aikoawa 2014年5月28日発売、aikoの通算11枚目のオリジナルアルバム。シングル「4月の雨」「Loveletter」「君の隣」を含む全13曲。初回限定盤は恒例のカラーケース仕様に特典トークCDが付属。今回のレビューは通常盤になりますが、通常盤に数量限定で初回限定盤とは別の内容のトークCDが付属するそうです。

 本作はメジャーデビュー以来の長い付き合いのアレンジャーである島田昌典が全編曲を手掛けたこともあり、彼らしくピアノを軸にしたポップロックな生演奏で全編を統一。ストリングスがスリリングな効果を出している既発シングルの「Loveletter」、ブラスが彩りを添える「距離」「遊園地」など+αな要素を見せつつ、捻ったメロディーラインを駆使して歌い上げるという、突出したキラーチューンはないものの、実に「いつものaikoらしい」安定したアルバム。前述のようにピアノが全編をリードする中、1曲だけピアノを使っていない「大切な人」という曲は新鮮に聴こえました。こういった空気の違うアレンジの曲ももう数曲欲しいところかも。

 ・・・と、ここまでは毎度のaikoのアルバムレビューの口調になってしまいましたが(苦笑)、固有名詞が続いた最近のオリジナルアルバムタイトルから一転して、今回は余韻を残すタイトルが気になり、歌詞カードをじっくりと読んでみると…今回の全13曲中、順調に恋が進んでいる曲は辛うじて「君の隣」ぐらいで、別れた彼を思い出す「明日の歌」から始まり、許されない(?)恋心を描いた「染まる夢」、付き合いながらもどこか諦念を感じさせる「あなたを連れて」「サイダー」、破局後の未練をぶちまけた「透明ドロップ」、トドメはタイトルから察してくださいの「卒業式」でラスト…と、恋愛をテーマにしているのは彼女の楽曲の常なのですが、本作はかなり切ない愛の形(男の身からするとちょっと引いちゃうような詞もありますが・笑)を描いた楽曲が全編に渡って展開されている印象。メロディーよりもアレンジよりも、本作は詞の面からリスナーに強いインパクトを与える曲の多いアルバムだと思いました。

 aikoとしては恐らく初の特典複数商法が導入され、本編の内容とは別のところでの批判も伝え聞きますし、この売り方は残念ではあるのですが、本編に関してはここ近作で一番好感触の作品でした。