cca 2014年6月11日発売、1988年に公開され、同年に発売されたアニメ映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のオリジナルサウンドトラックを、この度「完全版」と銘打ってデジタルリマスター、Blu-spec CD2仕様で再構成したリニューアル版。6,300円のCD3枚組初回生産限定盤、2,730円の単品CDの通常盤の二種類でリリース。今回のレビューは通常盤になります。

 現在まで様々な媒体で連綿と続く「ガンダムシリーズ」。本作「逆襲のシャア」はその歴史の中の核となる部分、アムロ・レイとシャア・アズナブルの最終対決を描いた、一応のガンダムシリーズの区切りとなった映画作品。劇伴を担当したのは、直前のテレビシリーズ「Ζガンダム」「ガンダムΖΖ」から引き続き三枝成彰。また、エンディング主題歌には当時ブレイク真っ只中だったTM NETWORKの「BEYOND THE TIME」を採用。公開当時のサントラ原盤はインスト14曲+主題歌の全15曲でしたが、今回の通常盤では16トラック〜25トラック目に、劇中で使用されたものの、原盤では未収録だったインスト(1〜2分程度の断片的なものですが)がボーナストラックとして追加されており、なおかつブックレットに今回初出のインストがどの場面で使われたかのライナーも記載されており、筆者は思わず映画本編を見返して確認してしまったぐらいです(笑)。

 さて、劇場用ということのスケールを考慮してか、本作の劇伴はオーケストレーションが中心の壮大な音楽が耳を惹きつけます。中でも「MAIN TITLE」で奏でられる主旋律は映画本編でもかなりの頻度でアレンジされて使用され、サントラでもアレンジ違い的な「SALLY」「MISSION」「DESTINY」、変奏曲風の「ν GUNDAM」、そして何といっても映画のラストで使用された「AURORA」というタイトルで収録されているので、この映画自体を象徴するメロディーとしての印象が強いですね。戦争映画ということもあり美しいストリングスだけではなく、ティンパニなどを効果的に使って勇壮、不穏な空気、そして哀しみを表現した「ANXIETY」「SACRIFICE」などのナンバーも収録。また、シンセサウンドを導入している曲もあり、音自体は今から聴くとやはり時代性を感じるのですが、シンセのみを前面に出さずに、オーケストラとの融合を果たしている曲がほとんどで、結構普遍的に聴けるのはポイント高いです。余談ですが、テレビシリーズからの流れを感じさせる「SWAN」の後半部分も「Ζ」「ΖΖ」を通ってきたファンにとっては「おっ!」と思える点ではないでしょうか。

 …強いて不満な箇所を挙げるとすれば、ボーナストラックの「M18 我等が願い」が劇中の歌入りではなくアコーディオンによる伴奏のみだった、という点(無理言うなって?)と、ブックレットで「BEYOND THE TIME」の作詞が小室哲哉と表記されていた点(正しくは小室みつ子)。原盤のブックレットをそのまま転載したのかな?とも思いましたが、せっかくのリニューアル盤なのですから、そこはちょっとチェックしてほしかったところです。

 と、まあ若干文句も書きましたが(苦笑)、人気アニメシリーズ故に、公開当時のVHSやLDからDVDを経て現在はBlu-rayと、様々なメディアで再発される度にリマスターされる本映画。サントラCDだけが1988年の音質のまま今日に至っていたわけですが、この度26年の時を経てリマスターされ、ようやくフィルムと同じ土俵にサントラが立てた、というのは感慨深いものがあります。なお、初回生産限定盤は三方背スリーブにデジパックCDケース、64頁の設定書付き解説ブックレットが同梱、さらに映画未使用テイク、映画の流れ通りに曲順を構成した「映画シンクロ EDIT」のディスクまで付いた豪華盤とのことで、コアなファンは是非そちらを。