aigyaku 2013年11月27日発売、聖飢魔IIが1991年12月に同名でリリースした、1986〜1991年に発表されたシングル曲とカップリング曲を時系列順に全曲収録した2枚組シングルコレクションアルバムをリニューアルし、3枚組として再リリースした作品。全39曲収録。

 リニューアルにあたっての変更点は、DISC3として1992〜1996年に在籍していたSONY在籍時代の6枚のシングルタイトル+カップリング曲に加え、「BAD AGAIN」の広東語バージョンを収録したディスクを追加。全ディスクには最新のリマスターを施し、高音質Blu-spec CD2仕様。さらにジャケットや歌詞カードのデザイン・構成も大幅にリファインされ、旧盤になかった写真やイラストが追加されるなど、気合の入った作りになっています。

 さて、3枚のディスクを通して時系列にシングル曲とカップリング曲が並んでいる本作で、一気に聖飢魔IIの足跡を辿ることができるのですが、やはりインパクトが強いのはDISC1の前半。「蝋人形の館」「JACK THE RIPPER」「アダムの林檎」「1999 SECRET OBJECT」など、彼らの一般的なイメージ(HM/HRサウンドに悪魔的な歌詞)を植え付けたナンバーが目白押し。同ディスクの後半、「STAINLESS NIGHT」あたりや、DISC2以降(番外編的な「爆裂聖飢魔II」含む)を聴いていくと、段々とロック色、ポップ色が顔を出し、「世界一のくちづけを」や「TEENAGE DREAM」のような美メロのバラードも登場したりと、ヘビメタ一辺倒なだけではない彼らの側面も見ることができます。これらの路線、デビュー当時からのファン(信者)からは賛否があるようですが、筆者としては「BLACKBASS」みたいな曲も大好きなので(笑)、シンセの音色が時代を感じさせる点はあるものの、幅広い彼らの音楽性を楽しめるアルバムだと思いました。
 …ところで「赤い玉の伝説」は1991年と1996年にリリースされたものがDISC2と3にそれぞれ収録され、後者にはリリース当時の「リマスターバージョン」と銘打ったサブタイトルが本作でも記されているのですが、先述のように本作自体がリマスターされているので、「リマスターバージョンのリマスターバージョン」という位置づけといったところでしょうか(笑)。

 「1999 Black list」「入門教典 THE BEST OF THE WORST」のような初心者入門ベストとは趣が異なり、シングルタイトル曲+マニアックなカップリング曲を完全網羅した大ボリューム作ということで、信者向けコレクターアイテムといった作品。どうせなら移籍後のBMG時代の全シングル音源もBMGがSONYに吸収された今、もう1枚ディスクを増やして付けてくれれば解散までの全シングルコンプリートが果たせたのですが、SONY時代のオリジナル盤が一斉にリマスター発売される中、BMG時代のオリジナル盤のリマスターの報は出てこないので、その辺は版権に何らかの縛りがあるのかも。まあそこまでの高望みは贅沢というもの。本作のバージョンアップ企画に関わったスタッフの方々に拍手です。