GOINGMONSTER 約半年ぶりの、そして今回で2014年分は終わりそうな(苦笑)「今週の1枚」。ご紹介するのは年末にビクター在籍時のオリジナルアルバム+αを紙ジャケジャケット仕様にしてボックスに収めた、その名も「THE BOX」をリリースするGOING UNDER GROUNDの「おやすみモンスター」。

 GOING UNDER GROUND(以下「ゴーイング」)は、埼玉県桶川市出身の五人組ロックバンド。いきなり余談になりますが、筆者の生まれ育った市の隣に住み、ほぼ同年代の彼らとは当然面識はありませんが妙に親近感があります(笑)。インディーズ活動を経て、メジャーデビューを果たしたのが2001年。音楽ファンに認知度を広げたのが2003年のシングル「トワイライト」と、同年の3枚目のアルバム「ハートビート」。その後も「STAND BY ME」や「VISTA」などの、ポップなメロディーにセンチメンタルな歌詞を乗せた楽曲をスマッシュヒットさせ、2006年にはベスト盤リリースと武道館ライブを敢行。今回ピックアップの「おやすみモンスター」はその翌年、2007年11月7日に発売されたメジャー通算6枚目のオリジナルアルバムとなります。

 前年まで順調に活動を積み重ねてきた彼らですが、当時のインタビューなどで触れられているように、本作の完成に至るまでにはかなりの試行錯誤を繰り返したとのこと。音楽活動がルーチンワークと化して惰性に陥りそうになる寸前のところをリセットした、というのが真意なのだと思いますが、そう言われて歌詞カードに目を落とすと確かに、従来の「青春」「純愛」「センチメンタル」など、世間一般的にゴーイングがよく評されるキーワードからもう一歩踏み込んで、「自分の中の自分」と向かい合い、従来の枠から飛び出そうともがく歌詞が目に付きます。
 歌詞のフレーズを引用すると、「生きてくってことは 誰かを踏みつけて(「PLANET」)」、「青春ごっこも終わりを告げて(「暗夜行路」)」、「嫌いな奴らもきっと誰かの愛しい人(「モンスター」)」、「傷だらけの世界は 僕ら生きて来た証明(「さかさまワールド」)」等々、今までのロマンチックでどこか絵空事っぽさも感じられた表現と異なる、やけに内省的で生々しいフレーズが散見されます。これらはメインライターである松本素生が壁にぶつかり、自分と対峙して紡ぎ出した「生きた言葉」なのでしょう。それだけにリアルだし、心に引っ掛かる表現が多く、リスナーにもより響く歌詞となったのではないでしょうか。

 歌詞に内省的なフレーズが増えた一方、収録された楽曲のメロディーラインはどの曲もポピュラリティーを含んだものが多いのも本作のポイント。過去のアルバムではインストや実験的な路線をバンド内に持ち込むことの多い河野丈洋の単独作品が1曲だけということもありますが、歌詞のどんより具合(笑)を程よく中和するとびきりポップなメロディーが全編にわたって展開。「TRAIN」「PLANET」などが特に顕著でしょうか。
 また、アレンジに関してはメジャーデビュー当時を彷彿とさせる、エレキギターを前面に押し出したロックサウンドで統一。といっても当時の模倣、というわけではなく、ここに至るまでの数枚のアルバムなどで試みられていた打ち込みサウンドを大々的に取り入れた「TWISTER」や、レゲエ的アプローチを楽曲内に盛り込んだ「海にまつわるエピソード」、さらにはお遊び楽曲「ナカザのロック★」のようなナンバーも中盤に登場するなど、これまでの音楽性を吸収した上で原点に戻った感があります。

 シリアスな歌詞+親しみやすいメロディー+今までの集大成的なアレンジで聴き進めていき、河野の手による純バラードの「愛のうた」を経て、この年一発目にして超王道シングル「胸いっぱい」に辿り着く頃には歌詞のまんまではありますが「お腹いっぱい」(笑)。そんな満腹状態を優しくクールダウンするのがラストのメンバー全員参加のアカペラ「おやすみ」…という具合に余韻に浸りつつ幕を閉じる本作。なお、「おやすみ」は初回盤のみに収録されているボーナストラックなのですが、この曲が無いとジョギングの後の整理体操を怠った翌日のような状態になること必至なので(なんつう喩えだ^^;)このアルバムを手に取る際には是非とも初回盤をお薦めいたします。通常盤のほうが実は枚数が出ていないと思いますし…(汗)。

 本作リリースから既に7年。その間、キーボードの伊藤洋一の脱退、松本、河野がソロ活動を開始、レコード会社移籍、他アーティストへの楽曲提供などのコラボ活動、インディーズレーベルへの移行、そして来年1月末のライブツアーファイナルをもって河野の脱退が決まっているなど、本人達にとってもファンにとっても激動の時代が過ぎていきました。「おやすみモンスター」以降、何枚もオリジナルアルバムをリリースしている彼らですが、近年の路線変更もあって、個人的には本作を超えるアルバムは今のところ残念ながら登場しなかった、というのが正直なところ。来年2月以降、三人体制となるゴーイングの新たな歩みに光明がありますことを願います。