yuzusinsekai 2014年2月19日発売、ゆずの通算12枚目となるオリジナルアルバム。シングル「友 〜旅立ちの時〜」「雨のち晴レルヤ」「守ってあげたい」「表裏一体」「ヒカレ」を含む全15曲収録。初回限定盤には未発表ライブ&デモ音源(2曲)を収録したCDが同梱。なお、本エントリーは通常盤のレビューとなります。

 前作「LAND」からわずか9ヶ月でリリースされた本作。ここ近年のゆずのオリジナルアルバムのリリースペースは2年に1作ぐらいだったのでこのスパンの短さには驚かされました。そんな今回のテーマは「懐か新しい」とのことで、従来のアコースティックなゆず像と、近年積極的に行っている若手ミュージシャンと組んでの新境地を組み合わせたアルバムだと思います。前者は「よろこびのうた」「素顔のままで」など、アルバム「FURUSATO」辺りからの付き合いである蔦谷好位置とのタッグによるアコ主体のナンバー、後者は前山田健一との「ユートピア」や、サウンドプロデュースチーム・CHRYSANTHEMUM BRIDGEとの「レトロフューチャー」などのデジタル色の濃いナンバーが顕著。
 ゆずの単独プロデュース作もありますが、こちらは「Ultra Lover Soul」のような弾け系から「四間道路」のようなフォーク調のものまでバラエティ豊か。各楽曲としては積極的に新しい方向に進もうとする北川悠仁、初期のゆずの作風から逸脱しない岩沢厚治、という両者の攻守のバランスは相変わらずですが、「LAND」ほど各担当楽曲数の偏りもなく従来通り、といった感じ。

 アルバム全体的な印象としては、前作同様賑やかで、良くも悪くもまとまりの無さを感じさせる1枚。2000年代中盤あたりからデビューから関わっていたプロデューサー・寺岡呼人の手を少しずつ離れ、音楽的にどんどん自由になっていたゆずの行き着いた先、という気もするのですが、活動年数的にはもはやベテランと言ってもいい彼らが、落ち着くことなく新たな音楽を模索する姿は、日本の音楽界では稀有な姿勢だと思うので、今後ともマンネリとは無縁の新世界を切り拓いてもらいたいものです。ただひとつ、「懐か新しい」を掲げるのならば、ストリートミュージシャン出身という出自を活かした二人だけの演奏の曲も1曲ぐらい欲しかったところでしょうか。