theboom25 2014年9月17日発売、今年いっぱいの活動をもってバンドを解散することを発表したTHE BOOMのヒストリーアルバム。通常盤は先行して発売されたシングル「星のラブレター」(再レコーディング版)を含む25曲+ボーナストラックとしてライブ音源を3曲収録のCD2枚組。プレミアム盤にはさらにライブ音源1曲+インディーズ時代の音源1曲収録、さらに映画やPVを収めたDVDが付属の3枚組。本エントリーは通常盤のレビューとなります。

 本編では彼らの25年間の活動の中から25曲をセレクトしているわけですが、今回の選曲、20周年の際にリリースされたベストアルバム「89-09 THE BOOM COLLECTION 1989-2009」とは17曲が重複。いくら何でも被り過ぎだろ…と思うのですが(苦笑)、その辺りは初期の楽曲を8曲「Re-Recording」(さらに「島唄」は昨年発売のリメイクバージョンを収録)していることでフォロー。そんな本作の目玉である再録音、先にリリースの「星のラブレター」同様、オーノカズナリの単独アレンジ名義ですが、基本的にはオリジナルを忠実に演奏し直した、という感が強いです。ほとんどが20年ぐらいぶりの再録音ということで、当時の音源と比べるとバンド演奏には安定感が感じられますが、現在の宮沢和史のボーカルは包容力のあって達観したような優しい声なので、この声で若さあふれる「星のラブレター」や狂気じみた「なし」を歌われると若干違和感も^^;。ただ、「不思議なパワー」は2014年の歌声で過去を振り返っているようにも取れ、これはこれで意外にマッチしていました。

 さて、再録音も含めた25曲、一通り聴いて振り返ってみますと、改めてTHE BOOMは良い意味で掴みどころのないバンドだったなぁ…という印象を強くしました。デビュー当時のスカ路線、「島唄」をはじめとした沖縄音楽、「風になりたい」に代表されるワールドミュージック系、「真夏の奇蹟」「berangkat -ブランカ-」のような南国系ミクスチャー(この辺りが個人的には一番好き)、歌謡曲的な「時がたてば」、ラップを大胆に導入した「いつもと違う場所で」、バンドアンサンブルに重きを置いた「24時間の旅」「My Sweet Home」…等々、彼らが面白い、やりたいと思った音楽を次々と導入してきた成果が本作品には溢れていて、リスナーとしても一緒に音楽の旅を楽しめる作品だと思います。そんな旅を続けてきた彼らが歌詞ブックレットのライナーノーツで“この曲を歌うためにこれまで多くの曲を書いてきたのかもしれない”(大意)と記していた「世界でいちばん美しい島」で、“やれることをやり尽くした”という解散発表の際のメッセージも納得してしまう、旅の穏やかな終着点を迎えたのかな、とも。

 オリジナル音源でTHE BOOMの軌跡を振り返りたい、というリスナーにはバンド晩期の5年間が欠けているとはいえ、依然20周年ベスト「89-09〜」がお薦め(今月末にBlu-spec CD2で再発されるとか)。本作は再録音というサービスがある分、今まで彼らを応援してきたファン向けにややベクトルが向いたメモリアル的な作品かな、と思います。