴く1回目はインパクトに特化した看板曲のようなものがないので「地味だな〜」という感想になるのですが、繰り返して聴いていくうちにメロディーの良さがリスナーの耳に染みわたってくるような曲が多数です。
 一方、歌詞の面では女性の感情の機微、といういわゆる「辛島節」もありますが、本作では単なる惚れた腫れたではなく、「シアワセノイロ 〜家族になりたい〜」や「名前のない空」、「あなたと」、「一歩一歩ずつ 〜Go to hometown〜」など、もう少し物事を大局的に眺めて、聴き手の背中を優しくそっと押すような視点の曲が増えました。また、「上手い」と呼ばれるボーカリストのタイプは色々ありますが、抜群の歌唱力でリスナーを圧倒させたり、情念でリスナーを自分の世界に連れていく、というタイプとは異なる、瑞々しく、儚げながら芯のある彼女の透明感溢れる「上手い」ボーカルも健在。

 世間的には「辛島美登里=サイレント・イヴ」のイメージの彼女、クリスマスが近づき、そろそろまたこの曲を音楽番組などで披露する姿が目に浮かぶようですが、本作はそのイメージにあくまで寄り添いながら、今までより一歩前進した歌詞、美しいメロディーを引き立てるアレンジと、新旧のファンを満足させてくれるお薦めの作品に仕上がっています。